「ピエモンテのブドウ園景観 : ランゲ=ロエロとモンフェッラート(Vineyard Landscape of Piedmont: Langhe-Roero and Monferrato)」。
ピエモンテの世界的に有名なワインの産地がまるごと世界遺産となっています。特に代表的な観光地は、バローロとモンフェッラート。最初にワインがつくられ始めたのは、なんと紀元前5世紀ごろ!当時のブドウの花粉が発見されたことが知られています。
ここでは、有名な赤ワインである「バローロ」というワインの原料となる、ネッビオーロ種というブドウをはじめ、世界的にも良く知られているブドウ種を栽培しています。
また、イタリア王国初代首相のカヴールが、この地域に城を持っており、赤ワイン改良のための試みが行われました。首相自らワイン造りを支援するなんて、さすがイタリアです。
①バローロ
ランゲ地区で有名なのは、なんといっても「ワインの王様」といわれるバローロです。人口わずか700人、面積は成田空港の約2/3程度という小さなバローロ村から、ネッビオーロ種を使ったイタリアの最高級赤ワインが生産されるのです。
バローロと並び「ワインの女王」といわれるバルバレスコも、この地区で生産されます。バルバレスコ村は美しい丘陵地にあり、中世の建物群や古いワイン醸造施設などの残る景観も世界遺産の構成資産の1つです。ランゲ地区と隣接するロエロ地区では、イタリア語で「ちょっと変わり者」と意味するアルネイス種で造られる白ワインの生産が盛んです。
②モンフェッラート
モンフェッラート地域のブドウ畑は丘の起伏を利用したところが多く、さらにその頂上には城館が建っていて、独特の美しい風景を作り上げてます。人口1万人の小さな町ニッツァ・モンフェッラートを中心に、その周辺ではピエモンテでメジャーな品種バルベーラ種を使った赤ワインが生産されています。
カネッリ村周辺では、マスカット種を使った発泡性のスプマンテと呼ばれるスパークリング・ワインが数多く生産されていて、世界各国に輸出してます。生産されたスプマンテは、地下約30mに造られた「大聖堂」と呼ばれる温度・湿度が自然の力で管理されている空間で貯蔵され、世界遺産登録時には建築学の観点からたいへん評価されました。
見学ツアーを行っている醸造所もいくつかあります。また、バッソ・モンフェッラート地区には岩をくりぬいて造ったワインの貯蔵庫がたくさんあり、世界遺産に含まれる6つのスポットの1つにもなっています。
③グリンザーネ・カヴール城
ピエモンテのワインは古代からの歴史をもつものの、長らくあまり良い評価はされていませんでした。18世紀の中ごろ、ピエモンテの貴族カミッロ・カヴールは、領地であったバローロ地区のワインの改良に挑戦しました。フランスからワイン醸造学者を招き、研究に研究を重ねてバローロのワインを力強く、長期熟成にも耐えられるような重厚なワインに仕上げたのです。
カヴールの事業に感心した主君のサルデーニャ王は、別荘として使っていたこの城をワイン造りの研究所として提供しました。その後カヴールは他の地区のワインも改良し、ついにピエモンテは世界でも立派に通用するワイン産地になったのです。ピエモンテの英雄カミッロ・カヴールはイタリア統一に尽力したことでも知られ、サルデーニャ王国がイタリア王国となると、その初代首相になりました。
現在はワイン博物館や州立ワインショップ、レストランとして使用されています。ピエモンテの名産品である白トリュフのオークションが開催されるのもこの城です。