【トマト】Made in Italy、崩壊 中国産をイタリア産にすり替えるトリック

【トマト】Made in Italy、崩壊 中国産をイタリア産にすり替えるトリック

ゆうさん

学生時代にローマ・サピエンツァ大学に留学し、シチリア出身マンマが統べる大家族にてホームステイ。今は日系企業で国際提供業務に従事する社会人3年目。イタリアで仕事をする機会を細々と狙っています。サザンオールスターズとサンドウィッチマンが大好き。

Made In Italyとは?トマトの産地問題

イタリア料理といえばトマト!

イタリア料理には欠かすことのできない、重要な野菜であるトマト。イタリア語では「ポモドーロ(Pomodoro)」といいます。私たちが知っているような料理、例えばピッツァやパスタ、ラザニアなどにおいてもトマトがふんだんに使われているように、イタリアの家庭料理でも重要な役割を果たしています。

例えば、私がホームステイをしていた家のマンマも、毎週スーパーに行っては、500gのトマト瓶を5-10本ほど購入していました。

そして、日本でも日常的に食されているトマト、そしてよく活用されているトマト缶。実は、あなたの家にあるトマト缶、例え「イタリア産」と記載されていても、実は、「中国産」かもしれません

この記事では、イタリアでも話題になっている、トマトの産地問題について、考えていきたいと思います。

中国産がイタリア産に変身

私たちが住む日本では一時期「食品偽装問題」などが取り沙汰され、それ以降、食の安全に気を遣うことも多くなりました。中でも気になるのが産地。野菜一つとっても国産であることは非常に重要視されており、それが実は中国産だった、等の事実が発覚すると、大問題になります。

イタリアは、食の安全に関して日本以上に意識が高く、産地や生産者などを重要視する人が多くいます。

そしてここで問題となっているのが、中国産トマトなのに、ある工程を経ることでイタリア産トマトに変身し、それがイタリア全国、はたまた日本でも流通していることです。

通常ならありえない事態は、一体どのようにして起こったのでしょうか。そこには、あるトリックがあります。

「産地」ではなく「加工地」

「中国産トマトが、イタリア産になってしまうとき」http://www.greenme.it/

実は、トマト缶製造において、最も重要なのは、「どの国のトマトを使ったか」ではなく「どの国でトマト缶を加工・製造したか」です。つまり、缶の背に書かれた「Made In Italy(イタリア産)」の文字は、「このトマト缶はイタリアのどこかで作られたものだよ」ということを示したに過ぎません。

このからくりが最初に報道された数年前、イタリア国内では、消費者が企業を相手どった裁判を起こすなど、非常に大きな話題となりました。ですが、企業側の弁護士は「このトマト缶はイタリア産だ。だって、イタリアの水や塩を使って作ったんだから!」と強硬な姿勢を崩さなかったんだとか。

ピッツァのグローバル化

この問題は、今日でもイタリア国内で注目されています。ですが、「食の安全」に関する問題というよりは、むしろ「ピザのグローバル化」として取り上げられています。

イタリアで食べることのできるピザの、実に3分の2が、中国産のトマトとリトアニア産のモッツァレラチーズでできている、というから驚きです。

中国産トマトがはびこる理由

では、そもそもなぜこんな事態が引き起こされているのでしょうか。様々な理由がありますが、最も分かりやすいものを3つ挙げたいと思います。

1.熾烈な価格競争

グローバル市場に対応するための苦肉の策

トマトの主要生産国ランキングは、中国、インド、アメリカが上位3位をしめる(カゴメより)。

市場がグローバル化した現代において、競争相手はイタリア国内やヨーロッパだけでなく、世界にもたくさんいます。例え、イタリアが世界で一番のトマト缶輸出国だとしても、それだけのトマトをとても小さな国土だけでまかなうことはできません。

そういった状況の中で価格競争をし、世界への輸出を継続させるとなれば、当然安いトマトが必要となります。では、その安いトマトがどこで手に入るかといえば、まさに中国です。野菜ナビカゴメによれば、中国は、トマトの生産量ランキングにおいて圧倒的な1位(イタリアは7-8位)。だからこそ価格も圧倒的に安くなります。

そうした中でイタリアのトマト缶生産者が中国のトマト生産者と手を組むのは、苦肉の策といえるでしょう。

国内はもはや不可能

イタリアは、スローフード発祥の地だが....

「イタリア国内のトマトはもう安くできないの?」と思われるかもしれませんが、残念ながら不可能です。昨年の11月、国営放送Raiのラジオを聴いていた時のことでした。

その日のテーマは「中国産トマトとイタリア産トマト」で、ゲストにはマルケ州のトマト農家のおじさんが来ていました。彼は「既にイタリア産のトマトで普通のトマト缶を作っていたら儲からない」「マルケ産のトマトでさえ、既に1㎏1円程度で取引されていて、これ以上はどうにもできない」と切実な思いを打ち明けていました。

スローライフ、スローフード運動を掲げたイタリアにおいて、こういった問題が起きているのは、嘆かわしいと同時に、その活動の難しさを象徴しています。

2.マフィア

イタリアの社会問題の裏には、常に彼らの存在があります。食品業界においてもマフィアは強い。イタリアのみならず世界各国に強力なネットワークを持ち、政府や企業より早く利益に目をつけます。

2017年に『トマト缶の黒い真実』を書いたフランス人・ジャーナリストであるジャン=バティスト・マレ氏は、次のように指摘しています。

「彼らは“アグロマフィア”と呼ばれ、不法労働者を雇ったり、産地を偽装して格安の製品を売りさばいています。スーパーに並んでいるトマト缶がマフィアの活動資金になっているんです」

「人件費がマフィアによって不正に搾取されているので、当然製品は安くなる。大企業やスーパーがこういった現状に目をつむっているのは大問題です。今後、法規制を進めていくうえで、企業の責任も問われるでしょう」

「中国産」のトマト缶が「イタリア産」として売られているワケ(日刊SPA!)

3.表記法問題

現状、イタリアやEUの食品表示制度では、トマト自体の生産地を示すことは義務付けられていません。いわゆる法の抜け穴状態になっているといえます。今後こういった面にもっと目が向けられ、一日も早く加工前の原料の産地にも注目が集まることを願っています。

ちなみに、日本においても、加工食品に関しては、原料地の記載は義務付けられておらず、加工地が生産地として出荷されています。

どうしたらいいの?

concetrato_pomodoro_cinese

正直言ってどうしようもありません!味で見抜こうと言っても、中国産の場合、農薬がたっぷり使われていて、味はけっこう美味しい場合があります。また、味が悪い場合でも缶詰めにされてしまうとかなり判別がつきにくいでしょう。味に微妙な変化を見抜くのは、至難の技なのではないでしょうか。

スーパーで売られているイタリアのトマト缶は1缶100円程度、ネットで安いものを探せば80円程度で売られています。ひとつの手段としては、それなりに高いトマト缶を買うこと、またはトマトを潰して自家製トマトソースを作ってしまうことでしょうか。ですが自家製の場合、大量なトマトが必要になるうえ、日本のトマトの価格は高く、あまり現実的ではないでしょう。

さいごに

今日も少し難しいイタリアの現実について取り上げました。Gucciの問題とも共通しているのが、イタリア一国だけの問題ではなく、グローバル化した世界全体の問題の一端に過ぎないということ。今食べているイタリア産、安心ですか?

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