【ネタバレ注意】ダンテ『神曲』の謎を追え!映画「インフェルノ」の舞台を解説!

【ネタバレ注意】ダンテ『神曲』の謎を追え!映画「インフェルノ」の舞台を解説!

編集者R

2015年9月に初めてイタリアへ。その後フィレンツェに留学し、近所のレストランのおじさんと仲良くなりながら、古都での生活を謳歌する。 好きな都市はフィレンツェとジェノヴァ。

※映画の核心に触れる項目を含みます。避けたい方は映画を観てからお読みになってください。

映画「インフェルノ」はダン・ブラウン氏が原作を手掛けた「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズの最新作です。

またまたトム・ハンクス演じるロバート・ラングドン教授が、時に危ない目に遭いつつも、大きな謎に立ち向かっていくという、スリリングな展開に息を飲む作品となっています。

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そして今回はダンテ・アリギエーリの『神曲』が物語のカギを握っています。果たして、ラングドン教授は700年前の壮大な叙事詩の謎を解くことができるのか?!

そんな映画「インフェルノ」をより楽しく観るための見どころをご紹介します!

映画「インフェルノ」はどんな映画?

数々の謎を解き明かしてきた宗教象徴学者ロバート・ラングドン教授(トム・ハンクス)が、人類滅亡の恐ろしい計画を企てている生化学者ゾブリストが詩人ダンテの叙事詩「神曲」<地獄篇インフェルノ>に隠した暗号の謎に挑む。

ゾブリストは「このままでは人類は100年後に滅びてしまう」と言われるほどの深刻な人口増加問題の過激な解決策として、人類の半数を滅ぼす為のウィルスを生み出す。
そしてダンテが予言した人類の“地獄”の未来図=<地獄篇(インフェルノ)>になぞり計画を実行する。

「100年後の人類滅亡」または「今人類の半分を滅亡させて生き残る道」どちらが正しい未来なのか?宗教象徴学の天才に対して、生化学の天才が突き付けた挑戦状。
ラングドン教授は地獄篇インフェルノの暗号コードに挑み、その選択を迫られる。

『ダ・ヴィンチ・コード』から10年が経った2016年、世界滅亡へのカウントダウンが始まった今、ロバート・ラングドン教授が全世界を揺るがす巨大な陰謀を解き明かす!(公式サイトより引用)

ラングドン教授のパートナーとして毎回登場するヒロインを、筆者は勝手にボンド・ガールならぬラングドン・ガールと呼んでいます。笑

今回のラングドン・ガールはフェリシティ・ジョーンズ演じる女医シエナ・ブルックスです。彼女は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』で主演を務めたことでも有名な女優です。

物語の始まりはフィレンツェ

今作は、ラングドンが怪我をして運び込まれた病院のベッドで目を覚ますという衝撃的なシーンから始まります。

本人も自分がどこにいて、何に遭ったのかすらも思い出せない状態。手当をしてくれていた女医シエナとの会話のあと、病室の窓からの風景で、ラングドンは自分の居場所を知ることになるのです。

―どうして、僕はフィレンツェにいるんだ…?

すると「ラングドンと話をしたい」と病院を訪ねてきた女性警官がいきなり発砲。ラングドンとシエナは必死の思いで病院を脱出し、ひとまずシエナの暮らすアパートに身を潜めることにします。

そこで服を着替えようとしたラングドンは、自分が搬送時に身に付けていたジャケットのポケットから、危険な医薬品などを運ぶためのバイオ・チューブを発見します。

中身はファラデー・ポインター(小型のプロジェクター)でした。

壁に映したところ、そこに描かれていたのはボッティチェッリ作「地獄挿絵」だったのです。よく見るとそこには10個のアルファベット「CATROVACER」が散りばめられていたのでした。

①ヴェッキオ宮殿内の五百人広間(Sala dei Cinquecento a Palazzo Vecchio)

謎のアルファベットの答えは、フィレンツェの中心街のヴェッキオ宮(Palazzo Vecchio)にあります。

ヴェッキオ宮は、フィレンツェを訪れる人であれば一度は踏み入れるであろう観光スポットとして知られ、中世の共和国時代の政治の面影を知ることができるとあって人気となっています。

かつて会議などが開かれた五百人広間(Sala dei Cinquecento)には、ジョルジョ・ヴァザーリ作『マルチャーノの戦い』が描かれています。この壁画の中には「CERCA TROVA」(伊:探して見つけ出せ)と描かれた緑色の旗があります。

10個のアルファベット「CATROVACER」は、このアンビグラム(綴り替え)でした。

ジョルジョ・ヴァザーリは16世紀の人物で、画家・建築家として有名です。生まれ故郷はアレッツォという、フィレンツェから南東に20kmの位置にある町です。

同じ町から、イタリア・ルネサンス三大詩人の一人、ペトラルカも誕生しています。

建築家としての功績は、フィレンツェの至る所に見ることができます。ヴェッキオ宮、ウフィツィ美術館、サンタ・クローチェ教会などで彼の作品が鑑賞できます。

②ヴァザーリの回廊(Corridoio Vasariano)

「ヴァザーリの回廊」はウフィツィ美術館とヴェッキオ橋上部を通り、ボーボリ庭園とヴェッキオ宮殿を繋ぐ回廊のことです。建設当時には完成に6年かかると言われていましたが、ヴァザーリはたった半年で完成させてしまったという逸話も…汗

通路自体は共和国の政治に絶大な権力をふるっていたメディチ家のために作られました。ボーボリ庭園を有する邸宅ピッティ宮と、執政所であるヴェッキオ宮を繋ぐ「通勤兼緊急用通路」という役目があったようです。

回廊内部には、ルネサンス期から現代にいたるまで、様々な巨匠たちの肖像画が展示されています。通常は非公開で、一般客は事前に予約したガイドツアーの引率によってのみ、内部を見学することができます。

映画では、ラングドンとシエナがボーボリ庭園より、追手から逃げるために使います。

③サン・ジョヴァンニ洗礼堂(Battistero di San Giovanni)

サン・ジョヴァンニ洗礼堂

フィレンツェのシンボル、サンタ・マリア・デル・フィオーレ教会(通称ドゥオーモ)の正面にある八角形の建築物です。内部の天井は、金色のまぶしいモザイク画技法で「創世記」や「最後の審判」が描かれています。

またダンテが幼い頃に洗礼を受けた場所でもあります。

作中では、ヴェッキオ宮から盗まれていたダンテのデスマスクが、洗礼盤の中に沈められていました。その裏側に描かれたメッセージを手掛かりに、ラングドンとシエナはヴェネツィアに向かいます。

アドリア海の女王ヴェネツィアに向かう

ダンテのデスマスクの裏に残されたたメッセージを手掛かりにヴェネツィアに来た二人。そのゾブリスト自身の創作による詩がこちら。

おお、健やかなる知性を持つ者よ
あいまいな詩句の覆いの下に
隠された教えを見抜け。
馬の首を断ち
盲人の骨を奪った
不実なヴェネツィアの総督を探せ。
黄金色をした聖なる英知のムセイオンのなかでひざまずき
地に汝の耳をあて
流れる水の音を聞け。
深みへとたどり、沈んだ宮殿に至れば・・・
かの地の闇に地底世界の怪物が待ち
それを浸す池の水は血で赤く染まるが
そこでは水面に映ることはない・・・星々が。

①「不実なヴェネツィアの総督(ドージェ)」…エンリコ・ダンドロ

「不誠実なヴェネツィアの総督」はエンリコ・ダンドロのことを示しています。エンリコ・ダンドロ(在位1192-1205)はヴェネツィアを統べる41代目の総督(ドージェ)でした。

ここで重要なのが、彼の在位中に行われた第四次十字軍です。とはいえ第一次・第二次の十字軍とは異なり、聖地エルサレムを奪還するという宗教的な熱意も失われ、単なる軍事遠征となっていました。

第四次十字軍は、エジプトからの上陸を計画しました。しかし、動機もぼやけていたこの十字軍を輸送する船舶など、誰も提供しようとは考えませんでした。そこで彼らは地中海貿易で栄華を誇っていたヴェネツィアに助けを求めたのです。

1192年に総督となったエンリコ・ダンドロは、知略に優れた老獪な人物でした。当時エジプトはヴェネツィアにとって重要な貿易相手であったため、ダンドロはこのように考えます。

「十字軍には大切な商売相手ではなく、目障りな商売敵を攻撃させよう」

ダンドロは十字軍に資金を提供する見返りとして、当時アドリア海で海上貿易に大きな力を持っていたザラ市(現ザダル、クロアチア)を攻撃するように要請したのです。

この策略は功を奏し、キリスト教の町であったにもかかわらず、ザラ市は破壊されました。

しかし、略奪の味を覚えた第四次十字軍は、そのまま進軍を続けました。上陸したバルカン半島の先には、シルクロードの終着点であり、アフリカ地域への貿易の窓口として栄えていたコンスタンティノープルがあったのです。

西方教会と肩を並べる東方教会の総本山コンスタンティノープルに、第四次十字軍は入城し、同都市を占領してしまったのです。

1204年にはラテン帝国が建設され、十字軍はヴェネツィアの駒となって踊らされた結果、ヴェネツィアに地中海の制海権を握らせてしまいました。

②「黄金色をした聖なる英知のムセイオン」…サン・マルコ大聖堂?

ラングドンは「黄金色をした聖なる英知のムセイオン」をヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂と踏み、ヴェネツィアに来ることを決めました。サン・マルコ大聖堂はヴェネツィアにおけるランドマーク的存在です。

1071年に完成したこの大聖堂は、内部が黄金のモザイクで豪華に装飾されており、ラングドンがそのように解釈するのも頷けます。

そのテラスには、四頭の馬のブロンズ像が置かれています。

これは先述したダンドロが、コンスタンティノープル占領の際に戦利品として持ち帰ったもののレプリカです。(本物は付属博物館に所蔵)

彼はこれらの馬を持ち帰る際に、運搬を楽にするべく、外すように命じたようです。ゾブリストの詩の中では「切った」に変わっていますが、その記述はあります。

このヴェネツィアでは、映画「インフェルノ」は大きな転換点を迎えます。ラングドンと行動を共にしていたシエナは、実はゾブリストの恋人であり、支持者だったことが判明します。

ウィルスの隠し場所が、実はイスタンブール(旧コンスタンティノープル)であることがラングドンの推理によって分かった途端、シエナは彼を裏切って姿を消しました。

東西の玄関イスタンブールへ

ラングドンはウィルスの拡散を防ぐべく冒頭から行動していたWHOのシンスキー博士らと共に、急遽イスタンブールへ向かいます。彼らはまずイスタンブールの「英知のムセイオン」、つまりハギア・ソフィア聖堂に急行します。

①「黄金色をした聖なる英知のムセイオン」…ハギア・ソフィア聖堂

4世紀に建設された大聖堂で、6世紀に起こった反乱で破損したのち、東ローマ皇帝ユスティニアヌス帝により新しく設計がなされ、再建されました。工事には1万人が携わり、当時としては異例なほど早い、わずか5年と10カ月の歳月を経て完成しました。

現在は周囲に四本のミナレット(尖塔)が建っています。これは1453年以降、イスラーム勢力圏内に取り込まれた際に、追加されたものです。

なお先述のヴェネツィア総督エンリコ・ダンドロの墓は、この聖堂の床石の一部に埋め込まれています。

②「沈んだ宮殿」…イエレバタン・サラユ(地下宮殿)

ラングドンがダンドロの墓のあったところで床に耳を当てると、水の流れる音が聞こえます。その先にあったのが、このイエレバタン・サラユでした。

東ローマ帝国時代に建設された貯水池で、世界遺産にも登録されています。現在は一般に公開され、内部にはカフェやお土産屋などの商業施設もあります。

貯水池の天井を支える大理石の円柱は、合計で336本もあるそうです。作中でも登場するように、メドゥーサを象った柱が上下逆さまで使われているところを確認できます。

貯水池という目的で建設されたことから、美術的なセンスを求めて作られた訳ではなかったことがその理由の一つとも言われています。

終わりに

最後にご紹介したイエレバタン・サラユにて、シエナを含むゾブリスト支持者とラングドンたちのスリリングな場面が展開されます。しかし、そのラストはどうかご自分の目で確かめてみてください。

この記事では、映画「インフェルノ」の核心に触れる項目をいくつも出してしまいました。そのため、ネタバレを連発しているかとは思いますが、どうかご了承をいただきたいです。

劇場での公開は既に終了しておりますが、ぜひ一度、ご鑑賞ください!夏休みをきっかけに「ダ・ヴィンチ・コード」シリーズ三部作を鑑賞してみるのもおすすめです!

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