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あなたはなぜ「イタリア語」を勉強しますか?名作紹介 ジュンパ・ラヒリ『別の言葉で』

投稿日:2017-10-01 更新日:

はじめに 

皆さんは外国語を学ぶ時、どんなモチベーションで勉強していますか?特にこのサイトを見てくださっている皆さんの中には、イタリア語を勉強している人も多いと思います。

今日紹介するエッセイの著者、ジュンパ・ラヒリはインド系アメリカ人の小説家で、母語のベンガル語ではなく、英語で書かれた『停電の夜に』や『その名にちなんで』といった小説が有名です。

しかし彼女は、学生の頃に旅行したイタリアで、イタリア語の響きに特別な親しさを感じ、それから20年後、夫と二人の息子とともにローマに移住してしまいました。イタリア語に恋をしたラヒリは根気よくイタリア語と向き合い続け、ついにはイタリア語でエッセイを書くに至ります。

今回はこの、ジュンパ・ラヒリによってイタリア語で書かれたエッセイ、『別の言葉で(In altre parole)』を紹介したいと思います。

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著者について

ラヒリは1967年にベンガル系インド人の移民の娘としてロンドンで生まれ、そして彼女が3歳の時にラヒリの家族はアメリカへと移住しました。家ではベンガル語を、家の外では英語を話すという生活を小さい頃から送っていたラヒリは、「祖国も真の母国語も持たない」ような思いを抱えながら生きてきました。

わたしは二つの言語のどちらとも一体になれなかった。(…)わたしはこの二つの言語の間で迷い、苦悩していた。二つの言語を行ったり来たりすることで混乱していた。自分では解決できない矛盾のように思われた。 (『別の言葉で』「三角形」より)

エッセイの中の「三角形」の中で、ラヒリは自分の中でのベンガル語と英語の関係をこのように書いています。そしてこの後、彼女の「言語遍歴にイタリア語が加わったことで、三角形が形成される」というのです。彼女にとってイタリア語は、彼女の人生におけるベンガル語と英語の長い対立から救い出してくれる第三の言語でした。

『別の言葉で』

ラヒリが初めてフィレンツェを旅行した時のことが、このエッセイの中で綴られています。

 道でクリスマスの挨拶を交わす子供たちの興奮を聞き取る。朝ホテルで部屋を掃除する女性が「Avete dormito bene?(よく眠れましたか?)」とわたしに聞く声に優しさを聞き取る。歩道でうしろを歩いている紳士がわたしを追い越そうとして、「permesso?(よろしいですか?)」とたずねる声にわずかな苛立ちを聞き取る。

 わたしは返事ができない。どんな会話をする能力もない。聞くだけだ。店やレストランで耳に入ってくる言葉は、すぐさま激しく矛盾した反応を引き起こす。イタリア語はもうわたしの中にあるようなのに、同時にまったく道のものだ。外国語だと分かっているのに、そんなふうには思えない。おかしいと思われるかもしれないが、親しく感じられる。ほとんど何も分からないのに、何かがわかる。 (『別の言葉で』「雷の一撃」より)

このような気持ちを、同じくイタリア語学習者の皆さんも感じたことはないでしょうか?

かるい旅行で、あるいは満を辞して訪れたイタリアで、初めてイタリア語に囲まれて、その明るく弾むようなイタリア語の響きに魅了されるのに、上手く聞き取ったり話したりすることができないもどかしい気持ち。

ラヒリはこの時、イタリア語に対して「まだ知らないことばかりなのに、何年も前から知っているような」気持ちがしたといいます。ラヒリはそのあと帰国しますが、イタリア語に触れられないことに寂しさを覚えて、自分でイタリア語を勉強し始めます。

イタリア語だけでなく外国語を学んだことがある人は皆、このエッセイを読むと、ラヒリがイタリア語を学びながら感じた喜び、驚き、悔しさやもどかしさを一緒に体験するような気持ちになるかもしれません。

【次ページ】彼女のイタリア語学習とは、どのようなものか

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  • この記事を書いた人

編集者N

大学でイタリア文学を専攻。特に現代イタリア文学を中心に研究を行っていく予定。好きな街はヴェネツィア。

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