※6/24時点の情報を参照しています。
州の統計機関によると、昨年ヴェネツィアを訪れた観光客は約3,700万人です。日本政府が「観光先進国」への新たな国づくりとして訪日外国人観光客の年間目標を4,000万人としていることと比べても、潟の上に形成された南北約2km、東西約4kmの島になんと多くの人が訪れていることでしょう。
しかし、カーニバル最終日を2日後に控えた2月23日、開催中にもかかわらず中止した時から一変しました。長く続いたロックダウンの観光への影響をお伝えします。
ロックダウン後のヴェネツィア
街歩き
6月1日より屋外でのマスク着用の義務はなくなりましたが、公共交通機関や美術館では必要です。見学は決められた一方通行のルートに沿い、常に他の人から1メートル以上の距離を保つなど、美術館訪問のルールが定められました。
ヨーロッパで一番美しい大広間 サンマルコ広場
ナポレオンがこう称賛したサンマルコ広場は、この夏、模様替えです。
1720年創業で、ヴェネツィアで最も古いカフェ・フローリアンをはじめ、広場周辺のカフェは、屋外の席に3m四方のパラソルを合計60本設置することを決めました。
店内の混雑を防止しなければなりませんが、強い日差しを浴びる屋外の席を避ける客もいるためです。La Nuova di Venezia e Mestreによると、昨年11月の高潮の影響も長引いて、売り上げは去年の20%にとどまり、週末で25~30%、平日は10%程度とのことです。
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老舗カフェには観光客がいなくなり、地元の人達がアペリティーボやコーヒーを飲むために足を運ぶようになりました。
再開できないホテル
La Nuva di Venezia e Mestreによると、ホテル組合(Associazione veneziana albergatori)に加入する約400施設のうち、6月中旬までに50施設が営業を再開しました。空港の再開が順調に進めば、7月には100施設程度まで増える予定です。
現在、観光客は戻りつつありますが、宿泊を伴う滞在は少なく、客室稼働率は週末に10%程度です。
9月までに30~35%しか戻らないとみています。加入ホテルの30%は、年内中休業することを検討しています。ホテルで働く6,000人の雇用が危ぶまれています。
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守らなければならない伝統工芸
観光客減少により、ホテルに限らず手工業も影響を受けています。VENEZIATODAYによると、ヴェネト州の観光に関わる16,489社のうち、2020年四半期で521社が、これまでに全体の14.3%が職を失ったとのことです。
ガラス工房や土産屋が軒を連ねるムラーノ島では、コロナ発生以降、ヴェネツィア本島と行き来する水上バス Vaporettoの本数も減り、観光客がいないため、仕事を再開できない状態が続いています。
La Voce di Veneziaは、昨年11月の高潮の影響も受けており、今、ヴェネツィアングラスの伝統が失われる危機にあると伝えています。
空の玄関口 マルコポーロ空港
マルコポーロ空港は3月5日から旅客サービスを停止していましたが、6月15日に再開しました。6月中の発着便は1日あたり20本程度で、アリタリア航空は6/24現在、ヴェネツィア~ローマ便を1日1往復のみ運航しています。
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7月3日からヴェネツィア発着の国内便・欧州便の路線を増やす予定で、それに伴い空路を利用して訪れる観光客が増えることが予想されます。
飛行機を利用する際にも、新しいルールがあります。アリタリア航空では、飛行中のマスク着用を義務付け、4時間ごとに新しいものに交換しなければならないため、事前に枚数を準備し搭乗する必要があります。
安全な人との間隔を確保するため、当面の間、マイレージクラブ上級会員の優先搭乗を中止し、後部座席から順に搭乗するようになります。
地元の人の正直な気持ち
観光業に携わる人々が、観光客が戻ることを願う一方で、年々減り続けているヴェネツィア本島の住民には、観光客にうんざりしている人もいます。
ロックダウンを余儀なくされ、長らく不便な日々を過ごしましたが、初めて体験する観光客のいないヴェネツィアは、信じられないほど穏やかで心が安らいだようです。
生まれた時から50年間カステッロ地区に住むミケーレさんは、ロックダウン後に、以下のように話しています。
私の人生において、今がまともな状態で、できるだけこの状態が続くことを願っている。観光客はまだ少なくイタリア人だけだが、遅かれ早かれ、以前と同じように人でごった返すだろう。
誰もいないヴェネツィアは本当に美しかった。ロックダウンは、こんなことが起こるとは思いもよらなかったが、毎日のように観光客が侵入するよりはるかにマシだった。
ヴェネツィア好きとしては、一日も早く再訪したいですが、多すぎる観光客「オーバーツーリズム」が問題であることは確かです。
さいごに
今回のコロナ禍を、観光頼みのヴェネツィアを変える機会と捉えている人が多くいます。
経済の回復と観光のバランスをとることは容易ではありませんが、住民が住みやすく、唯一無二の美しい街、何世紀も受け継がれてきた伝統を永続するためのこれからの取り組みに、観光客として訪れる私たちも、協力していかなければなりません。
※6/24時点の情報を参照しています。