トッティがローマに愛された理由。ローマの王子様のラストマッチに立ち会って思ったこと。

 2017/05/31

 575

ラストマッチ・ジェノヴァ戦の1日

では、トッティの最後の試合となったジェノヴァ戦のお話をしたいと思います。ご存知の方も多いと思いますが、結果は3-2での勝利。

試合開始前

普段はサッカーに興味がない人までもが彼の名前を口にし、普段は「サッカーなんて」と呆れ気味の女性たちも「来週にはトッティが引退だねえ」とニュースを見ながらそわそわ。

日曜だったこの日。家では試合開始前から83歳のおじいちゃんが「トッティは出てないのか」とそわそわし始め「なんでスパレッティ監督はトッティを信頼しないんだ全く」と呆れる始末。放映権を持たない番組では、試合は映せないので、ひたすら解説者が試合を見ながら解説する番組もあったほど。いかにトッティのラストマッチにローマ中の注目が集まっていたかが伺えます。

試合中

トッティは後半の出場

後半開始時にトッティが投入されると、住宅街からは大勢の歌い声が。私の部屋は8階なので、どんだけ大きな声で歌ってるんだって感じでした。後半開始時からトッティはサラー選手と交代で投入され、起点となるパスなどを中心に攻撃を組み立てていました。

シーソーゲームに湧き上がるローマ

後半開始時は1-1でしたが、後半30分にローマが追加点。ですがその後追いつかれ、試合時間残り10分で2-2の厳しい状況。ですが後半43分にベロッティが決勝点!その瞬間、私の住んでいる住宅街から一斉に怒号のような騒ぎ声と超大きな爆竹の音が響き渡ります。これまでこんな騒ぎになった試合を見たことがありません。

そして試合が終了し、3-2でローマが勝利すると、またも勝利の雄叫びと爆竹やら花火やらで大変な騒ぎ。正直、ローマにいてこれほどまでにサッカー熱を感じたことはなかったのですが、みんな心のどこかでロマニスタなんだな、と思った瞬間でした。

その後の食卓はもう親戚一同トッティの話で持ちきりでした。サッカーなんて見もしない人たちでも、トッティの話はしたいんだなぁなんてちょっとしみじみしていました。

試合後

引退セレモニーは感涙もの

試合後に行われた彼の引退セレモニーでは、多くのロマニスタが感激の涙を流しながら行われました。以下トッティのスタジアムでのコメント・手紙を紹介します。

コメント

みんな大丈夫?ついに時が来てしまった。みんないる?コンサートみたいだね。残念ながら来てほしくなかった時が来てしまった。残念だけど、来てしまった。ここ数日、色んなものを読んできた。本当に毎日一人で泣いていて、おかしなやつみたいだったよ。25年間のことなんて忘れられるわけがない。ずっとみんなが私の背中を支えてくれていた。どんな時も、例えチームの状況が良くなかった時でも。だから、ここにいるみんなには感謝してるよ。俺はそんなに言葉は知らないけど、何とか考えてきた。ここ何日か、妻と一緒に座って、このチームでのことを語ってみたりしたんだ。けど、みんなにも手紙があるんだ。読み切れるかは分からないけど、試してみるよ。もしダメだったり、読みたがってる娘にやってもらうよ。泣いてしまってごめんね。なかなかうまくいかないんだ。そろそろ始めよう。お腹もすいてきたし。

手紙全文

ありがとうローマ。私のマンマにもパパにも、兄弟も、親戚も友達もありがとう。そして私の妻、そして3人の子どもたちにも、ありがとうを言いたい。こんなちょっとのメッセージでも、感極まってしまって最後まで上手く読めるかわからないから、感謝の言葉から始めさせてほしい。28年もの物語を短い言葉で語ることなんてできないから。自分の気持ちを歌や詩にのせたりできたらよかったけど、そんな才能もないんだ。だから小さい頃からずっと、この足を通して自分を表現しようとしてきた。それが自分にとっては一番簡単だったし。

ところで、私が子どもの頃から好きな遊びって何か知ってる?もちろんサッカーボールだ!もちろん今でもそれは同じ。それでも人生で、いつか大人にならなきゃいけない時はくる。こんなことを言われて、時は来てしまったんだ。時なんて皮肉なものだ。2001年6月17日(ASローマがセリエA優勝決定戦でリードしていた時)には、主審の3回の笛(試合終了の合図の笛)を聞くのが待てなくて、本当に早く時間が過ぎてほしかったのに。今でも考えただけで鳥肌が立つ。

時は私の肩をたたきながら言うんだ。「もう大人にならないと。明日からは君は大人にならなきゃ。ユニフォームとスパイクを脱ぎなよ。今日から大人になるんだから、芝生の匂いをこんなに近くで感じることも、相手ゴールに向かって走りながら顔に受ける太陽も、アドレナリンに消耗されることも、歓喜に湧く幸せも感じられなくなる。」

ここ数カ月間、なんで夢から覚めなきゃいけないのか問い続けてきた。小さい頃、何だかいい夢を見ていた時に、まだ寝ていたいのに学校に行けってマンマぶ起こされたりしたことってあると思う。どんな夢だったか最初から思い出そうとしても、絶対うまくいかないんだ。今回は、夢じゃなくて現実なんだ、夢は終わってしまった。

もう、ちゃんと喋れなくなってきた。この手紙を、私を応援してくれた子どもたちに、昨日まで子どもだったけど、もう大人になっちゃった人に、今『トッティゴール』と叫びながらチャントを送ってくれている子どもたちに捧げたい。私のキャリアが、子どもたちに聞かせるおとぎ話になるのもいいかもね。今、本当に終わったんだ。
まだ、「終わりにしよう」って言う準備もできていないし、一生無理なのかもしれないけれども、このシャツを脱ぐのも最後だ、丁寧に畳みたい。

ここ最近、試合後のインタビューを受けなかったり、自分の進む道をハッキリさせなかったりして、申し訳なかった。だけど、明かりを消すのは簡単なことじゃないんだ。今も私は怖い。PKでゴールの前に立っているときだって、これほどは怖くない。今回は、これから何があるのか、ゴールネットを通しては見えないんだ。少し怖がっても許してほしい。今の私には、いつものような熱い魂や、みんな自身が必要なんだ。みんなの愛があれば、きっと僕は次のページを開けるし、次の冒険にも飛び込めると思う。

今度は、ASローマのチームメイトや、コーチ、スタッフ、会長たち、僕の横で常に働いてくれた(闘ってくれた)人々に感謝したい。ロマニスタやクルヴァ・スッド(ローマの本拠地・スタジオオリンピコで、ローマファンが常に応援を続ける南ブロックのゴール裏)、そしてローマのみんなにもありがとうと言いたい。ローマ人として、ロマニスタとして生まれたことは最高の特権だ。こんなチームでキャプテンをできたことは僕の誇りだ。君たちはいつも僕の人生だ。これからはこの足でみんなを熱狂させることはできないだろう、けれども、僕の魂は常にみんなと共にある。もう階段を下りて、私を子どもとして受け入れてくれていたロッカールームに入って、大人の男としてロッカールームを去ることにする。

私の28年間の愛をみんなに捧げることができたことを誇りに思うし、幸せに思います。愛しています。

原文そのままはこちらより

花火が上がる

最後に夜の11時ごろ、本気の打ち上げ花火が20分ほどローマの中心地であがり、トッティの引退は、幕引きとなったようです。

【次ページ】トッティを受け継ぐ者

1 2 3


-, , ,