イタリアの歴史を勉強する?
紀元前から続くイタリアの歴史。世界史をちょっと勉強した人であれば、ローマ帝国が古代で一番繫栄した国であることはしっているかもしれません。イタリアは現代にいたるまでそれぞれが独特の地域性を持ち、様々な歴史を創ってきました。
イタリアにはどこにも歴史的な建造物や遺跡、美術館などがたくさんあります。その分、旅行などの際には、そんなイタリアの歴史を少しでも知っておくと、間違いなく旅が楽しくなります。
また、旅行をキッカケにイタリアの歴史のことを知りたいと考える方もいるかもしれません。そこで本記事では、イタリアの歴史を学ぶのにふさわしい、10冊の本を紹介していきたいと思います!
古代ローマ
1.ローマ人の物語
歴史作家である塩野七生の作品は、ローマ帝国の実態を描き出す本としては最も分かりやすく、明快で、さらには楽しめる本になっています。歴史家の一部から「フィクション的だ」と批判されることも多いのですが、それでも彼女の鋭い考察や書き口、描写の方法は常に引き込まれるところが多いのが特徴です。
他の本に比べても圧倒的な情報量。特に彼女はユリウス・カエサルに対して非常に心に寄り添うような書き方をされていると私は感じており、カエサルを取り上げた巻は特にオススメと言えます。
もともとは巨大な書籍でしたが、文庫本として販売されている改訂版は全51巻あり、もちろん私も全巻持っていて、高校・大学時代に読んでしまいました。
ご存知の方も多いかもしれませんが、彼女はローマ帝国時代のみならず、ローマ帝国のその後、ギリシア人の物語、ルネサンス期の歴史家マキャヴェリを取り上げた本などなど、あらゆる地域・時代に精通した歴史家といえます。もし書き口などが好きでしたら、ローマ帝国の物語だけではなく、様々な作品を手に取ってみてはいかがでしょうか?
2.皇帝たちの都ローマ-都市に刻まれた権力者像-
新書一冊ですが、前2世紀中頃のポエニ戦争終結前後から、紀元330年のコンスタンティノポリス遷都に至るまでの、ローマ史の主要部分をまとめて知ることができます。ローマ人の物語があまりにも多くて、ちょっと手が伸ばしにくいと考える方には、こちらの一冊が最もオススメですよ!何にせよ、ローマの歴史をザックリ学ぶための本であり、深く勉強したいのであれば、他の本も続けてよ読んでみるとオススメ。
著者は、古典考古学と美術史専攻の歴史学者ということもあり、都市計画や建造物などを詳細な情報に基づき、美術的な観点からも解説してくれているのが面白いところ
3.テルマエ・ロマエ
ここでちょっと趣の違う本を。映画化で日本中に有名になった漫画『テルマエ・ロマエ』です。ローマの温泉技師として働く主人公ルシウスが、ある日突然現代の日本にタイムスリップ。廃れた温泉旅館や動物園、一般家庭の風呂など、われわれ日本人(平たい顔族)の文化を吸収しながら、ローマのテルマエに新たな風を吹かせていきます。
コメディかつフィクションでありながらも、歴史的には非常に事実に基づいて作られており、ストーリーを楽しみながらローマ時代の歴史を学ぶことができるはずです。特にハドリアヌス帝時代に焦点が置かれていますので、ローマやティヴォリなどへの旅行を考えている方は是非。
また、多くの方がご存知かもしれませんが、『テルマエ・ロマエ』は阿部寛さんが主演で映画化もされています。どのシーンを観ても笑えて大好きです。
中世ヨーロッパ時代
4.海の都の物語
ローマ人の物語で有名な塩野七生ですが、実は先に執筆しているのはこちら。1982年にサントリー学芸賞、83年に菊池寛賞をこの本で受賞するなど、このシリーズをキッカケにして彼女自身が有名になっていったと言えます。
ヴェネツィアというと華やかなイメージがあります。もちろんそれに似合う地中海貿易で繁栄した時代などがありますが、それと同時に十字軍遠征では、他国を犠牲にし、自国の利益を守った国であることも事実。その辺りの実態や、ナポレオンに侵略されたヴェネツィアなど、ヴェネツィアやイタリアを訪れるなら知っておくべき事実や普遍性がたくさんちりばめられています。
5.中世シチリア王国
大学教授オススメの1冊。イタリアのかかとの先にあるシチリア島は、地中海文化の交流点。アラブやノルマン、スペイン、フランスなど、それぞれの時代に反映として、あらゆる文化に支配され、吸収し、独自の文化を築き上げてきました。
そのためか今日シチリアを旅行してみても、アラブらしい雰囲気を非常に受けた町では、なんだかイタリアらしい雰囲気とはやや違う教会や建築などを見ることができます。たった一つの島であるシチリア島。その歴史を読み解くことで、もちろんイタリアのことは学べるだけでなく、ヨーロッパ全体の歴史や、現代の背景も読み解くことができそうです。
近代イタリア
6.近代イタリアの歴史: 16世紀から現代まで
16世紀の近代から現代にいたるイタリアの歴史を、通史とともに、それぞれの時代に関する理解を深めるための最適なテーマを切り口に概観するテキストです。各章はそれぞれ異なる研究者が担当しているため、「通史」というスタイルよりは、それぞれの研究者の専門分野にのっとりながら、イタリアの歴史を徐々に追いかけていくというようなスタイル。
最近の研究動向も反映し、近現代イタリアをコンパクトに理解できるのではないでしょうか。
7.「イタリア」誕生の物語
一般的な研究書としてのみならず、読み物として、あまりイタリア近代の歴史に詳しくない人であっても、楽しむことのできるはずの本であるはずです。本当の意味で、イタリア統一時代の歴史のみに集中して記述されている書物というのは、あまり多くないような気がします。
もちろんイタリアの統一は様々な国との関係性に基づいて成し遂げられたもの。1848年以降、ウィーン体制崩壊後のヨーロッパをイタリアから見てみる、という意味でも面白いかもしれません。
8.『クオーレ』の時代―近代イタリアの子供と国家
1870年のイタリア共和国成立時代に誕生した、エドモンド・ディ。アミーチスの名作『クオーレ』は、イタリア語面や精神面においても、領土内の人物をイタリア人というナショナリズムに結び付ける上でに非常に重要な役割を果たしたとされています。
そして、その『クオーレ』では少年マルコが主人公とされていましたが、実際にその本を読んでいた子どもたちや、国家に対して、具体的にどのような影響を与えたのかということに関して詳細に理解できるはずです。
ナショナリズム・国民主義と一口に言っても、それは誰がどこでつくったものなのでしょうか?それは、地域のみに対してしか持っていなかった帰属意識を、国全体に対しても向けさせるというような非常に難しい挑戦です。イタリアはもとは民族的に分断された国家。人種は違い、言語は全く違うのに、一つのイタリア共和国に組み込まれてしまった、一人ひとりの人間たち。彼らは果たしてどのようにイタリア人になったのか?この本を読めばその一部が分かるかもしれません。
現代イタリア
9.現代イタリアを知るための44章
「○○(各国)を知るための××章」シリーズのイタリアバージョンです。最もシンプルに現代イタリアから、現代に繋がる歴史を知ることのできる一冊です。第二次世界大戦、政治・経済・マス・メディアと3つの権力を掌握しながら、政治を動かしてきたベルルスコーニ首相の下、様々な変化を見せてきたイタリア。
そんな彼から強い影響を受けた、政治体制、憲法改革、汚職、テロ、市民運動、教皇、スローフード、セリエAなどなど……。今日の私たちが知る典型的なイタリアを解明していきます。
通史
10.物語イタリアの歴史―解体から統一まで
新書としては比較的厚い、359ページで、イタリアの長い歴史を学ぶ本。ローマ帝国時代の4世紀から、なんとイタリア統一の19世紀までの、約1500年にわたる非常に長い歴史を、それぞれの時代を生き抜いた10人を通して見直してみましょう。
そして普通の歴史本と異なっているのが、それぞれの時代を代表する10人に焦点を当てつつ、彼らの思考や行動、目線を通してその時代の歴史を明らかにしていくという、面白い視点を持った本。通史本としてはやや特徴的ですが、もう一度イタリア史を学びなおしたい方にもオススメ。