ヴェネツィア近郊には、実はけっこう多様な文化を持った町が多いことをご存知でしたか?
イタリア旅行に何回も来ていて主要な都市は行ってしまったという方や、ゆっくりと北イタリアを回る旅行を計画している方のために、ヴェネツィア近郊で訪れるべき場所を紹介いたします。
ヴェネツィアから日帰りで行ける5つの町
1.パドヴァ
ヴェネツィアから電車で約30分で行ける隣町で、有名な大学があったり宗教的な建築物が多かったりと、文化的な雰囲気のある町がパドヴァ(Padova)です。
パドヴァを代表するのが、13-14世紀の建築家・ジョット(Giotto)の最高傑作とも言われるスクロヴェーニ礼拝堂(Cappella degli Scrovegni)。この礼拝堂の装飾は一見の価値ありです。礼拝堂の壁面を目いっぱい活用してフラスコ画が描かれており、鑑賞していると目が疲れてしまいそうです。
次に見るべきなのが、サンタントーニオ・ダ・パードヴァ聖堂 (Basilica di Sant'Antonio da Padova)で、こちらはパドヴァの守護聖人である聖アントーニオを祀る教会。聖アントニオの遺体が祀られているだけあって、ヨーロッパ各地から巡礼のために訪れる人が多いのも特徴です。
ロマネスク、ゴシック、ビザンチンなどの様式が混ざっており、主祭壇にはドナテッロのレリーフが飾られるなど名の知れた芸術家の作品も多いです。
また、世界遺産にも登録されている植物園「オルト・ボタニコ(Orto Botanico)」は、大学付属の植物園としては世界最古の歴史を持っていて、16世紀に完成しました。この植物園にはドイツの哲学者・ゲーテも訪れたとされています。
【パドヴァカード】
パドヴァを観光する際には主要な観光名所やバスなどの交通機関を利用できるパドヴァカードの購入がおススメです。このカードで入れる対象は、スクロヴェーニ礼拝堂・市立博物館・ラジョーネ宮・サンロッコ祈祷堂などなど。
対象外の博物館でも割引になることが多いので是非。48時間券が16ユーロ。72時間券が21ユーロです。
2.ヴェローナ
アレーナ・ディ・ヴェローナ(Arena di Verona)での夏の野外オペラは、私たち日本人にとっても非常に有名です。ちなみにこのアレーナを含むヴェローナ市街地は、古代ローマ時代の歴史的遺産を多く残し、世界遺産に登録されているのも注目ポイント。アレーナの内部構造はローマのコロッセオとほぼ変わりません。
夏の野外オペラ時には、約18,000人を収容することができます。また、野外オペラのチケットの値段はピンキリで、20ユーロから200ユーロまで幅があり、よく吟味して買う必要があるでしょう。
またヴェローナは、かの有名なシェイクスピアの悲劇『ロミオとジュリエット』の舞台にもなった歴史ある街で、市街地の中心部には、ヒロインであるジュリエットの家があります。おそらく一番有名なセリフ「あぁロミオ、どうしてあなたはロミオなの?」のシーンで知られるバルコニーもあるため、作品を知っている人なら絶対楽しめるはずです。
また、庭に置いてあるジュリエット像の右胸を触ると幸運が訪れるという言い伝えもあるので是非触りながら写真を撮ってみてください(笑)ちなみに胸は触られすぎて、メッキが剥げてしまっています。
さらに、川を挟んで市街地の反対側の高台にあるテアトロ・ロマーノ(Teatro Romano)の展望台からは、美しいヴェローナの景色を一望することができるんです!ここからの写真を撮るために、多くの観光客が昼夜を問わずにやってきます。その噂に恥じない絶景を、是非皆さんも見に行ってはいかがでしょうか?
ヴェネチアやミラノから1時間半、ボローニャからでも2時間弱でアクセスできるので、主要都市からの交通の便がとても良いです。ヴェローナの観光地についてもっと知りたい方は「中世の街・ヴェローナの魅力とは?5つの観光名所と共に徹底解説」の記事をご覧ください!
3.ヴィチェンツァ
ヴェネト州の町・ヴィチェンツァ(Vicenza)には、ルネサンス後期の天才建築家・アンドレア・パッラーディオ(Andrea Palladio)の手がけた美しい建築物が数多く残り、それ以前のヴェネツィア・ゴシック様式の建物などと組み合わさって出来た町並みはイタリア屈指の美しさです。
それを代表するのが、以前は裁判所や集会所として使われていたバジリカ・パッラーディアーナ(Basilica Palladiana)です。このバジリカは、彼が有名になるキッカケとなった作品と言われています。特徴的な青銅色の屋根が目を引くこの壮大な建築物は、この町最大の観光名所の一つです。
次に見るべき作品は、パラッツォ・キエリカーティ(Palazzo Chiericati)で、1855年から私立絵画館としても利用されています。このパラッツォも実は1500年代にパッラーディオが建てたもので、彼の初期の傑作と言われています。内部には、パオロ・ヴェネツィアーノの多翼祭壇画など貴重な絵画も豊富に展示されています。
さらに、パッラーディオの晩年の作品として非常に有名なのが、市街地の北東部外れの方に位置するオリンピコ劇場(Teatro Olimpico)です。1580年代のパッラーディオ最後の作品で、舞台には遠近法が匠に凝らされていて奥行の深さを錯覚してしまいます。現在もオペラを中心に上演は行われているので、是非足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。
【ビリエット・ウニコーヴィチェンツァ・カード】
オリンピコ劇場、キエリカーティ絵画館、考古学博物館、パッラーディオ博物館、サンタ・コローナ教会など、ヴィチェンツァ観光の主要なスポットの共通券として使えるヴィチェンツァカードが、オリンピコ劇場の窓口で購入することができます。
料金は15ユーロ。これらの施設は各5-11ユーロの入場料がかかるので、もし数か所を訪問する予定であれば、迷わず購入してくださいね!
4.トリエステ
イタリア国内にいながら、まるで東欧や中欧のような雰囲気を感じさせる町が、トリエステ(Trieste)です。トリエステは第一次世界大戦後にようやく正式にイタリアの領土となった場所であり、それまでにオーストリアや東欧の支配を受けつつ文化を混合・変容させてきました。
町に着いたらまず最初に訪れてみて欲しいのが、北イタリアの都市らしくキチンと整備された美しいイタリア統一広場(Piazza Unita d'Italia)です。周囲を市庁舎や州庁舎、旧ローイド・トリエスティーノ宮殿などにぐるっと囲まれていて、荘厳さをより一層引き立たせています。そして海に面したこの広場は、日が暮れ始めると一層ロマンチックになりますよ!
トリエステの建築物の中でも最も歴史が古いものの一つが、サン・ジュストの丘の上に佇むサン・ジュスト大聖堂(Cattedrale)です。5世紀に建てられ、ロマネスク様式の2つの教会を合わせる形で今日まで遺されています。
一見シンプルに見える聖堂ですが、内部のモザイク画は実に精巧かつ色鮮やかで、これらを一つ一つ見ていくだけでも時間が経ってしまいそうです。ちなみに、聖堂の隣のサン・ジュスト城(Castello di San Giusto)からは、トリエステの町並みと海が一望できます。
5.ドロミテ
町というとやや対象から外れてしまうかもしれませんが、世界自然遺産にも登録されているドロミテも、ヴェネツィアから日帰りで訪れることができます。ドロミテの場合は、レンタカーを利用するか、1日ツアーに参加して訪れるかの選択肢になります。
ドロミテ観光で最も有名なのがミズリーナ湖(Lago di Misurina)でしょうか。トレチーメとソラピス山群に囲まれたこの湖は、本当に空気が澄んでいて、近くにはなんと呼吸器関連の医療センターがあるほどです!逆さ富士ならぬ、逆さドロミテを楽しめる場所であること間違いなしです。
他にも「ドロミテといえば!」という写真を撮影できるのは、サンタ・マッダレーナ村(Santa Maddalena)です。ドロミテ周辺は自然に溢れ、それほど人の手が加えられた建物はないのですが、この村は唯一、山々の景色の中にぽつりと佇む村や教会を見ることができます。雄大な自然を前にすると、いつまでもそこにいたい気分になりますね。
最後に「もし日本人が訪れたことのないドロミテの姿を見てみたい!」と思う方は、トヴェル湖(Lago di Tovel)に行ってみるのはいかがでしょうか?こちらは、ドロミテのかなり外れ、それもロンバルディア州北部・トレント寄りの町なのですが、この絶景に勝る景色を私はイタリアで見たことがないかもしれません。車でなければ行けない分、素晴らしい体験ができたなと思っています。詳しくは「写真で見るイタリアの絶景 秋の極寒トレンティーノ・トヴェル湖」の記事を読んでみてください。
ドロミテはイタリア屈指の山岳地帯であり、春から秋の間はハイキングやトレッキング、冬にはスキーを楽しむことができる景勝地でもあります。時間や天気とともに景色を変える山々をみながらのトレッキングは、楽しいこと間違いなしです。
さいごに
いかがでしたか?ヴェネツィア観光の際には、是非こうした観光地をセットで訪れて、より充実したイタリア滞在にしてくださいね。