【2017年】アリタリア航空、10年で2度目となる破産手続き

【2017年】アリタリア航空、10年で2度目となる破産手続き

ゆうさん

学生時代にローマ・サピエンツァ大学に留学し、シチリア出身マンマが統べる大家族にてホームステイ。今は日系企業で国際提供業務に従事する社会人3年目。イタリアで仕事をする機会を細々と狙っています。サザンオールスターズとサンドウィッチマンが大好き。

国有化については

この記事は、2017年の破産手続きに関する記事です。アリタリア航空の国有化に関する2020年の情報は、こちらの記事で取り上げています。


イタリアを代表する航空会社であるアリタリア航空は、ここ10年で2回目となる破産手続きを開始しました。様々なニュースなどでも報道されていますが、本記事では簡単な時系列、アリタリアの今後の動向などをゆっくり見ていきたいと思います。

イタリアのフラッグシップ・キャリアがまた...

2008年の経営破綻から...

2008年にも経営破綻していたアリタリア航空。一時は国の下に置かれながらの再建を進め、その後の2014年には中東の航空会社エティハド航空が株式を49%購入する形での資金注入を行いました。

そのため、同社の大株主はアラブ首長国連邦(UAE)・アブダビのエティハド航空やイタリアの銀行。何とか復興の道筋を歩み、再建に取り組んだものの、慢性的な赤字を改善することはできませんでした。

LCCに負けたフラッグキャリア

再建が想像以上にうまくいかなかった要因として、LCCキャリアの台頭を挙げることができるでしょう。ヨーロッパLCC最大手のライアンエアーやイージージェットなどは、破格の値段で就航し、多くの顧客を獲得しています。競合相手に敗れる形になったアリタリア航空。

その後はイタリアの外を出て、日本への就航便を増やしたり、アフリカの会社とコードシェアをしたり、リゾート島などへの直行便を飛ばしたりと色々な改善策を行いましたが、その不透明な方針などが影響を与えたことは言うまでもないでしょう。

最後の手段だった資金注入

相当な経営危機に陥っていたアリタリア航空は首が回らなくなり、最終的にはエティハド航空からの資金注入話が出るように。そしてエティハド航空からの€20億(約2500億円)にもなる支援の提案がありました。

ただそれを受け取るためには、アリタリア航空はエティハド航空に対して、明確な再建案を提示しなければなりませんでした。これまでの赤字状況を考えれば、エティハド航空からのこの条件は当然ともいえるでしょう。

労働組合との交渉は白紙

筆頭株主であるエティハド航空からの資金注入を得るためには、前述の通りアリタリアは明確な再建案を提示しなければなりませんでした。そのために最も重要だったのが「従業員1500人を解雇する」という項目。労働組合と協議が重ねられましたが、結果的に組合側がこれを全面拒否。

そして、エティハド航空からの支援を受けられなくなったアリタリアは、支払い能力・会社維持のためのあらゆる選択肢を使い果たしたとされ、破産という道を選ぶほかありませんでした。取締役会は発表資料の中で「アリタリアが置かれている経済、財務面の深刻な状況を認めた」とコメントしています。

拒否は想定内?

イタリア全体の財政難と重なるように、アリタリア航空もかなりの危機に瀕していたということは、そこで働く社員たちも苦しい生活を強いられていたということ。何にせよ、2017年に入ってから2月23日と4月4日の、既に2回もストライキが行われているほど。いかに社員が現状に不満を感じているかわかるはずです。

実際のところ4月14日には、再建案に対しての合意報道が出ましたが、やはり最終的には飲み込むことができず、拒否という結果になったと考えられます。

管財人主導の改善策

今後はイタリアの法律に基づき、政府が一時的な資金提供(資本注入ではなく、今後最低限の運航のための資金提供という意味)を行うほか、再建または会社清算のどちらかを命じる一時的な管財人数名を指名することになるようです。

彼らには、半年間のうちに(延長期間3ヶ月あり)「経営復興に向けた見通し」を明確化することがタスクとして課され、もし見通し計画が実行可能であればその通りに再建が進み、もし再建不可能と判断された場合には、どこかの会社の子会社のような形で経営を続ける、もしくは会社清算(正真正銘の会社倒産)かの道を選ぶことになるでしょう。

特別行政処置が採られるのは、半年間(180日間)だけ。その間にアリタリア航空が「復活しうるかどうか判断する」という、非常に難しい仕事が彼らには求められることになりそうです。300億円以上の負債や、500人以上の職員のリストラなどのかなりの問題が降りかかってきます。

2008年との違い

前述の通り、アリタリアは2008年にも一度破産していました。今回の破産は、その時とは違うからこそ事情は複雑です。今回とでは何が違うのでしょうか。

前回は、再建の段階や方針、加えて財政不振後の筆頭株主などが、行政の特別介入以前から明確に示されていました。前回の課題としては、大部分が会社の中での「有益な事業とそうでない事業の十分な仕分け」を行うことが重要視されていました。

そして、エティハド航空による支援や、不採算事業切り離しなど、ある程度回復の見込みをもった上での再スタートでしたが、2017年の今回はそうではありません。全く先が見えていないアリタリア。果たして今後はどうなる。

今後の運航

私たち旅行客にとっては非常に気になる今後の運航についてですが、政府による資金提供などを受けながら期限の半年後(つまり夏)までは変更なく行われるとのことです。

しかし、タイムリミットである半年後、つまり10月以降のことは現時点では不明確なために、どのようになかは未定です。旅行の予定などに少なからず影響を及ぼすかもしれません。

続報(2017年5月4日)

先日のアリタリア航空破産に関して、続報が出されました。

自力での経営再建は困難と判断され、会社売却の手続きを15日以内に始めるとのこと。政府は増資引き受けによるアリタリア航空の救済を否定したものの、資金繰りを支援しているため運航への影響は少ないとのことです。

増資引き受けとは

政府が否定した「増資引き受けによる救済」とはどういうことなのでしょうか。ざっくり解説します。この場合の「増資引き受け」とは、アリタリアが新しい株式を政府に向けて発行して、政府がそれを受け入れることで新しい資本を確保しようとすること。

政府が株式を保有するということは、一部国有化されるということ。しかし今回それを否定したために、国有化による経営の立て直しという可能性は消えたといえるのです。

今後の動き(補足)

今後は、政府の提示する再建案をもとに売却先を募ることになります。名乗りを上げた企業は現時点(2017年5月3日現在)ではありません。イタリア国内の航空網の中心でもあるアリタリア航空。経営再建の可否は別として、旅行者が世界中からやってくるイタリアにおけるアリタリア航空の価値は非常に高いはず。

その航空網を手中に収めたい競合他社もいるのではないでしょうか。また、出資をしたことのあるエティハド航空はどう出るのか。もっとも、私たちに身近な問題としては「破綻の運航への影響」、「売却先企業とのつながり」があります。まず運航への影響はしばらくは無いとのことですし、売却交渉が難航したりしなければ大丈夫でしょう。

売却先の企業が同業他社たる航空会社であるならば、コードシェアなどにより旅行、乗り継ぎがより楽になるかもしれません。イタリアへの旅行、留学を考えている方にとっては、今回の件は気になるニュースになりそうです。

国有化については

この記事は、2017年の破産手続きに関する記事です。アリタリア航空の国有化に関する2020年の情報は、こちらの記事で取り上げています。


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