ボローニャのど真ん中、みんなに愛される街の図書館

ボローニャのど真ん中、みんなに愛される街の図書館

YASUE

初めてのイタリアは仕事で訪れたペルージャ。以来たびたび日伊を往復すること5年、離職してボローニャで大学院生に。卒業後もそのまま在住。現在は絵本と子育てについてのブログを書きながら、ときどき映画の仕事も。

先月から段階的にロックダウンの規制緩和が行われたイタリア。一部の業種を除きほとんどの店や施設が再開してからひと月が経った今、ながらく静まり返っていた街中にもだんだんと活気が戻ってきました。

比較的長く厳しい外出制限が強いられていた北イタリアに住む筆者も、少しずつ元の生活を取り戻しつつあります。そして禁止令発令中、再開したら真っ先に訪れたいと思っていた場所がこの吹き抜けの美しい建物。

実はこれ、ボローニャで一番大きな市立図書館なのですが、なかなかユニークな公共空間でもあります。今日はこの、一度入ったらつい長居してしまうサラボルサ図書館(Biblioteca Salaborsa)についてお話しします。

歴史

写真引用元:サラボルサ図書館公式サイト(www.bibliotecasalaborsa.it/documenti/storia)

まずは図書館の名前に注目です。サラボルサとは、イタリア語で取引所の意味があります。その名の通り、ここでは20世紀初頭まで商業取引が行われていました。

やがて取引需要の後退に伴い、レストラン、銀行、観光案内所などに入れ替わった後、第二次世界大戦後はバスケットボールやボクシングの試合が行われる競技場と化します。

さらに1960年代以降はいったん行政機関の事務所が入りますが、2000年にボローニャが欧州文化都市に選ばれたことで市が文化政策に着手し、その一環で老朽化した建物を改修し図書館として新しい命を吹き込むことになりました。こうして2001年12月に、現在のサラボルサ図書館が開館しました。

地下に眠る遺跡

改修工事の際、地下の発掘調査で見つかったのが古代ローマの舗装道路や井戸の遺跡です。現在は見学可能で、地上一階硝子張りの床から覗くこともできます。

古くから多くの人が行き交ってきたであろうこの場所は、今もボローニャ旧市街を代表するマッジョーレ広場に面しており、いつも市民や観光客で賑わっています。

本だけじゃない、いつ来ても新鮮な美しい空間

それでは実際の館内を少し見てみましょう。入り口を少し進むと、アールヌーボー様式のファサードが美しい吹き抜けのメインホール(本記事冒頭の写真)に突き当たります。その四方を囲むように一階には返却貸出カウンター、乳児向けの図書室と親子教室、カフェなどがあります。

広々としたこのホールで最初に目を引くのが、新刊や特集本のコーナー。上の写真は、毎年イタリア各地で開催される自転車の国際ロードレース、ジロ・デ・イタリア(Giro d'Italia)の会期に合わせ、関連の書籍がずらりと並んでいたときのものです。

そのままホールを奥に進むと、真っ白な空間が美しい図書館へ。コの字型の椅子は本を読むのにぴったりのデザインで座り心地もなかなかです。児童書と旅行書以外の本はほぼここに揃っています。

僅かながら外国の本もあり、在住の方が寄贈したのでしょうか、ジャンルは偏っていますが日本語のものも少し。イタリア語と外国語のタンデム(言語交換)カウンターもあります。

また地下には広々としたオーディオ貸出コーナーがあり、クラッシックから少し昔のポップスまで、さまざまなジャンルのCDを見つけることができます。

吹き抜けのホールに戻ると上階へと続くエスカレーターがあります。二階には自習室、閲覧スペース、新聞・雑誌・機関誌、旅行書が充実。DVDの貸出と映像視聴室もあります。自習室や閲覧スペースはいつも混んでいるので、運よく空席があったらすぐに座りたいものです。

また館内には講堂やイベントスペースもあり、展覧会、定期的な読書会ほか、多様な催しが年中企画されています。今でこそこうした多目的図書館は各国でも珍しくなくなりましたが、2001年の開館当初は欧州でも先駆的な例だったようです。

こうしてサラボルサはマルチメディアスペースや市民の交流場として、図書館の新たな役割を提言してきたように思います。

子どものための、とっておきの部屋

さて、最後にご紹介したいのがサラボルサの児童図書館(Biblioteca Salaborsa Ragazzi)です。改修前は人形劇場もあったというメインホール手前の一角に、なかなか立派な児童図書館があります。

ボローニャでは世界最大規模を誇る国際絵本見本市が毎年開催されることもあってか、ここの蔵書はとても充実しており、多国籍な児童書がずらりと並んでいます。

毎月いろいろな言語での読み聞かせもあり、例えば現地に住む日本人や日伊ハーフの子どもを対象とした日本語の会もあります。写真は英語絵本の読み聞かせ。みんなネイティブスピーカーのお姉さんの語りに夢中になっていました。

おわりに

いかがでしたか。多くの人に待ち望まれてようやく再開したサラボルサですが、当分は返却と予約制の貸出に利用が制限され、平常通りの賑やかな図書館に戻るにはしばらく時間がかかりそうです。こちらは再開前に撮影した人気のない正面玄関。いつもは図書館の利用者だけでなく、階段にしゃがんで待ち合わせや休憩をする人で溢れ返っています。

ミラノとフィレンツェの間にあり高速列車も停まるボローニャですが、限られた時間でのイタリア旅行となれば、わざわざこの街に降り立つ人もそう多くはないでしょう。でもボローニャにはこの図書館はじめ、観光地として有名になることはなくても、とても魅力的な場所がたくさんあります。

街歩きの休憩がてら、本とコーヒー片手に地元の人々の会話に耳をそばだてる。もしもボローニャ滞在の機会があれば、サラボルサ図書館でそんな時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

参照

サラボルサ図書館公式ページ

※2020年6月現在は開館時間とサービスが縮小されています。最新の開館情報は随時公式ページをご確認ください。

住所: Piazza del Nettuno, 3, 40124 Bologna BO

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