今日のアメリカとコロンブスのつながり
2017年に入り、白人至上主義や、移民政策など、混沌を極めているアメリカ。これまで触れられてこなかった問題でさえ、世界中の様々な情勢を受け、人間そのものが「むき出し」になっているような印象さえあります。
「なぜBUONO!ITALIAでアメリカを?」と思われた方もいるかもしれませんが、本記事で取り上げるのは、アメリカの白人至上主義批判と、イタリア人開拓者コロンブスとの関係性。
アメリカで起きている問題を、遠い昔のイタリアと絡める形で起きている「コロンブス像撤去問題」。果たしてどのようなものなのか、問題提起し、解説していきたいと思います。
白人至上主義批判とコロンブス像問題
コロンブス像への破壊行為
NHKによれば、9月に入ってアメリカのテキサス州、ニューヨーク州、メリーランド州などでコロンブス像にペンキがかけられる等の被害が出ているそうです。これは、目下アメリカで発生している、白人至上主義を巡る衝突が引き金となっていると考えられています。
ニューヨーク市当局は以後の被害を防ぐべく、セントラルパーク内のコロンブス像の撤去を検討しているそうです。
イタリア生まれのコロンブス
コロンブスは、イタリアの港町ジェノヴァで生まれたと言われており、ジェノヴァのフェッラーラ広場近くには彼の生家とされる家も残っています。ジェノヴァのピアッツァ・プリンチペ駅の広場には彼の大きな像が立っていて、観光客たちを出迎える顔として有名です。
また、ポルト・アンティコにはコロンブスにちなんだ大きな博物館もあります。
「新大陸」発見の裏側で
コロンブスは1492年に「新大陸」の北アメリカ大陸を発見したことで有名です。しかし、彼にも征服者(コンキスタドール)としての一面があることはあまり知られていません。彼は、サン・サルバドル島で遭遇したインディアンについて「よい奴隷になるだろう」と記しています。
また当初に築いた基地がインディアンたちに破壊されたことに対し、拷問、放火、殺人などを駆使して彼らの大虐殺を行った記録も残っています。
イタリア側の反応
一般的に、アメリカ在住のイタリア系アメリカ人は、コロンブスを英雄視する傾向が強いといわれています。ツイッター上でも、コロンブス像の破壊を非難する声や悲しむ声が多数上がっています。
イタリア系移民の母親を持つ作家ポール・セローは、伊大手紙「レプッブリカ」からの取材に対して以下のように答えています。
「コロンブスは偉大で勇敢な航海者であり、アメリカの歴史を創った人物だ。こんなやり方で消されるものではない。コロンブスの銅像は残されるべきで、イタリアの人々にはその歴史的背景を説明してもらいたいし、常軌を逸した米国の人々を正気に戻させてほしい」
「破壊行為に対して、イタリアが感じるのは不幸さではなく嫌悪感であるが、問題はもっと大きなものだ。銅像を壊すのではなく、すべての歴史の犠牲者を忘れないためのものを造ることが必要なのである」(2017年9月2日付『Repubblica』紙より一部抜粋・編集して和訳)
今後の動向
アメリカでは10月の第2日曜日は、コロンブスがアメリカに到達したことを記念し「コロンブス・デー」という祝日になっています。しかし、ロサンゼルスではこれを「先住民の日」に名称を変更する議案が賛成多数で可決されました。
歴史認識を改めていこうとする傾向が確実に強くなりつつある中で、さらに議論が重ねられることになりそうです。
参考サイト:
・http://www.repubblica.it/esteri/2017/09/02/news/
・http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170831/k10011120631000.html
・https://newsphere.jp/national/20170825-3/