日本にも来ていた!バロック時代の巨匠・カラヴァッジョの絵画を解説

日本にも来ていた!バロック時代の巨匠・カラヴァッジョの絵画を解説

ゆうさん

学生時代にローマ・サピエンツァ大学に留学し、シチリア出身マンマが統べる大家族にてホームステイ。今は日系企業で国際提供業務に従事する社会人3年目。イタリアで仕事をする機会を細々と狙っています。サザンオールスターズとサンドウィッチマンが大好き。

 カラヴァッジョの作品を時代ごとに追いかける

カラヴァッジョの半生や特徴に関しては、以前「代表作や半生は?バロック時代の巨匠・カラヴァッジョを知らないあなたへ」の記事で紹介しました!そして本記事では、美術館や教会などで絵画を実際に見て感じたバロック期の絵画への感想なども踏まえ、彼の作品をピックアップしてみました。

バロック時代の巨匠・カラヴァッジョの絵画11作品を解説

1.女占い師

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『女占い師』ローマ、カピトリーノ絵画館(1597)

ロマの女占い師に手相を見てもらっている少年の絵。女は手相を見るふりをして、彼がしている指輪を抜き去ってしまうが、少年はそれに気づいていない。

偶然通りかかった女性を連れて帰り、ポーズをとらせてこの絵を描いたのだとか。ちなみに少年は、カラヴァッジョの舎弟である、画家ミリオ・ミンニーティ。彼もカラヴァッジョ同様かなり気性が荒く、遊び仲間だったらしい。

また、全く同じタイトルの絵がもう1枚描かれており、こちらはパリのルーヴル美術館に保存されています。どちらも同じ年代に描かれました。

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2.トカゲに噛まれる少年

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『トカゲに噛まれる少年』フィレンツェ、ロベルト・ロンギ美術史財団(1596-97?1593?)

バラの花に隠れていたトカゲに噛まれて驚いた少年。バラは愛を表すため、恋の道には痛みが伴うという教訓を示そうとしたものと考えられています。

故郷ロンバルディア地方では、「○○に噛まれる少年」という絵画が多く、それらを参照したようです。また、バラが入ったガラスの花瓶には室内が映り込んでいて、よく見ないとわかりませんが、彼の静物への能力の高さがうかがいしれました。

3.ナルキッソス

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『ナルキッソス』ローマ、バルベリーニ宮国立古典美術館(1597-99)

水面に映った自分の姿に惚れ込んでしまうナルキッソス。ナルキッソスはギリシア神話の登場人物の一人であり、水面に映る自分の姿を見た彼は、彼自身の美しさに虜になり、そのまま泉に落ちて、水仙の花になってしまいました。

彼は天国に行った後も、三途の川に映る自分の顔を眺めていたそうです。そして彼の名前が「ナルシスト」の語源となっています。

完璧なまでの反射の描写は、実際に見るとかなりインパクトがあり、絵画であることを忘れさせるような、写真のような(写実的)すごさがありました。

4.果物籠をもつ少年

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『果物籠をもつ少年』ローマ、ボルゲーゼ美術館(1593-94)

こちらも彼の静物への意欲の高さを表しています。彼がイタリアで初めて静物画を描いたといえばそれもうなずけるかもしれません。果物たちはどれも本物そっくりの鮮やかさ。個人的にはブドウとリンゴがすごかったです。

また、少年の表情もうっとりとした何とも言えないものになっています。光と影の使い方も巧みで、見事に三次元を表現しています。

5.バッカス

Painting by Caravaggio entitled "Bacchus", in the Uffizi Gallery in Florence1990Caravaggio, Michelangelo Merisi, known as (1571-1610)1597Florence - The Uffizi Gallery

頭に実や花をつけて、お酒によったような表情でワインをこちらに差し出しています。ここからはギリシア神話的なバッカスのイメージを持つのはやや難しく、この絵画は同時代の少年といった方が近いようにも見えます。

果物やワインなどの描写も素晴らしく、写真では見にくいですが、ワイン瓶には、カラヴァッジョ自身の顔が反射しています。

6.マッファオ・バルベリーニの肖像

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『マッフィオ・バルベリーニの肖像』個人蔵(1596)

のちの教皇、ウルバヌス8世を描いた肖像画。普通の大人の絵画を描いたものは、なんだかカラヴァッジョの場合珍しい。実はこれまで、本人のものかけっこう怪しかったみたい。

ですが解説に「近年の修復と科学調査の結果、下塗り層に尖筆で輪郭をかたどる下描きの手法が発見されたことから、カラヴァッジョ作品であることを再確認した」とありました。調査って大変そうですね...。

7.エマオの晩餐

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『エマオの晩餐』ミラノ、ブレラ絵画館(1606)

神は形を変えて現れる、という聖書にのっとったもの。イエスは復活後、全く別の姿をしてエマオという町を歩く中、彼の使徒と出会い、食事の招待を受ける。そして感謝し、パンをちぎった瞬間に彼がイエスであると知り、振り返るが、そこにはもうイエスの姿はなかった。

これは使徒が、復活後の主、イエスであると気づかずに食事をともにしようとする場面です。

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ちなみに、今回来日した絵画より前にも、カラヴァッジョはエマオの晩餐を描いていますが、かなり違った雰囲気であることがお分かりいただけるでしょうか。

8.メドゥーサ

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『メドゥーサ』個人蔵(1597‐98)

木製の盾に描かれているため、かなり立体的に迫ってくる感じがします。彼女は宝石のような目を持ち、見たものを石に変えてしまうと言われています。そして、髪の毛は毒蛇でできているんです。そして、最終的には、ゼウスの血を引く半神ペルセウスによって首を切り落とされ、盾に閉じ込められてしまいました。

今回展示されている個人蔵のものは第一作とされ、いくつかの書き直しの跡がX線によって見つかったようです。そして現在フィレンツェのウフィツィ美術館にあるメドゥーサが第二作。実物を以前見たのですがやはり第二作の方が力強いタッチで描かれていることはよくわかりました。

9.洗礼者聖ヨハネ

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『洗礼者ヨハネ』ローマ、コルシーニ宮国立古典美術館(1602?1605?)

光に照らされたヨハネの美しい裸体と、それと対比させるかのように暗い背景の闇。カラヴァッジョらしさが非常によく表れています。

モデルはわかっていませんが、かなり若いことから、彼の唯一の弟「ジョバンニ・バッティスタ(意味は洗礼者ヨハネ)」に重ねて描いたのではないかと言われていますが、推測の域を出ていません。名前だけ見ると、そう思ってしまいますよね。また、彼は他にもいくつかのヨハネを残しており、それぞれに違った特徴があります。

10.法悦のマグダラのマリア

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『法悦のマグダラのマリア』個人蔵(1606)

こちらは最近見つかり、カラヴァッジョのものとわかった絵画。彼がどの街へ行くときも持ち歩き、決して死ぬまで手放さなかったと言われています。

これまでに描かれたものと異なり、法悦(エクスタシー)の表情を見せていますが、実際には懺悔の場面だとか。17世紀には、神と人とが一つになることに法悦を感じるような絵画が多く残されているので、カラヴァッジョのこの作品はある意味先駆的とも言えるかも。

11.エッケ・ホモ

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『エッケ・ホモ』ジェノヴァ、ストラーダ・ヌオーヴァ美術館(?)

「この人を見よ」という意味。裁判で有罪にされ、十字架にかけられる前を描いたもの。右にいるのはシリア総督のピラトゥスで、民衆に彼は悪くないことを訴えようとしたが、ヒートアップした民衆の勢いを抑えることはできず、最終的に彼は十字架にかけられることとなりました。

非常に珍しいこの絵は、パトロン(美術家を保護するお金持ち)に依頼されて作ったものの、あまり気に入られず、別の画家に再び依頼したんだとか。どちらかといえばピラトゥスの方にも焦点が当たるようになっていて、構図も特徴的。

さいごに

長くなりましたがいかがだったでしょうか。カラヴァッジョは非常に特徴的な絵画を多く遺しています。皆さんもイタリアに行ったら、カラヴァッジョの作品に触れてみてください。

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