シチリア島、パレルモ在住の桜田香織です。今回はシチリアで行われるお祭りについてご紹介しようと思います。
州都のパレルモについでシチリア島の第二の都市カターニア、商業的な面で言えばパレルモよりも発展していると言われている街です。そのカターニアの守護聖人、聖アガタのお祭りは盛大で一見の価値大有りです。
カターニアの守護聖人・聖アガタのお祭り
イタリアではどんなに小さな町でも「その町の守護聖人」が存在します。そしてその聖人の日には町や村でお祭りが行われます。カターニアの聖人聖アガタは、紀元後3世紀にこの町で生まれた女性、大変信仰深い方でした。
聖アガタの伝説
時のローマ総督からプロポーズをされましたが「一生を神に捧げる」と決めていた彼女はそれを拒否、激怒した総督から次々と拷問を受け、乳房を切り取られてしまいます。しかしアガタは薬に頼らず祈りによって治すと言い、毎日祈り続けたところ、ある晩夢に聖ペテロが現れ、奇跡を起こして治してくれたと言われています。これに対して更に怒った総督は最終的にアガタを火炙りにし、彼女は殉教しました。しかし彼女のまとっていたベールだけは燃えずに残ったと言い伝えられています。
と、これがかいつまんだ聖アガタの一生です。彼女はカターニアの市民にとても愛されており、このお祭りでは市民の鼻息も荒くなります。
3日間の長いお祭りは、山車が見どころ！
聖アガタの日は2月5日ですが、お祭りは３−5日の３日間続くというだけでも他の町の守護聖人とはちょっと格が違うのがお判りいただけるのではないでしょうか？
実際は6日の明け方まで続きます。
見所は派手な12のお神輿と聖アガタの銀製胸像を乗せた山車、その山車に積まれたロウソクでしょうか。このお神輿は魚屋、肉屋、八百屋、花屋など、職業によって分かれた12のグループがそれぞれ所有しており、守護聖人の一生を描いたシチリア風バロック様式の彫刻が施されています。
一方の山車は普段ドゥオーモに保存されていて、銀製の聖アガタの胸像が飾られ、複数の聖職者が一緒に乗り込みます。そしてあらかじめ市民が購入してあったロウソクを山車の上にいる彼らに手渡し、順番に火をつけながら動いていきます。このロウソクは長さ、太さに幾分差がありますが、短い物でも50cm近くの長さです。
お祭りの幕開けは3日の昼間、ステシーコロ広場にある通称サンタ・アガタ・フォルナーチェ教会（正式名はサン・ビアッジョ教会）で火を灯したロウソクをドゥオーモまで運んで奉納します。勿論なるべく太くて長い物であればあるほど、ご利益があると言われていますから、家族の人数分の長いロウソクを抱えて歩くお父さんもいます。
カターニアの町のメイン・ストリートであるエトナ通り（Via Etnea）を中心に沢山の出店が並び、人が増えていている中を火の付いたロウソクを持って歩くのですから大変な作業です。
初めから最後まで、超エネルギッシュ！
ロウソクをドゥオーモに奉納し、初日のメインはその後ドウォーモ広場で行われる花火です。この花火は音楽とシンクロされていて、とても楽しい物でした。例によってシチリアですから老若男女、乳母車に乗った乳飲み子までが外に出て来て広場を埋め尽くします。
翌４日、早朝に行われるミサから本格的にお祭りの開始です。ミサ終了後このお祭りの主人公である聖アガタの胸像が乗せられた山車がドゥオーモから出て来て市民とご対面、そしてそれから5日の明け方まで、休まずに町中を闊歩します。
その間前日ロウソクを奉納出来なかった市民が、上記したように山車の上にいる人に手渡し、火を付けてもらいます。その山車を追うようにお神輿が後に続きます。道は人で一杯、身動きもとれません。担ぎ手が変わりながら長時間に渡る行進、その間人々のテンションが下がることなく最初から最後までエネルギッシュなのです。
最終日5日の明け方、聖アガタは無事ドゥオーモに戻り、再びミサが行われます。しばしの休憩を挟んで午後からは又行進が始まり、翌日の明け方まで続きます。３日間ロウソクが燃やされ続け、人々は叫びまくり、全てが終了した6日の明け方のひっそりとした町の雰囲気は、精魂尽き果てた私にホッとさせるものを感じさせてくれました。終わったー。
このお祭りはセビリアの聖週間、ペルーのクスコで行われるコルプスドミノ（聖体の祝日）に次ぐ、カトリック世界三大祭りであり、3日間で100万人が訪れると言われています。この時期はお祭りだけに集中し、サッカーの試合も日程が重ならないように設定されます。イタリアでこれって、すごいことなのですよ。
聖アガタとエトナ山の逸話
聖アガタは乳房を切り取られ最後は火炙りになったので、女性の胸と火のシンボルでもあります。何度も噴火するエトナ山ですが、カターニアの住人は被害にあったことがないのをご存知でしょうか？旅行者を除いて死者が出た事がないそうです。市民を守ってくれる、まさに文字通り守護聖人であります。
燃えずに残った赤いベールがその象徴と言われています。つまりエトナ山の噴火によって流れてくる溶岩も、町の人を燃やす事ができないと言う事なのです、聖アガタに守られているので。
切り取った乳房をかたどったドルチェ
切り取られた乳房を型取ったドルチェも存在し、お祭りの間だけではなく一年中食べられます。柔らか目のビスコッティ生地の中にリコッタクリーム（リコッタと砂糖で作られたクリーム）が詰められ、外側をアイシングで覆ってある、かなり甘めの物です。まぁシチリアのドルチェはどれも甘いのですけど。
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さいごに
最後に、まだ正式な発表はありませんが今年は勿論中止になるでしょう。カターニア 市民にとってかなり辛い事だと思います。
3日間参加するのは結構ハードでありますが、いつか自由に動ける状況になってこの時期にシチリア滞在なさる方は、ほんの一部でもご覧になると楽しいと思います。
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