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グローバル化に抗えるか…イタリアとスターバックスの歴史・現状・将来性を考察してみた

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3.スタバのイタリア進出の背景

3-1.スタバの誕生と歴史

ここでは一旦脱線し、スタバの歴史について見ていきましょう。

スターバックスは1971年、アメリカのシアトルで誕生しました。当時はただのコーヒーショップでしたが、82年に入社した現CEOのハワード・シュルツ氏は、83年に訪れたイタリアのミラノとヴェローナの訪問をキッカケに、イタリアのバール文化に感銘を受けました。そして帰国後、エスプレッソ主体のドリンク販売を提案します。

シュルツ氏は85年にスタバを退社し、エスプレッソ主体のコーヒーショップIl Giornaleを自ら立ち上げます。イタリアのバールに見られる「立ち飲み」を踏襲するような、「テイクアウト」主体の販売が大人気となり、87年にはスターバックスと商標を買収するまでになりました。

その後、2015年時点で世界90カ国に店舗を構える、グローバルなショップに成長したのは、皆さんご存知かと思います。そしてここで伝えたかったのは「スタバのコーヒーは、イタリアのバールやエスプレッソ文化に影響を受けたということ」です。この影響が現在のスタバのイタリア進出に関係しています。

3-2.スタバのイタリア出店・展開

このようにしてイタリアのバール文化に大きな影響を受け、今日では世界を代表するグローバル企業に成長したスタバですが、それでもイタリアへの進出は行われてきませんでした。

理由は、まさしく上で説明した通り、イタリアにはチェーン店が無くとも、街のいたるところにバールがあり、そこで美味しいコーヒーを楽しめるからです。

シュルツ氏は、イタリアに対して強い思いを持っており「(スタバのイタリアへの出店は)大きな夢の集大成だ」「我々のこれまでの成功や成長、発展を振り返るとき、いつも何かが欠けているように思えた。それはイタリアに進出していなかったことだ」(日経新聞)と語っています。

そしてついに2016年2月、イタリアに初の店舗をオープンさせる計画を発表したのです。場所はミラノ。流行の最先端であるこの街は、新しいものを受け容れる文化も他都市よりは強いとされており、まさに1号店を出店するにはふさわしいでしょう。

当初の計画では、2017年春にミラノで一号店をオープンさせ、その後の5-6年間でイタリア全土に約200店舗を展開する予定を立てていました。

3-3.世界の反発、上手くいかない一号店

ですが、その計画は早々に頓挫することとなります。まず一号店構想を発表した時点で、イタリアのみならず世界中から批判の声が噴出し、いかに人々がスタバのイタリア進出を否定的に見ているかが浮き彫りになりました。「イタリアのコーヒー文化の終わりだ」や「文化侵略だ」などの様々な意見があったようです。

結局、2017年3月オープン予定だったミラノ店は同年秋予定にズレこんでしまいます。代わりに同年2月には、オープニング前のComing Soon的な意味も込めて、ミラノのドゥオモ広場にヤシの木が42本植えられました。

しかし歴史あるドゥオモの目の前に、一切関係ない熱帯植物であるヤシの木が植えられたことで、さらにミラノやイタリアでは反発が強まります。イタリア北部の右翼政党による抗議活動が行われただけでなく、同月19日未明には、何者かによってヤシの木3本が放火される事件も起きました(afp)。

以上のような反発や抗議を受け、最終的にミラノの一号店は現在(2018年2月)まだオープンしておらず、2018年秋を目指した準備が水面下で動いているようです。

3-4.ここまでスタバを嫌う理由

単純な反対意見のみならず、政治政党のデモや放火事件などがあったとなると、やはり何か物々しさを感じますね。では、なぜスタバはここまで嫌われているのでしょうか?

3-4-1.バールと相容れないグローバル企業

緑が現在進出中の国。イタリアは将来的に進出する国として、青になっている(Wikipediaより)。

スタバのような世界展開する企業と違い、イタリア各地のバールは自営業として経営されています。独自のバール文化を守ってきたイタリアにとっては、外資の介入によってこれまでの競争様式を一気に破壊される可能性があります。

後述するマクドナルドも、約30年前、ローマに一号店を出店した時は批判の嵐でした。また、イタリアは全体的に中小企業(特に従業員15人以下の企業)が多く、ショップのような部類以外でも、多国籍企業のグローバル経営とは、やや相容れない部分があります。

3-4-2.アメリカンコーヒーの味

また、多くのイタリア人は、単純にアメリカンコーヒーを好んで飲んでいないようです。私の友人である、10-20代のイタリア人20人に「アメリカのコーヒーってどう思う?」と聞くと、17人が否定的な意見を述べていました。特にそのうちの1人は「アメリカのコーヒーなんて汚い水(Acqua sporca)だ」と吐き捨てるほどです。

それだけイタリア人は、自国のエスプレッソに自信をもっており、アメリカンなんて受け容れ難いと考えているようです。

4.例外はある外資&カフェチェーン

ここまでスタバに否定的なイタリアを見てきましたが、とはいってもスタバが全土に展開することはあり得るのではないかと思っています。実際にイタリアのチェーン店を2つ取り上げて考えてみましょう。

4-1.ファストフードの雄・マクドナルド

4-1-1.マックとイタリアの関係性

ローマのスタバ(スペイン広場付近)

大手ファストフードチェーン・マクドナルドがイタリアにやってきたのは、今から約30年前の1985年。イタリア北部の都市ボルツァーノに一号店がオープンし(99年7月に閉店)、その後86年3月、ローマのスペイン広場に二号店がオープン。このショップは大変な反発を呼び、多くの市民が「マック出て行け」の抗議を繰り返しました。

こういった一連のファストフード流入を受け、同年、イタリア北部ピエモンテ州のブラ(Bra)で「スローフード運動」が生まれたほどです(この運動についての詳細はこちら)。

オープンして10年間はなかなか思うようにシェアを伸ばせなかったマックですが、96年にイタリアのハンバーガーチェーンであったBurghyの約80店舗を買収し、一気に全国展開を加速させることとなりました。

そして、マックの手軽さが、若者を中心に受けたこともあり、最終的に2010年には全国400店舗を展開するまでになりました。今ではイタリアの都市であれば、どこでもマックを見かけます。

4-1-2.イタリアにおけるマックの特徴

私は、マックがイタリアで生き残れる理由はいくつかあると思っていて、そのうちの2つをここで提示したいと思います。

4-1-2-1. Mc Cafeの存在

2009年より、バールのような機能を兼ね備えたマック・カフェがイタリアの一部マックでもオープンしました。マック・カフェは、マックの入口近くに設置され、ハンバーガーではなく、エスプレッソやジェラートを手軽に楽しめるバール的な機能です。

マックカフェ自体は世界各地に存在しているものの、この特徴がややイタリアのバールに近いものになっていたため、2010年以降のマックのイタリアにおける拡大には寄与しているのではないかと考えています(敷地が広い店舗のみに導入されている印象はありますが)。

4-1-2-2.安さ

これはあくまで副次的要素かもしれませんが、マックのハンバーガーはやはり安いです。普通のハンバーガーであれば€1(130円)、チーズバーガーなら€1.5(200円)と、単品であれば、かなり安いです。

それが、外食が高騰する大都市(ローマ、ミラノ、ヴェネツィアなど)であれば尚更で、小腹が空いた時に食べる軽食としても活躍します。

ローマの市街地では、主食の1つであるピッツァは€8~(1100円)、軽食のパニーノは€2.3(260-390円)、ケバブは€4(520円)程度なのと比べれば、やはりお金が無い若者や学生にとっては、オアシスです。日本におけるマックの存在とも似ています。

またコンビニがないイタリアでは、€1の水を買うためだけにマックを訪れる人もいます。

4-1-3. 現在も残る反マック

それでもやはり、イタリアの多くの人々はマックを心から受け容れたわけではないようです。

私がローマに留学していた際も、何度もマックには足を運びましたが、多くの友人が否定的な見解(マズいけど腹を満たすためだけに食べる、座る所がなく仕方ないから入店する、大して目ぼしい料理が食べれないのでマックに仕方なく入店する、など)を示していました。

また、今日でも定期的に世界中で開催される「反・マクドナルド運動」の際には、イタリア各地のマックの前でデモが行われています。

4-2.コーヒーショップ・アーノルド

4-2-1.マイナーブランドが着実に展開

イタリアにはコーヒーショップチェーンが一つもないと思われがちですが、そうではありません。その例がイタリア全土フィレンツェやミラノを中心に(6店舗展開する、アーノルド・コーヒーです。

アーノルドは"American Coffee Experience"をウリにしており、まさにスタバと同様アメリカンコーヒーを提供しています。イタリア人があまり好まないアメリカンコーヒーチェーンでありながら、なぜバールとの差別化に成功し、店舗を増やしているのでしょうか。

4-2-2. アーノルドの特徴

マックと同様に、アーノルドにはどういった特徴があり、それがイタリアにおいて受け入れられているのかを考察したいと思います。

4-2-2-1.コーヒー以外でも勝負

アーノルドコーヒーは、正直言うと、コーヒーの質自体がとても高いわけではありません。その分、それ以外の点で差別化を図っています。例えば、夏になると店先には常にスムージーの看板が前面に押し出され、10種類以上のフレーバーを楽しめます。また、他のバールに比べても美味しいパニーノやマフィンなどが味わえます。

4-2-2-2.座席がゆったり

また、バールではコーヒーを座ってゆっくり飲む文化はそれほどない(一部例外あり)ため、座席数が少なかったり人の出入りが多かったりとやや落ち着かないのですが、アーノルドは私達がよく知るカフェ同様、ゆったりとした座席があり、Wi-Fiも提供しています。

こういった理由からバールとの差別化が図れているアーノルドは、イタリアで生き残ってきていると推測しています。

【次ページ】スタバの方向性

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