【文学】イタリア・ネオレアリズモの世界 はじめての人に勧める名著5冊

 2017/06/26

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イタリア・ネオレアリズモとは…?

ネオレアリズモとは、1940年代から50年代にかけてイタリアの映画と文学の分野で盛んになった傾向です。日本語に直訳すれば新写実主義とも言うことができるかもしれません。ネオレアリズモの風潮は、当時イタリアを支配していたファシズムに反発した知識人たちの反ファシズムの意識の高まりの中で生み出されていきました。

その特徴は現実的な社会や文化の問題を扱っていること、平易な話し言葉や方言などを採用していること、また特に映画の分野ではキャストに一般人や素人を起用していることなどがあげられます。

今回はネオリズムの文学の代表と呼ばれる作品をいくつかご紹介したいと思います。

1.アルベルト・モラヴィア『無関心な人々』(1929)

イタリア語原題:Gli indifferenti

ネオレアリズモの源流は実は1930年以前にまで遡ります。そもそもレオレアリズモという語が登場したのは、批評家のアルナルド・ボチェッリが1930年末にモラヴィアなどの作品に対して用いたのが初めてだとされているからです。

この物語ではブルジョワ階級の精神の頽廃が描かれており、1964年にはフランスで映画化もされています。モラヴィアはファシズム時代には禁書指定を受けたり執筆を禁じられたりするなどの弾圧に遭いましたが、偽名での執筆活動を続けネオレアリズモ的小説を数多く残しました。今では彼の多くの作品が日本語訳で読むことができます。

2.エリオ・ヴィットリーニ『シチリアでの会話』(1941)

イタリア語原題:Conversazione in Sicilia

親ファシストの作家であったヴィットリーニは1937年のスペイン内戦でのファシズムの暴挙に強い憤りを感じ反ファシストへと転向します。そしてその経験と思索の総体がこの『シチリアでの会話』という作品に詰め込まれています。

主人公はある日突然故郷のシチリアに帰ることを思いつき、道中や故郷シチリアで様々な人々と出会い会話をしていきます。そこで出会う人物にはたとえば「聖母マリア」「ムッソリーニ」「ファシズム打倒」など多様な象徴的意味が込められており、深く読めば読むほどその示唆的な構造に考えさせられる作品です。この本は当時の反ファシズムレジスタンスの精神的基盤となりました。

3.チェーザレ・パヴェーゼ『故郷』(1941)

イタリア語原題:Paesi Tuoi

チェーザレ・パヴェーゼは前述のヴィットリーニと並んでネオレアリズモ文学を代表する作家です。パヴェーゼもまたファシストによる流刑に遭いながらも数々の翻訳・執筆活動を続けました。

この『故郷』という作品では、トリノ出身の機械工である主人公と農村の人々とのディスコミュニケーションの中で、その閉鎖的で鬱屈した社会が描きだされています。またピエモンテ固有の言語で書かれており、リソルジメント期にシチリア方言で書かれたヴェルガの『マラヴォリヤ家の人々』の文体を髣髴とさせる傍ら、後に続くネオレアリズモ文学の大きな源流となりました。パヴェーゼには他にも『美しい夏』、『流刑』『月と篝火』などの多数の著作があります。

4.カルロ・レーヴィ『キリストはエボリで止まった』(1945)

イタリア語原題:Cristo si è fermato a Eboli

カルロ・レーヴィはその芸術家としての活動を画家としてスタートさせました。ファシズム期には彼がユダヤ系の反ファシストであったことから流刑や投獄に遭い、常に死と隣り合わせの苦しい生活を強いられました。

この作品は1943年から44年にかけてのレジスタンス期に書かれました。彼自身の流刑体験が題材にされています。南イタリアの貧しい村の過酷な現実が仔細かつ詩情豊かに描かれ、イタリア全国に南イタリアの農民の現状を伝える役割を果たしました。

5.イタロ・カルヴィーノ『くもの巣の小道』(1947)

イタリア語原題:Il Sentiero Dei Nidi Di Ragno

『くもの巣の小道』はイタロ・カルヴィーノの処女作であり、彼自身のパルチザン経験をもとに書かれています。前述の作家たちよりも一回り世代の若かった彼は多感な思春期を、ファシズムと第二次世界大戦の激闘の中で過ごしたのです。

この作品は戦後に現れたパルチザンを美化する文学とは一線を画し、非英雄的な人々、社会の落伍者に視線が注がれ、当時の彼らの現実が実験的なネオレアリズモの手法で描かれています。この作品のあとカルヴィーノはネオレアリズモの手法から離れ、寓話的であったりSF的であったりする様々な作品を生み出していき、独自の文学観を創造していきました。

さいごに

いかかでしたか?ネオレアリズモはファシズムに対する抵抗と戦後の混乱の中で生み出されていったのがお分かりになったと思います。またその後に続くたくさんのイタリア人作家たちにその脈は受け継がれていきました。今回取り上げた本は全て、日本で文庫本で読むことができます。ぜひ気になる一冊を手に取ってみてください。


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