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【イタリア映画レビュー】95分間笑いっぱなしのコメディ「L'ora legale」のあらすじと魅力

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イタリア留学中、映画館で鑑賞した映画は、なぜか「スターウォーズ」や「ファンタスティックビースト」や「ワイルドスピード」などのアメリカ映画ばかりでした。その中で唯一見たイタリア映画が「L'ora legale」というコメディでした。

日本では全くと言っていいほど知られていませんが、実は、イタリア社会の実情をありありと描いた大爆笑間違いなしのコメディ映画です。この記事では、映画「L'ora legale」のあらすじや魅力について、丁寧に紹介したいと思います。

映画について

原題:L'ora legale(日本語直訳:サマータイム)

公開年:2017年

ジャンル:コメディ

監督:Ficarra e Picone(フィカッラ・エ・ピコーネは、イタリアのコメディアンです) 

キャスト:サルヴァトーレ・フィカッラ、ヴァレンティーノ・ピコーネ、ヴィンチェンツォ・アマート、トニー・スペランデオ など

登場する場所:テルミニ・イメレーゼ(イタリア)

あらすじ

新市長!めちゃくちゃな町を変えて!

イタリア・シチリア島の架空の町・ピエトラッマーレ(Pietrammare)。ここは、いわゆる私たちがイメージする「南イタリアらしい町」。二重三重縦列駐車のせいで日常茶飯事の渋滞、分別が一切ないゴミの分別、住民と仲良しで一切取締りをしないダメな警察官、汚職まみれの市長など、全てにおいて適当っぷりが目に余ります。

サルヴォ(左)とヴァレンティーノ(右)。二人は本名で出演しています。

そんな町でバールを営む兄弟であるサルヴォ(Salvo)とヴァレンティーノ(Valentino)は、義理の兄で弁護士でもあるナトリ(Natoli)が、次期市長選に立候補すると知り、全力で応援。

汚職市長のパタネ(写真中央)を追い払え!

「誠実で真面目なナトリが市長になれば、きっと町の問題を全で解決してくれる!」と住民からも強力な支持を受け、なんやかんやで現職市長・パタネ(Patanè)を退け新市長に当選しました。

変わっていく町、しかし...

市長に就任したナトリ

ナトリは就任早々、町のあらゆる問題を解決すべく様々な規則を設け、厳格に政策を実行していきます。

ゴミは絶対に正しく分別し正しい曜日に出さなければ罰則、路駐禁止区域の駐車は即罰則、道路などの公共スペースを利用したワゴンやバールなどは閉鎖、など、ナトリの政策は、友人や家族が被害を被ろうとも容赦せずに活動し、例外を一切認めない徹底ぶりで、市民たちを追い込んでいくようになります。

今までは「過去の付き合い」や「縁故主義」でどうにか切り抜けてきた住民たちでしたが、こうした人間味の無い厳格なナトリの政策に対して、彼らはだんだんとストレスを感じるようになっていきました。

住民を巻き込んだ抗議活動

そして、ヴァレンティーノの妻が働いていた工場が、汚染物質を垂れ流していたことが発覚し即刻閉鎖され、多くの住民が職を失うことに。これを契機にサルヴォとヴァレンティーノの現市長へのイライラは頂点に達し、2人を中心として市長への抗議活動を始めます!

当然、彼らは市長と義理の親戚関係にあるので大手を振って活動することはできませんが、それでも彼らの地道な抗議はすぐに住民の間に広がり、連日連夜自宅や教会に集まったりしながら作戦を練ります。

最初はこっそり市長の行ってきた政策を邪魔する程度でしたが、どんどんエスカレートしていき最後は警察まで味方につけて一大デモを敢行するまでに。不満の炎を燃え滾らせた市民たちは、ついにナトリのいる市庁舎の目の前で大声でデモを行い、見かねたナトリを外に引きずり出すことに成功します。

ナトリは市庁舎前から「私は君達が選挙で望んだことを実行してきただけじゃないか!どうしてそんなに反発するんだ!」と困惑しながら主張します。ナトリに対して放ったサルヴォとヴァレンティーノ、そして住民たちの答えとは?!そしてその後には意外なラストが待ち受けていました。イタリア語を理解される方は、ラストシーンは是非DVD等で確認してほしいと思います。

+ 【ネタバレ注意】ラストシーン

ナトリに対して住民が放った言葉は「出ていけ!」でした。この一言にデモ隊は大盛り上がりで「出ていけ」コール。結局、住民の期待を一身に背負って当選したナトリはその立場を追われ、結局は市長時代に汚職を繰り返してきたパタネがもう一度市長に復帰し、町は元通りになってめでたしめでたし...。

この映画の魅力はどこにある?

1.イタリアのあれこれが如実に表れている

この映画は、シチリア島の架空の町という設定になってはいますが、それでもやはりイタリア、特に南イタリアの現実を如実に反映したものになっている、というのは、私のサルデーニャ島出身の友人の言葉です。

交通渋滞や汚職政治家は鉄板ネタですし、全く取り締まりをしない警察官もよくあること。そして極めつけはゴミの分別で、日本のように燃えるゴミ・燃えないゴミの区別もないどころか、あらゆる全てのゴミを一緒くたに捨てるのは日常茶飯事。

トレイラー映像にもあった、スイカの皮の分別方法が分からないので、サルヴォが仕方なく皮も食べてしまうシーンは、イタリア人からすると爆笑ものみたいで、映画館でも大変盛り上がっていました。

私もローマでのホームステイ中、おばあちゃんに大きなワインセラーを捨ててくれと頼まれたものの、サイズがゴミ収集箱に入りきらないほどで、仕方なく横に放置して帰ってきたこともありました。

そして、こんな形で管理が行き届かないので、みんな好き放題。いろんな面で町がめちゃくちゃになってしまっているというのが、イタリアに対する典型的なイメージでしょうし、それをイタリアのコメディアンが持ち出しているということからも、ある程度現実をしっかりと反映したものなのだと思います。

2.人間味あふれる登場人物たち

最初は厳格に取り締まろうと頑張っていた警察官たち

他にも、住民ととても仲良しの警察官が、「俺は警察になって30年経ったのに、1度だって切符を切ったことが無かったんだ...。それなのに、それなのに、今はどうしてこんなに切符を切らないといけないんだ...。俺は本当に悲しくてたまらない」と泣き出したり、新市長の政策にストレスを感じ、耐えられなくった住民たちが、普段まったく行かない教会を毎日のように訪れるようになったり、とツッコミどころ満載でとてもかわいい(笑)

厳しい取り締まりをするのに疲れてしまいます(笑)

そうしたちょっぴり愛嬌のある住民たちの姿が、コメディらしくありありと描かれていて、見ている側も感情移入してしまう、いや、したくなってしまうような...とても人間味のある登場人物であふれています。

教会の司教。彼も最初は新市長を望んでいたのですが...?

ルールや規則はもちろん大切。だけどそのために、これまでの大切な縁や繋がりまで疎かにしてもいいのか?日本でもイタリアでも同じで、都会よりも田舎の方が人と人の繋がりを感じる機会が多いのではないでしょうか。人としてどちらを選ぶべきかは、実際に直面してみると想像以上に難しいことなのかもしれません。

3.グローバル化に後れるイタリアという現実

自分の興味分野に引きつける形になって恐縮ですが、私はこの映画を「イタリアはグローバル化にどう向き合っていくのか」という問題意識で見ていました。

ナトリ

このコメディの舞台の架空の町は、イタリアそのものとして描かれていて、過去のしがらみや人間関係などが価値観として大切にされる場所。そしてそこにルールを持ち込もうとしたナトリは、言うならばグローバル化を象徴していて、ダメな部分を次々と改善して町(国)を良くしようとする人です。

一方でルールにうるさいグローバル化の試みは、誰もが均質になるというデメリットがあります。つまり圧倒的に強い権力を持つ国や組織が作った、ルールや理想の姿に他の国が従わされた結果、どの国も同じようにならなければ生きていけなくなってしまうのです。

イタリアはもちろん様々な社会問題を抱えていて、経済状況も芳しくない、経済大国としてはドイツ、フランスなどには見劣りするかもしれません。ユーロへの貢献度も低下し、脱退なんて声もある。「グローバル化」や「ルール」という流れで考えれば、イタリアはダメな国に見えるかもしれません。

しかし「ルールになんか従わない、俺たちは俺たちのやり方でやっていくんだ」というこの町の強い姿勢は、ルールによって誰もが同じ方向を向かざるを得ない現代社会で、イタリアやイタリア人がこれから進む道を体現しているのではないでしょうか。

この映画の主人公であり監督でもあるサルヴォとヴァレンティーノが、本当にこんなことを考えていたかは分かりませんが、「グローバル化に抗うイタリア」という構図がこの映画の「ルールに抗う住民」と非常に良く似ているなと思ったのです。

さいごに

いかがでしたか?L'ora legaleは以前別の記事で紹介した「いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち」ほど日本での知名度が高くないので、動画を探すのが大変かもしれませんが、Amazonなどのネット通販で購入して、是非いっぱい笑ってください!

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  • この記事を書いた人

ゆうさん

『BUONO!ITALIA』の代表をしています。 ローマ・ラ・サピエンツァ大学に1年間留学。シチリア出身マンマが牛耳る大家族にホームステイし、様々な側面に触れる。イタリア語はCILS C1レベル。 現在は、イタリアの国民性と中小企業経営について卒論研究中。主な執筆記事は、社会問題、旅行、カルチョ、ポップ・ミュージックなど。

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