イタリアでひったくりに遭いました(2020年末)
コロナ下ということもあり、日本と同様、イタリアも、公共の場での犯罪というのは件数自体は減少傾向にあります。
そんな中、私は昨年末、仕事帰りにひったくりに遭いました。1週間ほど恐怖とパニックのフラッシュバックでよく眠れず、以降は身体的な負傷が徐々に現れ、同時に盗られてしまったものへの悲しみと後悔が増しました。
おかげでせっかくの年末年始もまったく明るい気持ちになれず、泣いてばかりの日々でしたが、言葉にすることで一度状況と自身の気持ちを整理しようと思います。何より、私の経験が少しでも皆様の今後のお役にたてばと思います。
ひったくり自体、日本でも起こりうることかもしれません。しかし、希望と期待を胸に、やっとの思いで来たイタリアでまさか自分に起こるとは、正直考えてもいませんでした。本記事で述べる対処法は、あくまでも私の経験に基づくものですが、皆様の頭の隅に入れておいていただければ嬉しいです。
ひったくりに遭った時の状況
・日時
2020年末18時半頃(私の住んでいる地域は黄色ゾーンでした)、仕事からの帰宅途中。
・具体的な状況
いつも通り、仕事を終え、帰路につく。コートの上から身につけていたものはサッチェルバッグ(ななめがけ)。
車道より一段高く設計されている歩道を歩いているところ、バイクが私と建物の間のスペースに突っ込んでくる(一方通行の道だったが逆走してきた)。エンジン音に驚いて振り向いた瞬間、バッグの肩から下げているベルトを背中から掴まれる。抵抗できず、バッグを体から話すこともできず(私自身はバッグのベルトからぶら下がっている状態)、そのまま後ろ向きで高速で走るバイクに引きずられる。
大声を上げたが、周囲は薄暗く誰もいない。交差点で曲がろうとする際に私自身だけ脱出。バイクはそのまま私のバッグを持って走り去っていった。ナンバープレートは視界になく、貼ってあったのかどうかすら不明。
放心状態で道路に立っていた時、カラビニエリ(軍警察)のパトロールカーに遭遇。私はパニックと過呼吸気味になりあまり言葉が出ない。バイクに20メートル以上引きずられたため服が破れ、外傷もあったため、救急車を呼ぶかと言われたが早く家に帰りたかったためNOと言う。幸い、家に同居人がいたため、家まで連れて行ってもらい少し落ち着いたところで状況を説明(ここで嗚咽がはじまり上手く説明はできていない)。
警官からは、その日はもう夜が遅い(19時半を回っていた)のと私が説明できる状況ではないことから、明日もう一度事情聴取にカラビニエリの事務所まで来るように指示される。その日は、カラビニエリに同居人の電話番号、私の各ID番号、盗られたものの簡単な説明をして終了。
・盗まれたもの
携帯、PC、財布(イタリアのクレジットカード×2、日本のクレジットカード×1)、書籍
・外傷
コートとズボンがズタズタになる。太ももから臀部にかけての広範囲にわたる擦り傷
すぐに行うべき5つの対処
対処1:助けを求める(#112)
いつ、何が起こるかわかりません。イタリアの緊急事態対応ナンバーは112です。
カラビニエリの番号(日本でいう110番)ですが、何にでも対応してくれます。救急車であれ、警察であれ、緊急事態があったらまず112にかけましょう。オペレーターが各所につないでくれます。
もちろん、113(国家警察)、115(消防)、118(救急)にかけても対応してくれます。
対処2:カードを止める(即日が好ましい)
被害を受けたその日にすぐ行ったことは、まずカードを止めることです。
同居人の携帯を使って、カード会社3件(日本×1、イタリア×2:BNLとN26)に電話をかけ、盗難にあったことを説明。すぐに対応してくれました。再発行方法については別途説明します。電話番号はNumero Verde(フリーダイヤル)ですので、ネットで探せばすぐに出てきます。
カードの番号やお客様番号、パスワードを聞かれるので、絶対にメモして保管しておきましょう。
対処3:被害届を出しに行く(即日が好ましい)
私の場合は翌日の朝一に行きました。所要時間1時間ほど(待ち時間を除く)。
私は、現場にいた私を発見してくれたのがカラビニエリだったのでカラビニエリに行きましたが、国家警察(Polizia di Stato)でも大丈夫です。
現在はコロナの影響で1件ずつの対応となっており、インターホンで用件を伝えた後は自分の番が来るまで外で待ちます。
順番が来て中に入ると、警官がとても丁寧に対応してくれました。
どういう風に後ろから来たのか、何をぬすまれたのか、携帯に貼ってあったステッカーのイラストや、盗られた本の題名まで、「どんなことでも良いから全部教えてほしい」と言われた通り、できる限りのことを説明しました。
30分ほど、時には警官と状況のシミュレーションをしながらの事情聴取を受けると、その内容をもとにverbale(口上書:これが被害届に当たる)を作成してくれます。私の口上書は4ページにもわたり、事細かに状況を書いてくれました。(ナンバープレートは見えなかったけどそもそもなかったかもしれない、という証言まで表記をしてくれました)内容に間違いがないか最終的な確認をして、同意のサインをすれば、終了です。
口上書の内容は形式ばったイタリア語で書かれます。少しでも不安であれば辞書を持っていくこと、ネイティブに同伴してもらうことを強くお勧めします。一時一句理解しようとすると非常に時間がかかります。
被害届は、必ず、銀行と携帯ショップ、IDの発行の前にもらっておくこと。本人確認書類も再発行手続きは早い方が良い。これらがないと再発行の手続きができません。
対処4:個人情報書類の再発行(被害届必須)
今回は私はパスポートやCarta di Identita'は自宅で保管していたため無事でしたが(いつも写しを持ち歩いています)、パスポートの再発行は大使館、Carta di Identita'の再発行は警察(Polizia di Stato / Arma dei Carabinieri)経由で可能です。すぐに連絡しましょう。
Carta di Identita'の再発行については、被害届があることが前提です。盗難申請はオンラインでも可能です。申請後、登録したコムーネ(市役所)に、被害届のコピー、Carta di Identita'以外の本人確認書類(免許かパスポート)、証明写真3枚、再発行手数料(地区によって異なるが盗難による再発行の場合約22ユーロが相場)を持って行きましょう。上記はあくまで一般的な情報なので、必ず事前にご自身のコムーネや警察に確認することをお勧めします。
対処5-1:SIMカード再発行
私はWindTreのフリーSIMを使っているので、とりあえず最寄りのショップへ。
被害届と、本人確認書類、再発行手数料(確か10〜15ユーロ)で、自分が以前使っていた番号を引き続き使えると同時に、盗られた方のSIMは使えなくなります。
私はアプリで月々の料金を支払っていたのですが、そのアプリも問題なく引き継げ、さらに残高もそのままでした。
対処5-2:カード再発行
銀行ごとに異なるのであくまでも参考として。
BNL
窓口に行き、被害届とパスポートでカード事態は即日再発行してもらえる。
ただ、アプリを使っている場合、アプリの情報が携帯の端末ベースで登録されているため、携帯番号が同じでも端末を変えてしまうとアプリが使えない(=オンラインでの支払い、残高確認ができない)。
後日改めて電話をし、アプリに紐づけられた端末情報の削除をしてもらう。アポをとって再度窓口にも行ったが「窓口の人間ではどうにもならないので自分で電話して」と言われたので最初から電話で行った方が早い。ちなみにカード機能を止めるための番号と、アプリを削除するための番号は別なので注意。
N26
再発行などの手続きが全てアプリベースなので注意。アプリの起動には登録した電話番号が必須のため、まずSIMカードの再発行を済ませておくこと。
再発行申請が受領されるとメールが届き、そのメールに返信する形で理由を説明。後日、電話がかかってくるので電話で再度説明(イタリアからの着信ではないことがあるが応答するように)。前使っていた端末でのアプリを使用不可にしてもらい、同時に新しい端末でのアプリの使用を可能にしてもらう。後日、郵送にて再発行カードが届く。
上記の流れで私が特筆すべき流れは終わりです。もちろん、SNSや他アプリからの情報漏洩にはお気をつけください。
次に向き合うべき5つのこと
追加対処1:保険会社にも連絡を
保険会社に連絡を取って、保険の適用に必要なものをあらかじめ聞いておきましょう。
帰国して申請する段階になってから、イタリアでとっておくべきだった書類の存在に気づくようなことは避けたいものです。
追加対処2:IMEI番号を控えておく
携帯の世界共通シリアルナンバー(IMEIまたはIMED)をご存知ですか?
端末の違法売却を防ぐもので、フリマアプリなどには表記が必須のところもあります。
もし、日本で買った携帯がイタリアで盗まれて違法に売却されそうになっても、IMEIがあれば自動的に通報される仕組みになっています。
分解されてしまったら元も子もないのですが、私は今回このナンバーを控えていなかったので後悔しています。
表記場所は、simカード挿入ケース、背面など端末によって異なりますが、#06にコールすれば自動応答で教えてくれます。
追加対処3:家の鍵問題
今回は、たまたま同居人が自分の鍵を友人宅に置き忘れたため、私が同居人に鍵を預け外出しており、鍵は盗まれませんでした。
しかし、もし鍵が盗まれてしまったら...。
一人暮らしの場合は大家さんや仲介の不動屋さんに相談しましょう。イタリアの住宅の扉はblindata(防壁加工)のものが多く、鍵をなくしてしまったら鍵穴だけでなくドアごと交換、ということにもなりかねません。鍵をかけなくても、閉めただけで外側からは開かないようになっています。
もし、何としてもすぐに家に入りたいときは118(消防)に電話すれば開けてくれます。ただ、経験のある知人の話だと料金が発生するとのことですので、ご確認ください。
追加対処4:健康問題
被害を受けた当日は、アドレナリンがでていて痛みをあまり感じなかったりします。私は、とりあえず目に見える傷が酷いものではありましたが擦り傷だけだったので、消毒すればいいやという程度の認識で、病院にはいきませんでした。
しかし、数日経って、だんだん関節という関節が曲げられないほど痛くなり3週間ほど笞打ちと筋肉痛のような症状がありました。すぐに、健康被害はないと言い切らないこと(事情聴取でも聞かれます)、病院には行けるうちに行っておきましょう。
イタリアでは、病院は最短予約可能日が何週間も先ということも多く、急患に行っても、重症の患者が優先されるため症状によっては半日以上待合室で待ちぼうけをくらうことがあります。
追加対処5:日本大使館へ連絡
困った時は日本大使館へ連絡すると、真摯に相談に乗ってくれ、的確なアドバイスをしてくれます(北イタリアの方、管轄によってはミラノ領事館にご相談を)。
被害があった、ということだけでも、一報しておくと良いと思います。
終わりに:これから
ここまで読んでいただきありがとうございます。
家族からは、「あなたは昔からふわふわしているところがあるから狙われやすいんじゃないの」と咎められましたが、そう言われても起きてしまったことは仕方がありません。
もちろん、これからは一層気をつけますが、もし起こってしまった場合は、悲嘆にくれたり後悔の念に苛まれる前に冷静に対処することが重要です。
そして、今回私の話を親身になって聞いてくれ、現場に近い建物の防犯カメラを調べてくださったり、「この出来事が、イタリアでの素敵な思い出で消されることを願っている」と元気付けてくれた警官の方、
事情聴取前に状況説明のイタリア語が通じるかどうか、より的確に表せる言葉はないか考えながらシミュレーションをしてくれたり、瑣末な手続きの情報収集に努めたくれた同居人に感謝の意を表します。