世界中がロシアW杯に熱中している6月。多くの方がご存知の通り、残念ながら私たちが大好きなアッズーリ(イタリア代表)は、ヨーロッパ予選プレーオフにてスウェーデンに敗れ、60年ぶりにW杯の出場権を逃しています。
そういったわけで、今大会では彼らの活躍もイケメンスーツ姿も拝むことができませんが、その代わり、2006年W杯ドイツ大会での、イタリア代表の優勝の軌跡を振り返ってみよう、というのがこの記事の趣旨です。
過去の栄光に囚われるのはよくありませんが、振り返ってしまいたくなるぐらい、この時のイタリア代表には様々な困難・感動・歓喜があったのですから、たまにならいいじゃないですか、ねえ。というわけで、2006年のW杯においてイタリアが戦った全7試合を振り返りながら、彼らの栄光に迫っていきたいと思います。
まず、この記事ではグループステージの全3試合を振り返り、別の記事で決勝トーナメントの全4試合を扱う予定です。
グループステージ全3試合を振り返る
6月12日 vs ガーナ戦
結果:2-0(イタリア勝利)
得点:40′ ピルロ、83′ イアクインタ
イタリア(4-3-1-2)
GK:ブッフォン
DF:ザッカルド、カンナヴァーロ、ネスタ、グロッソ
MF:ペロッタ、ピルロ、デ・ロッシ、トッティ(56′ カモラネージ)
FW:トーニ(82′ デル・ピエーロ)、ジラルディーノ(64′ イアクインタ)
ガーナ(4-1-3-2)
GK:キングストン
DF:ペイントシル、クフォー、メンサ、パッポエ(45' イリアス)
MF:アッド、エッシェン、アッピアー、ムンタリ
FW:アモア―(67' ピンポング)、アサモア(88' テキエ・メンサー)
【ハイライト映像】
大事な開幕戦はガーナと。当時ガーナは、エッシェン、アサモア・ギャン、ムンタリなど、ヨーロッパのトップチームでプレーする中盤のタレントが中心となり、アフリカ予選を首位で通過。失点数も10試合でわずか4と、攻守によく組織されたチームでした。
立ち上がりからガーナの激しく素早い攻撃を受けるイタリアですが、局面では強さを発揮してボールを奪取。そして、中盤の底から的確にパスをさばくピルロを中心に、徐々にイタリアが試合をコントロールし、主導権を握っていきます。
ピルロは、積極的なオーバーラップを繰り返す、右サイドのザッカルドとペロッタ、左サイドのグロッソなどを上手く操っていきます。一方守備面では、彼らが上がりすぎてしまうことで、サイドに広大スペースが生まれ、素早いパスワークからのカウンターを食らうこともしばしば。
【イタリア:1点目】
ですが前半40分、ペナルティーエリア内の混戦で得たコーナーキックから、ピルロが右足を一閃。シュートはゴール右隅に突き刺さり、イタリアが一点を先制します!
後半はやや均衡した試合展開に。両チームともボールを保持しパスを回してゴールに迫りますが、両キーパーのファインセーブもあり、得点は生まれません。イタリアは、ピルロやイアクインタを中心として、ガーナのディフェンスラインと2列目の間の広大なスペースを突いて攻撃していきます。
【イタリア:2点目】
そして後半38分、ピルロが蹴りだした一本のロングパスの処理をDFクフォーがパスミス。途中交代のイアクインタがボールを奪取し、キーパーをかわしてゴール!2-0として試合を終えました。
6月17日 vs アメリカ戦
結果:1-1(引き分け)
得点:22′ ジラルディーノ、28′ オウンゴール
イタリア(4-3-1-2)
GK:ブッフォン
DF:ザッカルド(53′ デル・ピエーロ)、カンナヴァーロ、ネスタ、ザンブロッタ
MF:ペッロッタ、ピルロ、デ・ロッシ(28' 退場)、トッティ(34′ ガットゥーゾ)
FW:トーニ(60′ イアクインタ)、ジラルディーノ
アメリカ(4-1-4-1)
GK:ケラー
DF:チェルンドロ、オネェウ、ポープ(47' 退場)、ボカネグラ
MF:マストロエーニ(45' 退場)、レイナ、ドノヴァン、デンプシー(61' ビーズリー)、コンヴェイ(51' コンラッド)
FW:マクブライド
【ハイライト映像】
お互いに慎重な展開だった1戦目と異なり、2戦目は今大会のグループステージで最も荒れた試合の1つに。イタリアの相手は、1戦目でチェコに0-3で敗れ、ここで勝たなければ敗退が決まるアメリカ。アメリカは開始直後から激しいプレスやファールまがいのタックルでイタリアを削りまくり、全く対応させないまま防戦一方に追い込みます。
かなり厳しい時間帯にあったイタリアでしたが、意外にも先制に成功。前半22分、ピルロの絶妙な低い弾道のフリーキックをジラルディーノがダイビングヘッド!これで1-0。合わせたジラルディーノ以上に、完璧なパスやシュートでゴールに迫るピルロの活躍は、今大会中、常に光っていました。
【イタリア:1点目】
ですが、ゴールからわずか6分で、イタリアは2つの大失態を犯します。1つ目は前半27分。サイドバックのザッカルドのクリアボールをまさかのミスキック。これにはブッフォンも反応できずにゴールに吸い込まれオウンゴールとなりました(動画を見るとずっと分かりやすいと思います)。イタリアはあり得ないミスで同点に追いつかれてしまいました。
【アメリカ:1点目(オウンゴール)】
そして2つ目はオウンゴールの1分後の前半28分。この展開に動揺したのでしょうか、デ・ロッシが空中戦で競った際にマクブライドに思いっきり肘打ちをかまし、なんと一発退場。当時24歳だったザッカルドと22歳だったデ・ロッシという、2人の若い選手のミスで、イタリアは窮地に追い込まれます。
【デ・ロッシ一発退場】
しかし、アメリカもこのチャンスを上手く活かせず、なかなか枠内に飛ぶようなシュートを打つことができません。さらに前半45分と後半2分には、悪質なタックルでなんと2人の選手が退場し、10人対9人の試合に。後半は、アメリカにいくつかのチャンスがあったものの、イタリアが主導権を握る展開になりました。
最終的になんとか1-1のドローで試合を終え、首位通過をかけて3戦目のチェコとの対戦に向かいます。
6月22日 vs チェコ戦
イタリア(変則4-4-2)
GK:ブッフォン
DF:ザンブロッタ、カンナヴァーロ、ネスタ(16' マテラッツィ)、グロッソ
MF:カモラネージ(73' バローネ)、ガットゥーゾ、ピルロ、ペッロッタ
FW:トッティ、ジラルディーノ(59' インザーギ)
チェコ(4-1-4-1)
GK:チェフ
DF:グリゲラ、コヴァチ(77' ハインツ)、ロゼーナル、ヤンクロフスキー
MF:ポラク、ポポルスキー、ロシツキー、ネドヴェド、プラシュル
FW:バロス(63' ヤロリム)
【ハイライト映像】
引き分け以上でグループステージ通過は決まるイタリア。オウンゴールでの失点&退場者という悪い内容だった前の試合を、いかにうまく切り替えられるかが重要でした。
ちなみに、前回レッドカードをもらったデ・ロッシは、4試合の出場停止が課されることに。その他にも複数の選手のコンディションに合わせ、前2試合と若干システムの変更がありました。
立ち上がり、いくつかの緩慢なプレーからスキを突かれ、チェコに何本かシュートを打たせてしまいますが、ここは守護神ブッフォンがしっかりとカバー。やはりネドヴェド、ロシツキーなどの中盤に光るタレントを擁するチェコは、ボールを持つだけで凄みと怖さを感じさせるプレーが多かったです。
前半17分にまさかのアクシデント。イタリアの守備の要ネスタが負傷し、プレー不可能に。急遽マテラッツィと交代することになりました。これが悪影響をもたらすかと思いきや、まさかの逆の結果に。
前半26分、右から得たコーナーキックをマテラッツィが高い打点から叩き込み、イタリアが先制!やはり身長193㎝は伊達ではありませんね。2005-06シーズン、マテラッツィは所属するインテルでは一度もゴールを決めていませんでした。こうした大舞台でワンチャンスをものにできるのはさすがです。
【イタリア1点目】
ゴール後は前半終了までチェコペース。何とか1点返そうとゴールに襲い掛かりますが、カンナヴァーロやマテラッツィを中心とした堅い守備陣が凌ぎます。そして前半ロスタイムに、なんとポラクが2枚目のイエローカードで退場!これが痛かった...。チェコは後半45分間、10人でイタリアの守備をこじ開けなければならなくなりました。
後半、状況は厳しいチェコでしたが、それでもネドヴェドとロシツキーの2人を中心にイタリアのゴールに襲い掛かります。しかしやはりブッフォンはすごい。ネドヴェドの後半8分、25分の強烈なシュートをセーブし、決してゴールを許しません。
後半30分を過ぎ、これまで以上に捨て身の攻撃に出るチェコ。対してイタリアは、代わって入ったインザーギを中心にカウンターでの戦術にシフトします。
そして試合を決めたのが後半42分。ペッロッタが相手の縦パスをカットすると、高くなっていたディフェンスラインの裏側にスルーパス。パスに素早く反応したインザーギは1人でキーパーをかわし、がら空きのゴールにボールを流し込みます!2度決定機を外したインザーギでしたが、3度目の正直でやっとゴール!
【イタリア2点目】
これにてチェコにとどめを刺したイタリアは、そのまま試合を終え、2-0で見事勝利。無事1位で決勝トーナメント進出を決めました。
グループステージ総括
結果
順 | チーム | 試 | 勝 | 分 | 敗 | 得 | 失 | 差 | 点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | イタリア | 3 | 2 | 1 | 0 | 5 | 1 | +4 | 7 |
2 | ガーナ | 3 | 2 | 0 | 1 | 4 | 3 | +1 | 6 |
3 | チェコ | 3 | 1 | 0 | 2 | 3 | 4 | −1 | 3 |
4 | アメリカ | 3 | 0 | 1 | 2 | 2 | 6 | −4 | 1 |
グループステージの3試合を戦って、結果は2勝1分。勝ち点は7。首位通過という結果を得ました。
2010年・2014年はどちらもグループステージ敗退、2018年にいたっては出場権を逃していることを考えれば、この結果は十分すぎると言えるのではないでしょうか。
小括
それでも、攻守(特に守備)に全体的に緩慢なプレーが目立ち、何度も決定的なチャンスを作られました。カンナヴァーロとピルロの2人に、全体的に救われていた感は否めません。
それでも前半の苦しい時間帯に必ず先制点を奪っている点は、本当に素晴らしいと思います。そしてそのどれもがセットプレーのチャンスを活かしたもの。いかに決定的なチャンスをしっかりものにしてきたかが分かるかと思います。
決勝トーナメントは、次の記事で
長い文章を読んでいただき、ありがとうございました。決勝トーナメントからの道のりについては、「【決勝トーナメント編】2006年W杯ドイツ大会 イタリアの優勝までの軌跡を振り返る」をご覧ください!
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