イタリアとの関わりが減る社会人4年目が思うこと

イタリアとの関わりが減る社会人4年目が思うこと

ゆうさん

学生時代にローマ・サピエンツァ大学に留学し、シチリア出身マンマが統べる大家族にてホームステイ。今は日系企業で国際提供業務に従事する社会人3年目。イタリアで仕事をする機会を細々と狙っています。サザンオールスターズとサンドウィッチマンが大好き。

私が大学を卒業してから丸3年が経ち、社会人としては4年目を迎えた。私は新卒で日系の会社に就職し、ありがたいことに、国際経験を身に着けることができる業務に従事しているが、日々、イタリアとの関わりが薄れていることを実感している。

社会人になり、大好きなフットボールクラブであるインテルの試合は、なかなか観れなくなった。基本的に朝型の生活スタイルなので、深夜まで起きていたり深夜に起きるのはもともとキツい。仕事のパフォーマンスに影響を与えることを避けるために、優先順位を下げた。

ローマに住む親友たちとの電話も週に1回から月に1回、それ以下に減った。自然と言葉は忘れていく。とは言え、話せばすぐに思い出すので、それを繰り返している日々。

何が理由かと言えば、本業の仕事が忙しくなってきたことだ。イタリア語ではなく英語を使う機会がぐっと増えて、様々な部署や海外との調整、契約の取りまとめから社内の稟議・決裁、業界特有のシステムについての知見もつけて、色々なことを勉強した。世間的には保守的と言われる企業だが、3年目の自分に大きな裁量を与え、信じてくれた。そして私も、日々起きる変化を楽しんでいる。しかし、そうすればするほど、今おこなっている業務の方に関心がどんどんシフトし、イタリアと向き合う機会が失われている。

昔は、必ず公開日から数日以内に鑑賞していたイタリア映画も、最近は大幅に時間を空けてサブスクで鑑賞するか、そもそも鑑賞できないことが増えた。「いつか観よう」と思ったままのネオレアリズモ作品リストもずっと後回しになっている。イタリア留学フェアのバイトも終わりになって、サイトの更新もサボりがちだ。なぜならイタリアに関する情報をキャッチアップしきれていないから。

また、業務においてイタリア語が生かされたことは、ほとんどなかった。1度だけ、イタリア人のお客さんからお電話が掛かってきたときに、イタリア語で会話を楽しむことができたくらいのレベル。

振り返ると、もともと自分の優先順位付けが少し異常だったのかもしれない。大学1年生の頃の自分は「イタリアに行く」「イタリアを極める」という、ある種ふんわりとした、それでいて盲目的な目標を立てた。そして5年間をそのために費やした。それなりに充実した学生生活を過ごし、イタリア語の勉強もまあまあ十分な語学レベルの資格を取得できたし、ローマへの留学は本当に楽しい経験だった。

ただ当時の自分は、「なぜイタリアでなければならないか」を明確に説明できなかったし、深く考えようとしていなかった。考える前にまずはやってみようと思うタイプの自分にとっては、学生時代、何か打ち込めるものがあればそれでよかったのかもしれない。そしてそれが、結果的に大学1年から学ぶことになった「イタリア」という存在だっただけなのかもしれない。

イギリスの有名な哲学者であるジェームズ・アレンの『原因と結果の法則』においては、全ての物事は偶然の産物でもなければ、環境による要因の産物でもなく、全て自分の行動が導いた結果であり、原因は常に自己に内在している」のだという。だとすれば「イタリア」という選択も、偶然ではなく、必然であり、自分が引き寄せたものだったのかもしれない。

だったら、この5年間を通して得た経験はムダだったのか?そんなことは一切ない。得た経験や考え方は、イタリアという国から少し離れたとしても、間違いなく生かされている。全く違う場所で生まれ・育ち、違う言葉を話す人が、いかに自分と違う考え方を持ち、自分と違う主張を持つのか。立場が違えばどれだけ物事の見え方が違うか。そして、そこで暮らした濃密な1年間は、今の自分が物事を考える・進める時の力となっている。間違いなく自分の人生を変えたタイミングはあの1年間の留学だったと思っている。過去にこだわる気は一切ないが、同時に忘れる必要もないだろう。

イタリアという国への深い愛と思いは変わらない、と自分では思っている。だが、自分は同時に複数の対象を同じだけ愛せる・取り組めるような器用な人間ではない。マルチタスクは苦手ではないが、自分が「これだ」と覚悟を決めたことについては、徹底的に取り組みたいから、どうしたって優先順位をつける。社会人1-2年目はその覚悟が足りず、イタリアとの間で揺れていたが、3年目になり、イタリアになかなか行けない生活が続く中で、図らずも覚悟が決まってしまった。

いつか、イタリアの優先順位が1番になる時が戻ってくると思う。「その時まで、少しだけ許して欲しい」と自分に言い聞かせている。だから、ここから先の記事は、少し自分の経験、特に留学時代の自分の経験を棚卸するような記事が増えるような気がしている。ホームステイ時代の楽しかったこと・面白かったことは、腐るほどあるので、そういった話を少しずつしたいなあと。

これまでは誰かの役に立つ記事であること、そして運営を行う以上はきっちりと収益化できることを優先していたが、今後は、過去の経験に基づいて書いた記事が結果的に誰かの役に立てばいいや、くらいのゆったりした気持ちで頑張りたい。

読者の皆さん、引き続き、よろしくお願いいたします。

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学生時代にローマ・サピエンツァ大学に留学し、シチリア出身マンマが統べる大家族にてホームステイ。今は日系企業で国際提供業務に従事する社会人3年目。イタリアで仕事をする機会を細々と狙っています。サザンオールスターズとサンドウィッチマンが大好き。

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