イタリアが舞台になった映画や小説はご覧になった方はとても多いのではないか思います。ヴェローナを舞台にした悲恋物語『ロミオとジュリエット』にオードリー・ヘップバーンの美しさが光る『ローマの休日』などなど…
これらは多くの人が「イタリア」と聞いて連想するものでもあるでしょう。
今回は、意外と知られていないイタリアの都市を題材にしたマンガ3選をご紹介したいと思います!これを読めば、きっとあなたもイタリアに行ってみたくなるかも?
イタリアを舞台にしたマンガ3選!
1.『アルテ』ー画家を目指す少女の成長物語!
ルネサンスの花開いた16世紀のイタリアを舞台にした、大久保圭先生のコミックです。タイトルもイタリア語で「美術」を意味します。
16世紀初頭・フィレンツェ。芸術など文化活動が花開いたルネサンス発祥の地。
そんな活気あふれる華やかなる時代に、貴族家生まれのアルテが画家工房への弟子入りを志願する。女性がひとりで生きて行くことに理解のなかった時代、様々な困難がアルテを待ち受ける。
大久保圭『アルテ』第一巻、裏表紙より引用
主人公はフィレンツェの貴族スパレッティ家に生まれた16歳の少女アルテです。彼女は退屈な貴族の生活の中で、唯一絵を描くことだけは大好きになります。
しかし、父が亡くなり、よい嫁ぎ先を見つけてほしい彼女の母は「みっともない」といい顔をしません。アルテは自らが描いた絵を見せながらフィレンツェ中の工房を巡りますが「女だから」という理由でどこも相手にしてくれませんでした。
そんな中、一人で工房を持っていた親方レオが彼女を引き取ることになり、画家を目指すための人生が幕を開けます。「女性は男性に付き従って生きていくべき」という考えが主流の時代に、アルテは画家になることができるのか?
このコミックでは、当時のフィレンツェの景観だけではなく、生活や文化の様子も事細かに描かれています。当然ながら画法やテーマなど美術に関する知識も分かりやすく解説しているため、ためになる作品でしょう。
主人公アルテが苦労をしながらも健気に力強く生きていく姿が一番の見所です。笑いあり、涙あり、時に恋の予感もありの『アルテ』を読めば、まずはフィレンツェに行きたくなること間違いなし!
2.『ARIA』ーゴンドラ乗り「ウンディーネ」たちのゆるやかな日々を描いた物語。
西暦2300年代のテラフォーミングされた火星を舞台にした作品で、『あまんちゅ!』の作者としても有名な天野こずえ先生のコミックです。火星と聞いて驚く方もいるかもしれませんが、イタリアが関係しています。
テラフォーミングされた火星は水の星に生まれ変わっており、人々はマンホーム(地球)から移住して各々の都市を建設します。
その一つ、ヴェネツィアを模して造られた「ネオ・ヴェネツィア」では女性ゴンドラ乗りの「水先案内人(ウンディーネ)」が観光の一端を担っていました。
マンホームから移住してきた少女、水無灯里(みずなしあかり)はウンディーネに憧れ、小さなゴンドラ会社「アリア・カンパニー」に入ります。ゴンドラの動かし方や観光の知識を身につけるのに苦労しながら、健気で素直な灯里は小さな幸せを見つけていきます。
ゴンドラ観光の同業他社「姫屋」の見習い藍華(あいか)や「オレンジぷらねっと」のアリスといった友人に囲まれ、切磋琢磨しながらゆったりと過ぎていく日々。
そして「ネオ・ヴェネツィア」で暮らす人々の何気ない日常を、ハートフルに描いたヒーリングコミックといっていいでしょう。
このコミックにおける「ネオ・ヴェネツィア」は当然ヴェネツィアを参考に作られているため、街のつくりはヴェネツィアそのものです。サン・マルコ大聖堂やリアルト橋などのおなじみの建造物もあれば、秋から春にかけて起こる水面上昇「アックア・アルタ」の描写も取り入れられています。
単行本は全12巻で完結していますが、再編集されたコレクターズアイテムとしての完全版が全7巻で販売されるほど人気になった作品です。
またアニメ化もされており『ARIA The ANIMATION』(2005)『ARIA The NATURAL』(2006)『ARIA The ORIGINATION』(2008)と第3期まで放送されました。
2015年には『ARIA The AVVENIRE』が劇場アニメとして公開され、コミックだけに収まらないメディア展開をしています。
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癒し系のコミックが好きな方はきっと大好きになるコミックだと思います。この作品を読んだことでヴェネツィアが好きになって、ヴェネツィアを訪れてみたという人も多いようです。
イケメンのゴンドリエーレもいいですが、かわいらしいウンディーネとともに回るヴェネツィアはより華やかに映ることでしょう。
3.『カンタレラ』ー実在の人物を基にした陰謀渦巻く歴史ファンタジー!
15世紀から16世紀のイタリアを舞台にした歴史とファンタジーを融合させた、氷栗優(ひぐりゆう)先生の作品です。題名の「カンタレラ」とは主人公の一族ボルジア家が政敵の暗殺に用いたとされる毒薬に由来します。
ボルジア家というワードで分かる方もいらっしゃると思いますが、実在の人物チェーザレ・ボルジアを含め、実在した人物をモチーフにした物語です。
ロドリゴ枢機卿が召し抱えていた女に産ませた子、チェーザレは異母弟のホアンや妹のルクレツィアらとともに美しく優しい未亡人ヴァノッツァ・カタネイに育てられます。
やがてチェーザレは父に愛されていないと感じ、加えて自身の中に魔の気配が潜んでいることに気が付きます。そして弟ホアンから、父が法王の座と引き換えにチェーザレを悪魔に売ったことを聞かされました。
チェーザレは絶望し死の淵を彷徨いますが、悪魔と交合することで何とか一命を取り留めます。その代償として自らを飲み込もうとする魔と闘いながら、自分の野心を満たすべく、血塗られた陰謀と殺戮を繰り返す運命に身を委ねていくという物語です。
史実におけるチェーザレ・ボルジアはロドリゴ枢機卿(後のアレクサンデル6世)の権力を背景に、法律や武芸をたっぷりと学びます。教会の重役を歴任しながらローマ教皇領の拡大を目指して、傭兵部隊を駆使してロマーニャ地方を攻略し、優れた政治的手腕を発揮しました。
あらゆる権謀術数を駆使してきたボルジア家の一族の血なのか、彼も冷酷かつ残酷な人物として名高かったと言われています。しかしフィレンツェの政治家ニコロ・マキャヴェッリは著書『君主論』の中で、彼を理想の君主として賞賛しました。
史実に基づいたストーリーや政治的駆け引き、ダークな展開が好みという人におすすめのコミックです。
コミックを読んでイタリアに行こう!
いかがでしたでしょうか。どの作品も本当におすすめで、ぜひ手に取っていただければと思います。
なお筆者の独断と偏見で選んだものですので「あの作品が入っていない!」と憤慨される方もいるかもしれません…(汗)ここに紹介したものも含め、コミックがイタリアへの入り口になってくれれば幸いです。
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