1762年から続くイタリアのカレンダー、バルバネーラ

1762年から続くイタリアのカレンダー、バルバネーラ

Kanba

イタリアの海沿いの小さな町に住んでいます。イタリアの大学を卒業後、日本の企業のために働いています。天気が良い週末は砂浜で筋トレしたり、庭でオーガニック野菜を作ったりしています。主に穀物・野菜・果物・ナッツ類を食べて暮らしています。

259年も愛され続けるカレンダーと生活暦、バルバネーラ(BARBANERA

 1762年にウンブリア州ペルージャ県フォリーニョに誕生したバルバネーラ。バルバネーラのカレンダーと生活暦(暦による月日に関する生活情報を記したもの)は、今日までイタリアの家庭に日常生活の"信頼できる友"として迎えられています。

イタリア全土でバルバネーラのカレンダーと生活暦は、今も約300万部販売されています(Nuovo Quotidiano di Puglia.itの記事参照 )。

2021年度版バルバネーラのカレンダー(左)と生活暦(右) / バルバネーラ公式サイト

今回、イタリア統一(1861年)の約100年前に生まれたバルバネーラのカレンダーと生活暦とは、どのようなものなのか見てみます。

バルバネーラとは

バルバネーラ(Barba nera)は、イタリア語で"黒ひげ"という意味の言葉になります。バルバネーラの公式サイトによると、 バルバネーラという人物は、天文学と占星術、哲学と知恵の境界が現代ほどはっきりとしていなかった1700年代にフォリーニョに隠者として住んでいたということです。

バルバネーラは、彼の知恵と予言によって広く知られた人物であり、博学で"天文学者"であり"哲学者"でもあったらしいです。その彼が、1762年に最初の生活暦を発表したということです。

このように公式サイトにはバルバネーラについて記載されていますが、実際にバルバネーラという人物が1700年代にフォリーニョにいたのかどうかははっきりとはしていないようです。

実際、生活暦とカレンダーの名称となっているバルバネーラという名は、実在の人物からではなくて、生活暦の挿絵として描かれた"ひげを生やした"人物像から採用されたのだろうとも言われています。

年代物のバルバネーラ/ バルバネーラ公式サイト

とにもかくにも1762年に誕生したバルバネーラは、1768年にはカレンダーと小型の生活暦を出版し成功します。そして、バルバネーラは、1700年後半から1800年代にかけてイタリアの家庭にとって日常生活の"頼りになる友"になっていきました。

イタリア統一(1861年)後もバルバネーラはますますイタリア各地に広がり、作家のガブリエーレ・ダンヌンツィオ(Gabriele d’Annunzio)は、1934年にバルバネーラを称える言葉を記しています。曰く、「私の枕もとには、オデュッセイアか、イーリアスか、聖書か、ホラティウスか、ダンテか、ガブリエーレ・ダンヌンツィオのアルシオーネがあると多くの人々は思っています。実際は、私の枕もとには、バルバネーラ、"時の花と国の知恵"が詰まった本が置かれています。」(アッティリオ・マッツァ(Attilio Mazza)氏の『D’Annunzio e l’occulto』参照)

バルバネーラを出版する出版社は、その時々によって移り変わってきましたが、20世紀前半からはカンピ出版社(Editoriale Campi)が独占的に販売しています。

現在、バルバネーラは、生活暦、壁掛けカレンダー、卓上カレンダーなどの形で出版されています。

バルバネーラの特徴

バルバネーラのカレンダーや生活暦には、祝祭、年中行事、月の満ち欠け、それに伴う種まき情報、天気予報、星座、月の野菜や果物や料理レシピの紹介、健康に関する豆知識などなど沢山の月ごとの生活情報が記されています。

バルバネーラは、季節のリズムと調和したライフスタイルを提案し、日々の生活をシンプルで楽しいものにするための様々な情報や知恵を授けてくれます。

月や星の動きと共に、空と地と季節のサイクルを感じながら日常生活を送ること。人と自然、日々の幸せ、"幸福な年"(バルバネーラの表紙には、"Un Anno Di Felicità(幸福な年)"と記されています)に目を向けて調和を心掛けること。

そんな1年を送るための"最良の友"として、バルバネーラは、いつもイタリアの家庭に寄り添っています。

バルバネーラの切手とユネスコ登録

2012年にバルバネーラが250周年を迎えたことを受けて記念切手が発行されました。このこと1つとっても、バルバネーラがいかにイタリアで広く知れ渡ったカレンダー、生活暦であるかが分かります。

バルバネーラ250周年 記念切手 / iBolli.it

また、2015年には、バルバネーラ1762財団(Fondazione Barbanera 1762)によって保存されている1762年から1962年までのバルバネーラのコレクションが、ユネスコの「世界の記憶」に登録されました。

マスメディアが登場する前から国民や国全体の文化とアイデンティティを生み出すのに貢献し普遍的な価値があるとユネスコも認めたということです。

なお、 バルバネーラ1762財団は、現在まで続くバルバネーラのカレンダーや生活暦の管理保存はもちろんのこと、生活暦をテーマにした出版、展示会、イベントなどの活動も行っています。

また、デジタル・ライブラリーもあり、歴史的なアーカイブスとして文書や資料の検索もできるようになっています。

月と太陽と共にある生活

 一年間ずっと月と太陽と共にあるような生活に寄り添ってくれるバルバネーラ。

日の出、日の入り、月の満ち欠け、潮の満ち引き、星の動き。天体の運行や変化や自然現象を意識しながら暮らすライフスタイル。

現代社会の中では、空を見上げる機会も少なくなっているかもしれません。下を向いて携帯電話を見る目や手を止めて、たまには上を向いて空を眺めてみるのも良いかもしれません。

2020年11月24日の夕焼けの空

参照

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