ローマの観光産業は回復傾向にあり、ローマの観光客も増加、市は将来的な見通しを出しているという記事を前回書きました。一方で、労働者は家に引きこもったままの状態が続いています。
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ローマの観光収入の回復は2023年か - 新たな予想も
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予告なしの人員解雇が問題に
Covid-19 パンデミックは、ローマの観光業を中心に大きな打撃を与えましたが、そうした市場の変化に労働者は翻弄され続けています。ローマ市内で働く数百人の労働者が、しばしば予告なしに余剰人員であることを宣告され、解雇されています。そしてこの状況は、現在も変わっていません。
2022年上半期の観光動向によれば、2019年を下回る水準を記録しているとのこと。たしかに、ホテルの客室稼働率(.14.9%)、航空輸送量(-23%)、免税ショッピング(-56%)が減少していますが、レジャー分野での収益に関しては+33.4%増を記録し、記録的なプラスとなっています。
イタリア労働組合連盟(CISL)のローマ・リエーティ事務局長であるステファノ・ディオチャウティ氏は、「ここ数ヶ月、経済問題を理由に何百人もの従業員の解雇を決めたローマのいくつかの大型ホテルに対して、強く抗議してきた」とと主張します。続きて「ローマでは記録的な売上高と非常に高い観光客数が話題になっているが、これは矛盾に満ちている」と。
組合は「観光部門は芸術的遺産を多くもつイタリアにとって真の産業である」ことから、大規模な計画を求めてきました。しかし、短絡的な政策により、観光業は向上したかに見えているが、その重荷は全て労働者の肩にかかってしまっています。
予告なしの人員解雇が問題視された施設

ザ・マジェスティック
ローマを代表する5つ星ホテルの一つであるホテル・マジェスティック。昨年の冬、ホテル・マジェスティックの47人の従業員が街頭に出たことがありましたが、結局は何の役にも立ちませんでした。
結局、マジェスティック社は7月に閉鎖され、労働組合の抗議が再燃しました。。労働組合は、今回の解雇の背景には従業員の不利益になる投機的なオペレーションがあるとみている。
ザ・シェラトン
シェラトン・ローマ・ホテル&コンファレンス・センターでは、約2年ぶりに164人の労働者が余剰人員となりました。これだけの人員整理をしても大きなホテルの運営がなんとか回っているというのも驚きです。
恐らくスタッフは、ギリギリのところで持ちこたえているのではないでしょうか。低コスト運営のためのしわ寄せと言えそうです。
ザ・ヴィクトリア
ボルゲーゼ公園やスペイン階段の近く、1899年にカンパニア通りに建てられた歴史ある4つ星ホテルも、2020年3月から閉鎖されてきました。オーナーは代替策もなく、37人の従業員を解雇したままにしています。
アンバシアトーリパレスホテル
ドルチェ・ヴィータのシンボルである、ヴェネト通りのホテルの従業員51人も解雇されました。労働組合は、オーナーがパンデミックを口実に労働者を解雇していると抗議していますが、状況は何ら変わっていません。
さいごに
同様の問題はローマだけではなくイタリア各地で起きているはずです。どの都市も急激な需要回復に仕組みが追い付いていない実態があり、実際に少ないスタッフで運営をしなければならないホテルはてんてこ舞いになっているのではないでしょうか。
一方で、いつまた需要が停滞するかも分からない中での再雇用に及び腰になる企業の気持ちも分からなくはありません。そもそもホテル自体が操業停止になってしまっている場合、労働者に対して給料を払い続けられるのかと言えば疑問です。
ただ、組合や労働者が強いイタリアにおいて、不当解雇などがそのまま放っておかれている現状を考慮すると、パンデミックは、イタリアの企業と労働者の力関係を揺るがすものだったのかと思わざるを得ないです。