世界的な児童文学『ピノッキオの冒険』の広がり
世界中で今も読み継がれるイタリアが生んだ児童文学の傑作『ピノッキオの冒険』(Le avventure di Pinocchio)。
ディズニー映画『ピノキオ』をすぐに思い浮かべる方も多いかと思いますが、ここでは、ピノッキオに関するイタリアでの広がりの一部をご紹介します。
作者のカルロ・コッローディとは
『ピノッキオの冒険』は、カルロ・コッローディ(Carlo Collodi)によって1881年から「子ども新聞」に連載された童話になります。元々は、『あやつり人形の物語』(Storia di burattino)というタイトルで連載されていたようですが、『ピノッキオの冒険』と改めて1883年に出版されました。
"コッローディ"というペンネームは、作者の母親のアンジェラ・オルツァーリ(Angela Orzali)の生まれ故郷である町コッローディから採用したということです。1859年から"コッローディ"というペンネームを使用するようになったそうです。
1826年にカルロ・コッローディ(本名はカルロ・ロレンツィーニ)は、トスカーナ大公国のフィレンツェに10人兄弟の長男として生まれ、1848年に第一次イタリア独立戦争、1859年に第二次イタリア独立戦争に義勇兵として参加しています。
『ピノッキオの冒険』にも1861年に曲がりなりにも統一国家となったイタリアの社会状況が色濃く反映されているということです。
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原作について
ジェッペットじいさんによって喋る丸太から「ピノッキオ」と名付けられる人形が作られ、この好き勝手やりたい放題の人の言うことなど全く聞かないピノッキオのストーリーが語られていく『ピノッキオの冒険』ですが、連載時にコッローディは一度ピノッキオを殺して物語を終了させていたそうです。
強盗によって、ピノッキオは木に首を括られて死んでしまうという終わり方だったそうで、連載を読んでいた特に子どもたちから「ピノッキオを救ってほしい」などの要望が殺到して再開されることになったということです。
また、原作のピノッキオは、ディズニー映画の無邪気な子どもらしい人形ではないようで、物語の始めで早くもピノッキオは、忠告を与えるコオロギを怒りにまかせて殺してしまいます。
そして、ピノッキオを騙す狐と猫に関しては、登場してすぐにピノッキオにこの狐と猫のコンビに騙されないようにと助言を与えるツグミを猫が一口で食べてしまいます。その後も、児童文学としてはかなり不条理で残酷な場面が多々描かれています。
テーマパーク
そんな今から見ると残忍で悲惨な状況をも童話の中で描いている『ピノッキオの冒険』ですが、作者がペンネームとして採用した町コッローディにはピノッキオ・パークがあります。
パーク内には物語に登場する人物たち(ピノッキオはもちろん、ジェッペットじいさん、狐と猫、青い髪の仙女など)のオブジェが立ち並び、ピノッキオの世界を歩きながら辿ることができます。
また、ジェッペットじいさんとピノッキオが飲み込まれてしまう巨大なサメのオブジェもあり、ここを訪れた子どもたちは大喜びでこのサメの口の中に"飲み込まれている"ようです。
蝶々の家(LA CASA DELLE FARFALLE)も隣接されており、様々な種類の蝶を見学でき、さらにパーク内には子どもの遊び場も用意されているということです。もちろん、ショップには、色々なピノッキオグッズが揃えられています。
ピノッキオ・パーク 開園時間・入場料インフォ
開園時間
- 10月24日まで:10時から19時まで
- 10月25日から10月31日まで:10時から18時まで
- 11月1日からの営業時間は未定
- 休園日無し
入場料
- 大人:20ユーロ(約2500円)
- 子ども(5歳から14歳)とシルバー(65歳以上):15ユーロ(約1900円)
- 子ども(3歳から4歳):12ユーロ(約1500円)
- 3歳未満:無料
- その他、家族割引やグループ割引あり
実写映画
『ピノッキオの冒険』は映像作品にもなっており、1940年のディズニーのアニメ映画以外にも『ライフ・イズ・ビューティフル』のロベルト・ベニーニが監督、脚本、主演を務めた2002年作の実写映画『ピノッキオ』(Pinocchio)もあります。
この実写作品ではベニーニは、ピノッキオ役を演じていますが、2019年にイタリアで公開されたマッテオ・ガローネ監督版の『Pinocchio』(原題)では、ベニーニはピノッキオの"生みの親"であるジェッペットじいさんを演じています。
マッテオ・ガローネ監督版の『Pinocchio』トレーラー / Youtube
ちなみに、ピノッキオの映像作品化は今も続出しており、メキシコ出身のギレルモ・デル・トロ監督によるNetflixのストップモーション長編アニメ『ピノキオ / Pinocchio(原題)』が近日配信予定だということです。
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絵文字翻訳
テーマパーク、映像作品、そして、ピノッキオの物語を絵文字で翻訳するという試みもあるようです。『PINOCCHIO in Emojitaliano』(ピノッキオ 絵文字イタリア語で)というタイトルの書物で2017年に出版されています。
絵文字でピノッキオの物語の一部を翻訳しているようで、コッローディの『ピノッキオの冒険』のオリジナルテキストと絵文字翻訳文を見比べられる構成になっているということです。
また、絵文字の用語や文法解説もあるようで、絵文字でどのようにピノッキオのストーリーを表現しているか分かるようになっているそうです。
なお、この作品は絵文字の世界共通言語としての可能性を探るための試みでもあるということです。
さいごに
1883年に出版されたコッローディによる傑作童話『ピノッキオの冒険』。今なお様々なメディアに色々な形で取り上げられており、子ども、そして大人も100年以上も前に誕生したピノッキオに魅了され続けていると言っても良いかもしれません。
もしまだ原作を読まれていない方は、是非とも手に取ってみてください。
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