2021年10月15日から新会社ITA(Italia Trasporto Aereo)に移行することが発表されているアリタリア航空(AZ)。日本にも馴染みのある航空会社であるだけに、将来を心配する声も多くありますが、少なくともアリタリア航空が抱えてきた大量の負債を引き継ぐ必要はなさそうです。
アリタリア=ITAは別会社
Politico紙によるとEUの競争委員会は、イタリア政府がアリタリア航空に対して2017年に実施した合計9億ユーロ(約1,170億円)にものぼる巨額の融資について、「競合他社に比べて不当な優位性をもたらした」と判断し、アリタリア航空はこの違法な補助金をイタリア政府に対して返還する義務があると認定しました。
しかし一方で、新会社となるITAについては、「ITAはアリタリア航空の後継者としての立場ではなく別会社であり、アリタリア航空がイタリア政府から受けていた資金援助については、返済する責任がない」と結論付けています。
この補助金は返金されるのか?
これが指し示すことは、アリタリア航空につぎ込まれた補助金は返ってこない可能性が極めて高い、ということです。
飛ばせば飛ばすほど赤字を垂れ流していたアリタリア航空が、そもそもお金がないのは周知の事実。2017年以降も多額の補助金が投じられている状況で、9億ユーロも払えるわけはありません。
もしその負債がITAにも引き継がれるのであれば話は違いますが、2社は別会社との認定を受けています。つまりポケットを裏返したところで借金しかないアリタリア航空に返済を要求してもできっこないので、補助金が違法認定されようがされまいが、結局は返済されない、と私は想定しています。
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アリタリアに関しては、実は当サイトでも何度か取り上げています。特に2020年の書いた記事では、アリタリア航空の現状や将来についてしっかり掘り下げている連載なので、ぜひ読んでいただきたいです!
【第1回】"国有化"アリタリア航空が背負う過去の負債と再建
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【第2回】"国有化"アリタリア航空に対する厳しい批判と擁護の声
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【第3回】"国有化"アリタリア航空、LCCライアン&ウィズエアーと対峙
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アリタリア優遇措置
新しい航空会社の門出に土をつけられたくないイタリアのドラギ首相は、このEUの決定に胸をなでおろしているかと思います。
一方、新型コロナウイルスの状況下において厳しいダウンサイジングを強いられながらなんとか生き残ってきた他の航空会社からすれば、アリタリア航空が圧倒的に国家に守られている状況は、正直「いただけない」のではないでしょうか。
また多額の税金を結果的にアリタリア航空のために支払わされているイタリア国民からしてもおそらく納得はいかないでしょう。
さいごに
10月15日からの新会社ITAの動向にも注目が集まりますが、まだまだお家芸的なゴタゴタは続くものと考えられます。
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ローマ発・ミラノ発便は日本(羽田・成田)にも乗り入れており、日伊関係者にとっては重要な路線ですが、個人的に「ちゃんと10月15日から便を飛ばせるの?」と心配になるばかりです。