怖いこともたまにはあるイタリア旅行
海外旅行に失敗や不安はつきもの。イタリアの中でも特に南イタリアに旅行する時は注意した方がいいとか、ナポリは気をつけろとか、色々なことが言われますが、実際イタリアはどこも似たり寄ったりで、同じくらいの警戒が必要です。
ですが、自分からそういったリスクに飛び込んだために、めんどくさい事態に巻き込まれるのは避けたいものです。本記事では、私が昨夏、友人と2人でパレルモを訪れた時に、自分から白タクを使うというリスクに飛び込んで、めんどいなことになったお話をしたいと思います。
事の顛末
パレルモからモンレアーレを目指した私たち
この時私たちは、ナポリからインターシティノッテに乗ってパレルモに到着し、チェックインを済ませたばかり。そこから午前中にモンレアーレに向かい、午後に他の日本人の友人と待ち合わせる予定でした。
使える時間は3.4時間ほど。そのくらい短時間ではありますが、私たちは世界遺産でもあるモンレアーレの大聖堂を何としても見に行きたかったのです。
それは、私のホームステイ先の、シチリア出身のおじいちゃんが「モンレアーレの大聖堂は本当に綺麗だよ。パレルモに行ってモンレアーレに行かないのは、パレルモに行ってないことと同じだよ。」と絶賛していたから。そこまで言うなら、是非見てみたいという考えに至ったのです。
モンレアーレ行のバスを逃した!
パレルモ中央駅からモンレアーレまでは、バスを乗り継ぎ約1時間ほど。事前にGoogle Mapsを使って時間は調べていたのですが、乗り継いだ後のバスに偶然間に合わず、バスを逃してしまいました...。
この区間のバスは1時間に1本程度しかないため、このミスはかなりの痛手。次のバスを待っていると、予定の時間通りに友人に会えなくなってしまいます。
バス停で白タクに出会った
「俺が送ってあげるよ」
バス停のそばで困り果てていると、一人のイタリア人のおじさん(40代くらい・小太り)がやってきて、私たちに話しかけました。
「モンレアーレのバスを逃しちゃったの?じゃぁ俺が送ってあげるよ」と、おじさん。一目で分かりました。あ、白タクだ、と。また、私たちとおじさんが話していると、もう一人、運転手を名乗るおにいさん(20代・イケメン風)がやってきて、「モンレアーレのバスは本当に少ないからね。代わりに俺たちがこうして送り届けてあげてるんだよ。」と自信げ。
いや、お前ら偉そうなこと言ってるけど絶対白タクだろ、そう思った私は、敢えて料金を聞いてみることにしました。
意外と安い...
「いくらでモンレアーレまで行ってくれるの?」すると彼らは「1人20ユーロでいいよ」と言うのです。白タクのことだから、絶対「1人50ユーロだよ」とかほざくのかと思いきや、意外と安い。通常のタクシーでモンレアーレまで行くのよりも安く済みそうじゃないか?そう思ってしまいました。
バスを待っていてはモンレアーレまで行けない。ただ、モンレアーレには絶対に行きたい。しかしバス停があるのは三車線のめちゃめちゃ大通りで交通渋滞もけっこうひどい。とてもタクシーが捕まらなさそうだ、とその時の私は思ってしまったのです。
だから、明らかに白タクだと思いながらも、「本当に20ユーロ以上はびた一文も払わないよ!それでいいならモンレアーレまで連れてってくれ」と言いました。20以上を払うつもりはないので、リスクは最小限に抑えられると、甘い考えでした。
突如私たちを降ろす
談笑もつかの間
車に乗り込んでしばらくは、「日本のどこから来たんだ」とか「パレルモの渋滞はひどい」とか、観光地に関する会話などの、軽い談笑をしながら車は走ります。「この感じだったら大丈夫かもしれない」とも思いましたが、Google Mapsで常に目的地までの距離や所要時間を確認することは怠りませんでした。
しばらく行ったところで、いやまだ10分も経っていないところで、突然路肩に車を停めるおにいさん。
「さぁ、モンレアーレに着いたよ!」
路肩に車を停めると突如、「さぁ、モンレアーレに着いたよ!お疲れ様、ありがとう!」と言いながら、パレルモの大通りのど真ん中に、私たちを降ろそうとしたのです。ここモンレアーレじゃないよね?と尋ねても、いや、「ここだよここ」の一点張り。
何がなんだかよくわからずに、一度私たちは降りてしまいました。しかし、手に持っていたスマホの地図で確認すれば、ここがモンレアーレではないことは明らか!てかまだこっから7.8kmはあるんですけど。てかモンレアーレって丘の上の町なのに、こんなとこにあるわけないんですけど。
キレる私
立ち去ろうとするおにいさんに、スマホの地図を向けながら「ふざけんな!」「ここなわけないだろ!モンレアーレはまだこんな遠くじゃないか!」などと、めちゃめちゃに切れる私。
すると運転手は悪びれるようすもなく「渋滞してて全然進まないんだ!ここから歩いて行った方が速いよ」とかふざけたことを抜かします。「7.8kmもあって歩いた方が速いわけないだろ!ありえない!歩いてあそこまで行けると思ってんのか(モンレアーレのある方向を指しながら)!」
しぶしぶモンレアーレへ向かう運転手
言い訳の嵐
運転手は「わかった。わかった。」と言い、しぶしぶ私たちを乗せて再度モンレアーレへ出発しました。安心したのもつかの間、着くまでの間に永遠とバカみたいな屁理屈をこねくり回して、「モンレアーレまでは行けない」的なことを言い、何かにつけて私たちを途中で下ろそうとする運転手。
やれ「今日はモンレアーレまで行く道が通行止めだ」とか「今日はディーゼルのイベントをやっていてモンレアーレには入れない」とか、よくそんなに色々と思いつくなと感心したものです。
何とか抗戦
ですが、「ここで負けてはいけない」と無駄な意地を発揮し、何か言われるたびに(むしろあちらが何か言う前に)私は「こんなことがあり得るわけないだろ!」と地図を見せながら繰り返し「車ならあと10分で着くからはやく行ってくれ!」とか「今日イベントなんて情報はネットで確認したけど一切ないぞ(実際は確認してない)!」とかキレながら、何とか向かわせました。
十分歩ける距離まで来させる
その後も「行けない!」と「行け!」の繰り返しで、車内はより一層険悪な雰囲気に。そこで突然「もしこいつが銃とか持ってたらどうしよう」という一抹の不安がよぎりました。なぜここまで気づかなかったのかは分かりませんが、大声上げて啖呵切った後に、ちょっと怖くなってしまったのです。
そこで、モンレアーレまで歩いて10分くらいの距離まで来たところで、おにいさんに「そろそろいいだろ」と言われ、私も「もういいからここで下ろしてくれ」と伝え、2人そろって降りました。
私たちに付き合ってこんなモンレアーレの近くまで来なきゃいけなくなったことに苛立ってか、Uターンしたおにいさんの車は、時速100kmくらいのスピードで来た道を戻っていきました。
何だか余計なことで疲れてしまった私たち、そこから先は愚痴を言い合いながら、モンレアーレを目指しました。
モンレアーレ観光は楽しかった!
さて、そんなこんな死ぬほどストレスが溜まったモンレアーレまでの行程ですが、町に入った途端、目の前に大聖堂があり、思わず圧倒されました。中のモザイク装飾や回廊はとても美しく、どちらでも椅子に10分くらい座って、じっくりと見つめていました。また、博物館も丁寧な記述が多くて楽しめました。教会の博物館は非常に簡素なものが多かったり、記述が難しい場合も多いのですが、さすがは世界遺産。
さらには、大聖堂付近の高台からの景色は絶景!白タクに乗って苦労しながらも、何とか訪れることができて良かったと思えました。
バス停でまた遭遇
なんでまた奴がいるんだ!
2時間程度の短いモンレアーレ観光を終え、パレルモ市街地へ帰るためのバスを待っていました。往路はバスを逃しましたが、復路は幸いバスが来るようです。一安心していると、なんだか見覚えのある車が。なんと、さっきの奴です!
また別のカモを捕まえたらしく、モンレアーレに行きたい観光客を連れてきていたのでした。乗客と別れの挨拶を済ませると、バスを待つ列の中に私たちがいるのを見つけ、大胆にもまた声をかけてきました。
悪びれる様子は一切なし
「モンレアーレ観光は楽しかった?なぁ俺らでちょっといいことしようぜ。今から俺はパレルモに戻らなきゃいけないんだけど、2人を乗せていってあげるよ。さっきより安い1人€15でどうかな。」
よくもまあ、さっき騙しておいて、おいそれとこんなことが言えたものです。一瞬その場で罵ってやろうかとも思いましたが、グッとこらえ「もうバスが来るみたいだから心配しないで。遠慮しておくよ。」と伝え、執拗な勧誘を何とか振り切りました。
私たちはそんな彼の背中を、一周回って尊敬の目で見つめてバスに乗りました。結果的に何も危険なことが起きなくてよかった...。めでたしめでたし。
まとめ
一通りの騒動が終わり、さらにカターニアで飛行機を逃した後に、パレルモでのタクシー詐欺について調べてみました。すると、やはり同じようにパレルモからモンレアーレの移動において、同様の事件が起きているようです。こんな手口に引っかかってしまってとても情けない限りですが、最終的にはモンレアーレ観光ができたので全然オッケーです。
一応、この経験をした中で大切だなと思ったこともお伝えしておきます。
その1.白タクは使うな!
当然です。安全に戻ってこれたからこそ笑い話ですが、今から考えれば本当にギリギリなことをしてしまったなぁと思います。それも白タクと分かっていてそれを活用しようと試みるなんて言語道断です。
また、もしかしたら運転手には仲間がいて、どこかに連れていかれたかもしれませんし、前述の通り銃を所持していたかもしれません。この記事を読みながら私のバカさ加減を笑っていただき、決してマネをするようなことがないようにしてくださいね。
その2.スマホの電波はONにしろ!
以前に比べて海外用Wi-Fiなどが普及し、旅行中であってもデータ通信を利用しやすくなりました。私はこの旅行の際はローマ留学中だったため、現地の通信回線が常に利用できる状態でした。
もし、「さぁ、モンレアーレに着いたよ!」と言われ、降ろされた時、Google Mapsで、「今はここにいるだろ!」と確固たる証拠を示すことができなければ、口車に乗せられていたかもしれません。
私がデジタルネイティブ世代だからそう感じるのかもしれませんが、なるべく常に通信がある状態にしておく方が、安心なのではないでしょうか。
その3.キレればどうにかなる
「日本人だからって舐めてるんだろ」と啖呵を切った時、相手のおにいさんもやはり驚いていました。アジアそれも日本の観光客に対し、キレるイメージが無かったのかもしれません。
いずれにせよ、明らかにおかしなことが起きたら、しっかりとキレて、間違いを指摘しましょう。英語やイタリア語でなくとも、日本語でも怒りは伝わると思います。
さいごに
いかがでしたか?色々と危険がつきものの海外旅行ですが、それ以上に楽しい経験ができるのも魅力です。
不安を煽るような記事になってしまったかもしれませんが、こうゆう事例があるのも事実です。当たり前の注意を常に忘れず、楽しいイタリア旅行にしてくださいね。
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