【決勝トーナメント編】2006年W杯ドイツ大会 イタリアの優勝までの軌跡を振り返る

【決勝トーナメント編】2006年W杯ドイツ大会 イタリアの優勝までの軌跡を振り返る

ゆうさん

学生時代にローマ・サピエンツァ大学に留学し、シチリア出身マンマが統べる大家族にてホームステイ。今は日系企業で国際提供業務に従事する社会人3年目。イタリアで仕事をする機会を細々と狙っています。サザンオールスターズとサンドウィッチマンが大好き。

この記事は「【グループステージ編】2006年W杯ドイツ大会 イタリアの優勝までの軌跡を振り返る」の続きです。

グループステージを2勝1分の勝ち点7、首位で通過したイタリア。優勝するためには4回勝たなければならない、負ければ終わりの決勝トーナメントで、我らがアッズーリ(Azzurri、イタリア代表の愛称)はどのように戦い、素晴らしい結果を収めたのでしょうか。

決勝トーナメント全4試合を振り返る

6月26日 vs オーストラリア戦

結果:1-0(イタリア勝利)

得点:95' トッティ(PK)

【フォーメーション】

イタリア(変則4-1-2-3)

GK:ブッフォン

DF:ザンブロッタ、カンナヴァーロ、マテラッツィ(50' 退場)、グロッソ

MF:ペッロッタ、ピルロ、ガットゥーゾ、

FW:トーニ(55' バルザッリ)、ジラルディーノ(45' イアクインタ)、デル・ピエロ(74' トッティ)

オーストラリア(3-4-3)

GK:シュウォーツァ

DF:ムーア、ニール、チッパーフィールド

MF:クリナ、グレラ、ウィルクシャー、ケーヒル

FW:プレッシアーノ、ビドゥカ、ステリョフスキー(80' アロイージ)

【ハイライト映像】

日本と同じグループFを2位通過で勝ち上がったオーストラリア。イタリアはこの試合、グループステージ全試合先発のトッティを外し、デル・ピエロを起用、4-1-2-3のフォーメーションを採用します。

これまで対戦のない両チーム。試合展開は、想像以上に拮抗したものになりました。特にイタリアは、オーストラリアのサイド攻撃やロングボールに対し、後手に回る時間が続きます。

ピルロを中心とし、鋭い縦パスからいくつかチャンスを演出しますが、ペナルティエリアではオーストラリアの守備陣が上回り、決定的な仕事ができず。

全体的にかなり厳しい展開になった試合でしたが、後半44分、左サイドでパスを受けゴールに迫るグロッソが、エリア内で倒れてPKを獲得!キッカーはトッティ。

【イタリア1点目】

極限のプレッシャーの中、トッティは冷静に真ん中に流し込み、ついにイタリアが先制!何とか90分で決着をつけ、ベスト8に進出しました。

6月30日 vs ウクライナ戦

結果:3-0(イタリア勝利)

得点:6' ザンブロッタ、59' 69' トーニ

【フォーメーション】

イタリア(4-4-2)

GK:ブッフォン

DF:ザンブロッタ、カンナヴァーロ、バルザッリ、グロッソ

MF:カモラネージ(67' オッド)、ガットゥーゾ(76' ザッカルド)、ピルロ(67' バッローネ)、ペッロッタ

FW:トッティ、トーニ

ウクライナ(4-3-2-1)

GK:ショフコフスキー

DF:グセフ、スヴィデルスキー(19' ヴォロベイ)、ルソル(44' ヴァシュク)、ネスマチニー

MF:グシン、ティモシュク、シャラエフ

FW:ミレフスキー(71' ベリク)、シェフチェンコ、カリニチェンコ

【ハイライト映像】

誤解を恐れずに言えば、イタリア代表にとって最も簡単だった試合は、このウクライナ戦だと思います。もちろんシェフチェンコやカリニチェンコの個人技などからウクライナに決定機を作られることもありましたが、ブッフォンのスーパーセーブにも助けられ、90分通して試合の主導権を握り続けました。

立ち上がりから攻撃的なイタリア。これまでの試合で精力的な活躍を見せていた右サイドバックのザンブロッタが、中盤との連携でアタッキングサードまで抜け出し左足一閃!これがゴール右隅の完璧なコースに決まり、イタリアが先制します。

【イタリア1点目】

この大会のイタリアは、ピルロやトッティなどの攻撃陣の活躍は圧倒的でしたが、やはり攻守において、両サイドバックのグロッソとザンブロッタの存在は欠かせませんでした。

【イタリア2点目・3点目】

後半も勢いそのままに相手を押し込むイタリアは、59分、69分と立て続けに追加点。

トッティがショートコーナーからピルロとの連携で完璧なクロスを送り、これをトーニが強烈なヘディングで叩き込みます!2点目をゲットします。

さらに3点目もトーニ。裏に抜け出したザンブロッタが相手をかわして中にクロスを入れると、マークを完全に外したトーニがゴールへ流し込みます。

結果的にトーニの2ゴール、ザンブロッタの1ゴール・1アシストと、これまでゴールやアシストの無かった選手が活躍した格好となりました。この大会のアッズーリは、毎試合特筆した活躍を見せた選手が異なっていたことも、選手層の厚さを物語っていたのかもしれません。

7月4日 vs ドイツ戦

結果:2-0(イタリア勝利)

得点:119' グロッソ、121' デル・ピエロ

【フォーメーション】

イタリア(4-4-2)

GK:ブッフォン

DF:ザンブロッタ、カンナヴァーロ、マテラッツィ、グロッソ

MF:カモラネージ(90' イアクインタ)、ガットゥーゾ、ピルロ、ペッロッタ(103' デル・ピエロ)

FW:トッティ、トーニ(73' ジラルディーノ)

ドイツ(4-4-2)

GK:レーマン

DF:フリードリヒ、メルテザッカー、メッツェルダー、ラーム

MF:シュナイダー(82' オドンコール)、ケール、バラック、ボロウスキ(72' シュバインシュタイガー)

FW:クローゼ(110' ノイヴィル)、ポドルスキ

【ハイライト映像】

今大会、ここまで世界トップレベルの競合との対戦がなかったイタリアにとって、初めての「本気の試合」が対ドイツ戦でした。試合ごとに色々とフォーメーションを調整してきたリッピ監督ですが、ドイツ戦では、4-4-2と4-4-1-1の中間のような形を採用。

リッピ監督就任後、カテナチオを捨てた攻撃的なサッカーをウリにしてきたイタリア。しかしワールドカップでは、再び彼らの原点である守備に立ち返るとともに、ピルロ、トッティ、トーニを中心とした攻撃陣を擁し、鋭くゴールに襲い掛かる能力も持っていました。

こうしたスタイルを、スポーツジャーナリストの片野道郎さんは、ドイツ戦の直後、このように評していました。

アズーリを12年ぶりとなるワールドカップ決勝に導いたのは、「カテナッチョ」とはまったく異なる、しかしイタリア伝統のメンタリティを濃厚に反映していることには変わりがない、究極のバランスサッカーだった。

WC2006 準決勝 イタリア2-0ドイツ(2006.06)

イタリア、ドイツ双方が手にした決定機は、どちらも2つほどでしたが、イタリアはボールをしっかりと回し、ドイツは積極的なプレッシングからカウンターを狙うスタイル。

その辺りのスタイルの違いは、90分を戦い終えた延長戦からじわじわと影響し始めます。ドイツは動きが重い。一方イタリアは同じ戦い方を続け、交代枠も2枚残している。今大会のイタリアが、様々な問題を抱えながらも、したたかに効率的に勝ち上がってきたということを、実感させるような試合でした。

延長前半にはビッグチャンスが2つ。ジラルディーノのシュートはポストの付け根に弾かれ、ザンブロッタの弾丸ミドルはクロスバーを叩きます。解説のファビオ・カレッラ氏も「ありえない!(Non è possibile!)」と絶叫。

そして延長後半、攻め続けるイタリアに待望の先制ゴールが!

【イタリア1点目】

ピルロのミドルシュートから得た右サイドのコーナーキック。デル・ピエロが入れたボールはディフェンスに弾かれますが、セカンドボールを拾ったピルロがドイツの選手3人を引きつけ、ペナルティエリア内に鋭い縦パス。待っていたグロッソはダイレクトで右足を振り抜き、ボールはハンパない軌道を描いてゴールに!

ついに延長後半14分にイタリア先制!この大会、やはりグロッソは「持っている」選手でした。

焦るドイツは突如思い出したかのようにパワープレーを始め、とにかくボールを前に運び、クロスを中央へ放り込みます。

【イタリア2点目】

しかし、粘り強いイタリアの守備陣は徹底的に跳ね返し、逆にカウンター。カンナヴァーロのパスカットからのパスを受けたジラルディーノが、前線まで運び、ゴールキーパーと1対1に。ジラルディーノはシュートを打たず冷静にヒールで後ろに流し、走り込んでいたデル・ピエロが右足で鮮やかなシュート!キーパーは一歩も動けず、イタリアが2点目。完全にドイツの息の根を止めました。

本当に厳しい試合を戦い抜いたイタリアが、決勝に進出しました。

7月9日 vs フランス戦

結果:1-1(PK 5-3)(イタリア勝利)

得点:7' ジダン(フランス・PK)、19' マテラッツィ(イタリア)

【フォーメーション】

イタリア(4-5-1または4-3-3)

GK:ブッフォン

DF:ザンブロッタ、マテラッツィ、カンナヴァーロ、グロッソ

MF:カモラネージ(85' デル・ピエロ)、ガットゥーゾ、トッティ(60' デ・ロッシ)、ピルロ、ペッロッタ(60' イアクインタ)

FW:トーニ

フランス(4-5-1または4-3-3)

GK:バルデス

DF:サニョル、トゥラム、ギャラス、アビダル

MF:リベリー(99' トレゼゲ)、マケレレ、ジダン、ヴィエラ(55' ディアッラ)、マルダ

FW:アンリ(106' ヴィルトール)

【ハイライト映像】

フランスとの対戦は、イタリアにとって非常に大きな借りを返す絶好のチャンスでした。イタリアは、1998年ワールドカップ・フランス大会・準々決勝と2000年ユーロ・オランダ大会・決勝の2試合でフランスに敗れています。

イタリアは、前線のタレントという意味で、アンリ、ジダンを擁するフランスにやや劣りますが、その分カンナヴァーロやブッフォンが率いる守備陣はここまでの6試合でわずか1点(しかもオウンゴール)と驚異の守備力を持っています。

決勝は非常に拮抗した展開になるのでは、と多くのファンが考えていた通り、PK戦にもつれこむ白熱した試合になりました。

【フランス1点目】

前半6分、ロングフィードに反応し、ペナルティエリア内に侵入してきたマルダをマテラッツィが後ろから倒し、フランスがPKを獲得。これをジダンがチップキックで決め、まさかのフランス先制。

【イタリア1点目】

PKを与えるという失態を犯したマテラッツィでしたが、そのまま黙っている彼ではありません。前半19分、ピルロのファーサイドへのコーナーキックに反応したマテラッツィは、圧倒的な打点からのヘディングシュートをぶち込みます。イタリアが1点を返し、早い時間帯に同点とします!

セットプレーで上手く相手ディフェンスのズレを作れていたイタリアは、そこから先もコーナーキックやフリーキックで決定的なチャンスを生み出します。前半36分には再びコーナーキックからトーニがクロスバー直撃の強烈なシュート、後半17分にはフリーキックからトーニがゴールを揺らしますがオフサイド。

1点を先制されたイタリアですが、その後は少ない攻め手で効率よくフランスゴールを脅かしていきます。もちろん、フランスにも何回もチャンスはありましたが、本当に決定的だったのは延長前半のジダンのヘディングシュートの1回。

イタリアの守備に徹底的に潰され、例えシュートを打てたとしても枠外か力ないシュートばかり。この点に関しては、カンナヴァーロによる、シュートコースを切る素晴らしいポジショニングや、ブッフォンの広大な守備範囲の賜物と言えるでしょう。

【ジダンの頭突き】

そして延長後半5分、マテラッツィの侮辱的発言に対してジダンが激高し、あの有名な「ジダンの頭突き事件」が起きました。ジダンは即刻退場し、試合はPK戦に突入します。

【PK戦最後のキッカー・グロッソ】

運命のPK戦。5人全員が素晴らしいPKを成功させたイタリアは、ついに因縁の相手フランスを破ってワールドカップ優勝!ついに栄光の瞬間を手にしました。

さいごに

ここまで2記事にわけて、ワールドカップ・ドイツ大会でのイタリアの軌跡を振り返ってきました。セリエAの八百長問題や主力選手のケガなど、様々な悲運があったイタリアサッカー界において、この大会での優勝は、本当に困難なものだったはずです。

それでも、こうした困難があったからこそ、選手たち、監督を含むスタッフ、そして国民全体が一致団結し、強い統率力でこの優勝という結果を掴み取ったのではないでしょうか。

2022年のカタール大会やそれ以降の大会でも、我らがアッズーリが、素晴らしい活躍で世界を熱狂させてくれることを、本当に心待ちにしています!

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