【2020年】コロナに耐えられず...アリタリア航空、ついに国有化

【2020年】コロナに耐えられず...アリタリア航空、ついに国有化

ゆうさん

学生時代にローマ・サピエンツァ大学に留学し、シチリア出身マンマが統べる大家族にてホームステイ。今は日系企業で国際提供業務に従事する社会人3年目。イタリアで仕事をする機会を細々と狙っています。サザンオールスターズとサンドウィッチマンが大好き。

当サイトの記事でも何度か取り上げてきたアリタリア航空の情報。経営の危機についてや今年から就航予定であった羽田路線などについて紹介してきましたが、そのアリタリアが、なんと6月から国有化されることになりました。

この記事では国有化までの簡単な経緯と、アリタリアの今後について考えてみたいと思います。

アリタリアの経営状況

同時多発テロ以降の経営悪化

2001年の世界同時多発テロ以降、慢性的な経営危機が指摘され続けてきたアリタリア航空。2008年の会社更生手続きを経て、2009年に再度民営化を果たし、会社の正式名称「アリタリア-イタリア航空会社」として再度の船出を飾りましたが、その後も相変わらずの経営難。2014年以降はUAEの航空会社エティハド航空が49%を出資する形で、実質的に経営権を明け渡すことになります。

2017年の経営破綻

それでも状況はいっこうに改善することなく、2017年には、営業自体は継続しながらも、事実上の経営破綻に陥り、またもやイタリア政府の管理下に入ることになります。

この際には約900億ユーロを政府から出資したとされており、いかに状況が行き詰っていたかが窺いしれます。この頃は、特に国有化というアイデアはなかったようで、何とか別の企業へのスポンサードなどを依頼しつつ、再度の民営化が目指されました。

2019年の再建案

デルタ航空機

その後、様々な企業が声を上げたものの立ち消え、気付けばいつの間にか2019年の秋。イタリア国鉄(FS、Ferrovia dello Stato)や高速道路の管理・統括を行うアトランティア社、同じスカイチーム所属のデルタ航空などが、アリタリア経営再建のために手を取り合うことになりました。2017年から約2年間が経って、やっと本格的な再建話が動きだし、多くの関係者が、これでやっとアリタリアの新しい船出が迎えられると、思ったに違いありません。

しかし、それぞれの3企業の出資率や、どの企業が主導となって経営を進めていくのか、などにおいて意見が割れてしまい、2019年末から2020年初めまでの間は、全く話がまとまらなくなってしまいました。

コロナ危機により国有化へ

そうこうしている間に、世界はコロナ危機へ。イタリアが世界で最もコロナの影響を受けた国であることは、周知の事実です。経営再建云々の話をしているような状況ではなくなってしまい、それぞれの企業も大ダメージを受けることになりました。

特にデルタ航空は、1-3月期の決算で570億円の大赤字を出してしまいます。デルタは近年アジア・ヨーロッパ路線等を中心に攻勢をかけていた最中でしたので、コロナの影響はより一層強かったものと推測されます。

拠り所を失ってしまったアリタリアを助けることができるのは政府しかいない、ということで、これまで幾度の経営危機においても避けてきた最後の手段、100%の国有化に踏み切ることになったのです。

国有化の内容

現時点で分かっていること

 
 
 
 
 
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アリタリアの国有化については、以下の情報が現時点で分かっています。

  • イタリア政府が新会社を設立し、その会社経由でアリタリアの株式を100%購入
  • コロナ禍次第ではあるが、時期は6月初旬を予定
  • 保有機材の縮小(現時点で113機を最大90機まで削減予定)
  • 現在採用している社員の雇用については保証する予定

先日、ANAが1.3兆円の融資を申し込んだり、エールフランスが約8,100億円の融資を政府から受け付けるなど、航空業界自体が相当な大ダメージを受けていることは周知の事実です。また、今後の状況次第では、多くの航空会社が破産するリスクがあります。

ちなみに、カタール航空100%出資会社であり、格安航空会社(LCC)のエア・イタリーは、今回のコロナの影響が始まる前の2月11日には既に経営破綻し、会社を清算する手続きに入っています。ライアンエアー、イージージェットを含むLCCに国内・国際路線の覇権を奪われ続けていたアリタリアにとっては、負債を減らす好材料になりそうです。

また、雇用の保証については、やはり議論の中でマストになってくることでしょう。というのもアリタリアは、過去の傾向から言って労働組合の力が非常に強く、これまでの経営判断や経営統合の持ちかけに対しても、幾度となく拒否をし、会社を前にも後ろにも進めない状況にしてしまっている節があります。

このことから、今後の経営再建についてもしっかりと組合との折り合いをつけるために、慎重に進めていくことが求められるのではないでしょうか。

今後の就航都市について

気になるのが今後の就航都市です。既にアリタリアは2020年3月29日以降の羽田空港の発着枠を獲得しており、既に路線計画も発表していました。

しかし、コロナの影響で就航が延期、5月中旬からの運航再開が予定されてはいるものの、この状況下ですので、再度の延期という可能性も十分に考えられます。政府主導になることで、今後このまま羽田路線が飛ばなくなってしまうのでは...?なんて不安もあります。

ただ、私個人の意見では、その可能性は低いと思います。その理由としては、同じく発着枠を分け合って、かつ共同運航をしているANAとの兼ね合い、一度発着枠を取得すると、再度の改定があるまではそれを維持するのが原則、義務であるという規則、などが挙げられます。

また、アリタリアの現時点でのアジアへの路線はソウルと東京だけなので、アジアの重要拠点の一つであること、また同じスカイチームの中でも比較的強い関わりのあるデルタ航空が、積極的にアジア路線やアジアの乗継路線の展開に動いていること、なども踏まえると、アリタリアは羽田路線を維持すると私は考えています。

さいごに

アリタリアのこれまでとこれからについて、簡単にまとめ、最後は日本路線についても考えてみました。

もちろん!今後のコロナの影響次第、というのが率直なところですが、私たちにとって、よりイタリアを近く感じられる路線が増えたのは大変喜ばしいことだと思いますので、コロナが落ち着いたら、是非一度試してみたいですね。

参照した資料

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