「誰が一番お金を持っているか」
これは、多くの人にとって興味関心の対象であり、多く稼ぐことに対して憧れを持つ人もたくさんいます。毎年フォーブス誌では、世界の億万長者ランキングトップ100が発表され、注目を集めていますが、イタリアでは、一体誰が、億万長者としてその名を知られているのでしょうか。
この記事では2017年に発表されたデータを基に、イタリアの億万長者ランキングトップ10をご紹介したいと思います。
イタリアの億万長者ランキングトップ10
10位 パトリツィオ・ベルテッリ
年齢:72歳
純資産:32億ドル
企業・事業:プラダ代表取締役
人気のファッションブランド、プラダ(Prada)の代表取締役を務めるパトリツィオ・ベルテッリ(Patrizio Bertelli)氏は、1987年にミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)氏と結婚。プラダ氏がデザイナーとしての仕事をする一方で、ベルテッリ氏はマーケティング活動を積極的に推進。
その後1986年に初となるニューヨークへの出店を皮切りに、次々と世界進出を果たした上、現在のプラダグループを支える4つのブランド、すなわちプラダ、ミウミウ(Miumiu)、チャーチ(Church's)、カー・シュー(Car Shoe)を販路拡大やM&Aで創出しました。
9位 ジュゼッペ・デロンギ
年齢:79歳
純資産:38億ドル
企業・事業:デロンギ代表取締役
イタリア・ヴェネト州の町・トレヴィーゾ(Treviso)で誕生したのが、家電メーカーのデロンギ。私たちは「デロンギのヒーター」としてよく知っているかもしれません。このヒーターは、どれだけ長時間かけても室内が乾燥しないという優れもので、私も毎冬使っています。
この会社を親から引き継ぎ、世界的なメーカーにまで押し上げたのが、ジュゼッペ・デロンギ(Giuseppe De' Longhi)氏。ヴェネツィア・カフォスカリ大学卒業後に経営に積極的に携わり、今日ではヒーターだけでなくコーヒーメーカーやキッチン家電なども有名になりました。
現在もオフィス本拠地をトレヴィーゾから移しておらず、彼自身も家族とトレヴィーゾに住んでいます。
8位 ジャンフェリーチェ・ロッカ
Benvenuto nel Consiglio di Amministrazione #LUISS a Gianfelice Rocca, Presidente @Assolombarda e Techint Corporation pic.twitter.com/9CQTfhKDFs
— LUISS Guido Carli (@UniLUISS) 2016年7月25日
年齢:70歳
純資産:44億ドル
企業・事業:テチント・グループ会長
日本には三井・三菱などの有名な財閥があり、財界を支配していますが、実はイタリアにも巨大な企業を統合する財閥のようなものが存在します。その一つが、このジャンフェリーチェ・ロッカ(Gianfelice Rocca)氏がロッカ家の代表として会長を務めるテチント・グループ(Techint Group)です。
あまり馴染みのない企業かもしれませんが、建設・鉄鋼・ガス・石油などの工業部門を牛耳っています。会長自身も、2013-17年まで、ミラノ県を含むロンバルディア州における中心となる県によって結成されている産業協会の代表を務め、イタリア北部の企業に対する影響力は絶対的。
イタリアのミラノとアルゼンチンのブエノスアイレスに本拠地を持っています。イタリアらしくない、資本主義を前面に押し出したグローバル企業の一つと言えるでしょう。
7位 ペルフェッティ兄弟
年齢:不明
純資産:57億ドル
企業・事業:ペルフェッティ・ヴァン・メッレ社代表取締役
イタリアのペルフェッティ社とオランダのヴァン・メッレ社が合併して2001年に誕生したのがペルフェッティ・ヴァン・メッレ社。さらに、2006年にはかの有名なチュパチャプス社も傘下に収めています。
現在共同経営者として決定権を持つ、イタリア人のアウグスト・ペルフェッティ(Augusto Perfetti)氏とジョルジョ・ペルフェッティ(Giorgio Perfetti)氏の兄弟は、2人で莫大な財産を築き上げました。
6位 ジョルジョ・アルマーニ
年齢:84歳
純資産:66億ドル
企業・事業:アルマーニ創業者
アルマーニのショップは、イタリア各地どこを歩いていてもすぐに見つけることができるほど、とても目立っていました。現在もバリバリの現役であるジョルジョ・アルマーニ氏は、1975年にファッション・ブランドを立ち上げ、たった40年程度で、イタリアのみならず世界を代表する高級ブランドに成長させました。
その誰も思いつかないようなアイデア、デザインは世界中を魅了していますが、彼自身は非常に質素を好み、今日まで誠心誠意、デザイナーとしての活動を続けています。
ちなみに、アルマーニの中でも高級路線はジョルジョ・アルマーニ、比較的安価路線はエンポリオ・アルマーニという棲み分けがされています。
5位 ベルルスコーニ家
年齢:81歳
純資産:70億ドル
企業・事業:実業家、元イタリア首相
日本で最も有名なイタリア人と言っても過言ではないシルヴィオ・ベルルスコーニ(Silvio Berlusconi)氏の資産が第5位にランクインしています。彼はもともと実業家として知られており、大手民放テレビ放送局4社を全て自分の傘下に入れるなど、その傍若無人かつ衝撃的な振舞いから「メディア王」と呼ばれました。
その後イタリアの強豪サッカークラブ・ACミランの会長を務めたり、9年間に渡りイタリアの首相を務めたりと、活躍を続けました。
同時に、脱税・買春・贈収賄などの嫌疑がいつもつきまとっていますが、常に強力なリーダーだった彼は、なんだかんだ多くのイタリア人に愛されています。
4位 マッシミリアーナ・ランディーニ・アレオッティ
年齢:75歳(76歳とも)
純資産:95億ドル
企業・事業:メナリーニ社元代表取締役
イタリアの億万長者ランキング4位でありながら、同時に「世界の女性億万長者ランキング」でも10位に入る実業家。マッシミリアーナ・ランディーニ・アレオッティ(Massimiliana Landini Aleotti)氏は、19世紀末、ナポリ創業でフィレンツェに現在の本拠地を持つ製薬会社・メナリーニ(Menarini)社の元代表取締役でした。
現在は娘と息子がそれぞれ代表取締役を務めており、既に世襲は完了しています。製薬会社ということもあり、あまりメディアに露出することもないため、彼女の私生活については謎に包まれています。
3位 ステファノ・ペッシーナ
年齢:77歳
純資産:134億ドル
企業・事業:ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスCEO
薬局チェーン大手のウォルグリーン・ブーツ・アライアンスの筆頭株主でありCEOでもあるステファノ・ペッシーナ(Stefano Pessina)が、現在の会社を立ち上げたのは2014年のこと。それまでに彼は、ヨーロッパ、アメリカ、インドなどを代表する製薬会社・ドラッグストアチェーン約1500社程度買収し、世界一の薬局会社を創ったのです。
その姿は、世界各国のIT企業の買収を繰り返し億万長者に上り詰めたソフトバンク会長・孫正義氏のようです。今後もペッシーナ氏とウォルグリーンの勢いは、さらに強くなっていくでしょう。
2位 レオナルド・デル・ヴェッキオ
年齢:83歳
純資産:179億ドル
企業・事業:ルックスオッティカCEO
イタリア第2位の億万長者であるレオナルド・デル・ヴェッキオ(Leonardo Del Vecchio)氏が、なんとメガネ会社のCEOだとは思いませんでした。
1967年にメガネ事業をスタートしたルックスオッティカ(Luxottica)社は、その精巧な作りと高いファッション性で人気を集め、イタリアを代表するメーカーに。その後イタリアのみならずヨーロッパ全土、南北アメリカの有名企業を次々と買収し、世界を代表するメーカーになりました。
今日では、ブルガリ、グッチ、プラダ、ラルフローレン、シャネルなどの名だたる高級ブランドと独占ライセンス契約を結んでいます。ハイブランドの店舗に並ぶメガネの大半は、ルックスオッティカ製のメガネかもしれません。
1位 マリア・フランカ・フィッソーロとフェレロ家
年齢:77歳
純資産:252億ドル
企業・事業:フェレロ創業者の妻
堂々のイタリア第1位の億万長者は、マリア・フランカ・フィッソーロ(Maria Franca Fissolo)氏。彼女の夫であった故人・ミケーレ・フェレッロ(Michele Fererro)氏が経営していたフェレロ社は、イタリア好きの方なら誰もが知っているあの朝食のお供、ヌテッラ(Nutella)を製造する会社です。
このヌテッラは、イタリア人なら嫌いな人がいないのではないかと思うほど、子どもを中心とした全員が大好きで、国民食レベルの人気を誇ります。またヌテッラ以外にもキンダー(Kinder)やエスタテ(Estathé)など、イタリアのスーパーで一度は見かけたことのある商品の製造・販売を展開しています。
ミケーレ氏の死後、莫大な資産はマリア・フランカ氏が相続することとなり、約3兆円にも及ぶ遺産を得ることとなりました。
さいごに
目玉が飛び出てしまうような額を持つイタリアの資産家たちを紹介してみましたが、いかがだったでしょうか。イタリアというと、中小企業の割合が非常に多く、どこも家族経営による手法が残っていると思われる方もいますが、実際のところ、こうして何百の企業を買収して多国籍化を推進する企業も多く存在します。
こうした人々の凄さに注目するのはもちろんですが、それ以上に、こうした熾烈で大規模の競争に、イタリアの中小企業も何とか立ち向かっていってほしいと思っています。
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