2大ラッパーの新アルバム
2017年に発売されたの2人のアルバムを先日購入いたしました。
今更感もあるのですが、簡単に彼らはどういった人なのか、そしてこのアルバムはどういったものなのか、日本の私たちから聴いても響くポイントや聴くべき点はあるのか、購入して損しないか、などなどを考えてみたいと思います。
イタリアの音楽に触れてみたい、という方には、このレビューが役に立つと思っています。
J-AX & Fedezとは
J-AX & Fedezとは、2016年に結成されたラッパーグループです。どちらもそれぞれイタリアを代表するラッパーとして、賛否両論ありながらも、大成功を収めてきました。
Jは2005年にもともと所属していたグループを解散後、1人で活動していましたが、2015年にアルバムを発売。そしてその中のMaria SalvadorはYouTube再生回数1億5000万を超える大ヒットになります。
またFedezは若手ラッパーとして知られていたものの、オーディションなどを勝ち抜いてスターになった人物です。詳しい彼の半生はこちらの記事をご覧ください。
そんな2人は10年来の交流があり、2016年から一緒にシングルを何曲か出した後、今回のアルバム制作に至ることになりました。
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楽曲の特徴
さて、ザックリと彼らの楽曲の特徴をお話ししましょう。一言で説明すれば「よくも悪くもラップっぽくない」です。
ラップといえばアメリカのエミネムのようなものを思い浮かべる方が多いかと思いますが、彼らのものはそれとはやや一線を画しています。どちらかといえばラップでありながらポップやディスコミュージックに近い要素を持っているため、ラップ好き以外の様々な層に訴えかけるようになっています。
実際私は、日本にいた頃はあまりラップには興味がなかったのです。ですが彼らのデビュー曲に関しては、ラップに対する苦手や抵抗感が全くなく、すんなりと好きになってしまいました。
2人の中ではどちらかといえばFedezの方が普段からラップらしくなさを出しています。
評価
さて社会全体としての彼らのアルバムはどのような立ち位置評価にあるのでしょうか。音楽情報サイトなどでは星3つ/5つなどのやや厳しい評価をしているものの、そのサイトではラップなどは比較的厳しめにされています。
それでもこのCDが売れないご時世に、ラップというCDが売れないジャンルで10万枚という驚異的な枚数を叩き出している事実は目を逸らすべきではありません。中高生を中心とした若者に圧倒的な人気を誇っており、知らない若者はほぼいません。
テーマは「自分と社会?」
もちろんアルバムや楽曲の意味は、それを作った本人にしかわかりません。多くの人はそれを推測するしかないので、私もそうさせてもらいます。このアルバムは、社会や、そこに暮らす人に対する批判や冷笑、皮肉がところどころに散りばめられています。
「Vorrei ma non posto」でネットやスマートフォンによって縛られた生活をする若者や、「Comunisti col Rolex」で、チェ・ゲバラを引用しながら、「Assenzio」で、過去の暗い歴史に向き合おうとする主人公などが描かれており、そしてそのどれもが、自分を取り巻くものと自分に焦点を当てています。
その中でただ社会を批判するだけでなく、一体どうしたらいいんだろう、という悩みや苦悩のようなものが見て取れます。
タイトルの「Comunisti col Rolex」
さて、タイトルの「Comunisti col Rolex」について考えてみましょう。日本語に訳してみれば「ロレックスを身に着けた共産主義者」となります。...いかがですか?このタイトルだけでも、何か矛盾のようなものを主題にしていることがお分かりいただけるはずです。
共産主義者が何を最も主題に置いているかといえば、政治や財政など全ての均等・平等化を目指すような体制のことを指します。そして、平等を目指す彼の振り上げられた腕に見えるのは、超高級時計ブランドのロレックスの時計。
言ってみれば、世界の真理を体現したかのようなジャケットとタイトルとなっています。
楽曲について
では、具体的に主題の楽曲についても見ていきましょう。
シングル曲はやはり聴きやすい
全16曲の楽曲の中で、そのうち4曲「Vorrei ma non posto」「Assenzio」「Piccole cose」「Senza pagare」は、シングルとして発売されています。特にその中でもVorrei ma non postoは1億6000万回再生され、社会現象的な大ヒットを誇りました。他の3曲も、季節やシチュエーションに合わせ、比較的誰にでも聴きやすいような仕上がりになっています。
Assenzioは、冬の背景とともに、特に自らの悩みに焦点を当てながら、それぞれが思いを綴ります。Senza pagareは、典型的なディスコミュージックとは違う曲調でありながらも、アップテンポでとってもノリやすい雰囲気の曲で、その特徴は特にPVを見ていただければわかると思います。
アルバム曲は面白さを感じさせる
そして、その他のアルバム曲12曲は、それぞれやや特徴的な曲の歌詞やタイトルといった感じです。
例えば「Pieno di Stronzi」は、日本語にすれば「クソの山」という意味。とてもシングル曲にはできなそうなタイトルですよね(笑)
そして「Comunisti col Rolex」は、2016年に起きた様々な問題を取り上げ、そしてイタリアや各国の有名人たちも登場します。アフリカからやってきた移民たち、脱税疑惑のあった超有名歌手ティツィアーノ・フェッロ、などなど。その中でも平等を謳う人々が、結局は資本主義を迎合する様を嘲笑うかのような歌です。
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また、「Musica del cazzo」は、本アルバムの中で、最もノリやすい曲かもしれません。歌詞が分からなければテンションを上げるだけでもいいかもしれませんが、もしイタリア語をご存知の方は耳を傾けてみてください。
自分たちが子どもだった頃のことを懐かしみながらも、そんな時代に自分を支えてくれた音楽、楽曲についても触れられています。そして、ラップらしく、有名人への皮肉(超有名歌手ヴァスコ・ロッシが、薬物中毒で活動中止したこと、など)も含まれています。
さいごに
いかがでしたか?やはりイタリアの音楽といえば、オペラなどに注目されることが多いものです。それでも私として、一若者として、イタリアのラップにも十分な可能性があるんだぞ、ということをイタリア留学中に知ることができたため、それを皆さんと共有できればと思い、執筆いたしました。
もしJ-AX &Fedezの楽曲に興味がありましたら、是非アルバムなどをチェックしてみてくださいね。