ボローニャ夏の風物詩、星空の下のシネマ

ボローニャからのお便りも二度目となります。今回の舞台は前回ご紹介した市立図書館の目の前にあるマッジョーレ広場。ここではアート、スポーツ、政治集会、マーケットなど、年中多種多様な催しが開催されています。

なかでも筆者が毎年楽しみにしているのが、真夏の約二か月間、広場を多くの人で埋め尽くすSotto le stelle del Cinema。直訳すると「シネマの星たちの下で」でしょうか。

今日はこの野外シネマと、そこから垣間見るボローニャのまた違った一面についてお話ししたいと思います。

Sotto le stelle del Cinema について

みどころ

毎晩一本、主にイタリアやアメリカのわりと古めの映画が上映されるこの期間限定シネマ。その魅力は何といっても夏の夜空の下、美しい中世の広場に現れた巨大スクリーンで映画を観る開放感。入場料もかかりません。

イタリア映画には英語字幕、ハリウッド映画にはイタリア語字幕、というように二か国語対応になっているのも嬉しいところ。

プログラムはあらかじめ公開されるので、観たい映画をチェックして来る人もいれば、通りがかったら気になる映像がスクリーンに映っていたから、とか、夕方から広場でおしゃべりしてたら面白そうなのが始まったのでそのまま居座ることにした、なんていう人もいるでしょう。

ただし上映間際に来ると座れなくなるので、1時間くらい前から席取りをする人もちらほら。もし席がなくなっても、そばのカフェテラスから覗いたり、地べたに座って観たり、立ったまま鑑賞したり。そんな気軽さがこのシネマの良いところです。

でもこれは去年までのお話。今年はちょっと様子が違います。

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今年は体制を変えて開催

コロナウイルス禍が収束しないなか、いつも通りの夏のとはいかない今年。日本でも花火大会やお祭りの中止が相次いでなんだかさみしいですが、イタリアも然り。

たとえばローマのカラカラ浴場の野外オペラや、ペルージャのウンブリアジャズといった有名な夏の芸術の祭典が開催見送りとなりました。

ここボローニャでも春から初夏にかけてさまざまな年次イベントが中止または延期され、この野外シネマも今年はお預けかと懸念されましたが、無事に26回目の開催を迎えました。

ただし完全予約制がとられ、例年のようにふらっと立ち寄れる気軽さはありません。ソーシャルディスタンスの義務付けにより席数も1,000に限定され、立ち見も禁じられているようです。会期も少し縮まり、初日は7月4日、最終日は8月21日となっています。

それでもなるべく多くの人が楽しめるように、という主催側の配慮でしょうか。街のはずれにあるアリーナに750人を収容する第二会場が設けられ、毎晩のプログラムが二か所で同時上映されています。

そんなわけで、筆者も去年はそれこそ当日思い立って何度か観に行ったものですが、今年はそうもいかず。先日お目当ての映画を一本だけ、マッジョーレ広場で観てきました。

予約は上映7日前から随時オンラインや指定の場所で受付開始ということだったのですが、予約解禁日にすぐ席をおさえて正解。数日後にはあっという間に満席になっていました。それだけたくさんの人が楽しみにしていたのですね。

鑑賞したのは1953年公開、ウィリアム・ワイラー監督の「ローマの休日」。もう何度観たかわからないほど大好きな作品ですが、親しみある美しい広場での臨場感あふれる名画との再会は、もちろんのこと今までで一番楽しめました。

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ボロネーゼの真夏のたのしみ

さて、夏休み本番となるとイタリア人はこぞって海や山の避暑地にバカンスへ出かけたり、故郷へ帰省したりします。

ボローニャの蒸し暑さは全国一と言っていいほど厳しいですから、ここをバカンスの行先として選ぶ人はどれほどでしょう。もしかするとこの時期この街にいる人は、だいたいが帰省中かバカンスに出ていないボロネーゼなのかもしれません。

ですので統計を見たわけではありませんが、この野外シネマはどちらかというと地元の人に親しまれている夏の恒例行事、という印象があります。実際会場を見渡しても普段着でくつろぐお客さんが多く、大きなカメラを抱えたような人は見当たりません。

 
 
 
 
 
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映画の街ボローニャ

ところで、街の一等地で二か月毎晩見放題のシネマなんて、だれが主催しているのでしょう。

イタリアで映画の街といえば、映画祭が有名なヴェネチアやチネチッタ撮影所のあるローマがまず連想されるかもれませんが、実はボローニャも歴とした映画の街です。

その立役者となっているのが、世界に誇る映画修復技術を有するFondazione Cineteca di Bolognaという財団で、Sotto le stelle del Cinemaを長年主催しています。ボロネーゼには“チネテカ”として親しまれています。

Fondazione Cineteca di Bologna 本部

このチネテカ、もともとは映画好きの有志によって「古い映画のフィルムを修復して皆で楽しめるように」と立ち上げられた文化協同組合でした。やがてハリウッドなど世界の映画制作・配給会社からフィルム修復依頼が入るようになり、半世紀も経たないうちにその技術が名実ともに世界一となりました。

今では市内にチネテカが運営する映画館、シネマ図書館、ボローニャ大学総合芸術学科(DAMS)のラボなどが入る複合施設もあります。例のサラボルサ図書館の改築同様、市の文化政策によって使われなくなったタバコ工場跡が再利用されました。

チネテカ複合施設エントランス

こうしてチネテカは映画に関するありとあらゆる事業を手掛けるまでになり、業界関係者のみならず映画ファンや市民の間で大きな存在感を発しています。

サラボルサ図書館
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姉妹イベント

そんなチネテカで修復を終えた比較的あまり知られてない国内外の映画は、Il Cinema Ritrovatoという国際映画祭で毎年お披露目されます。「Ritrovato=再発見された」という意味合いがありますが、その名の通り、埋もれていた価値ある昔の映画に今一度スポットライトを当てよう、という想いが込められているようです。

Il Cinema Ritrovato 公式サイト (festival.ilcinemaritrovato.it)

この映画祭は1986年から続く、いわばSotto le stelle del Cinemaの姉のようなイベントです。例年はSotto le stelle del Cinemaよりひと足早い時期に一週間開催されますが、今年は8月25日からに延期されました。

こちらは入場有料となりますが、会場はマッジョーレ広場ほか市内随所に散らばります。時には海外からの来賓もあり、2018年にはマーティン・スコセッシ監督が出席して話題を呼びました。

おわりに

さて、またひとつボローニャの魅力をお伝えできたでしょうか。

イタリアの夏は、どこも野外の音楽祭や芸術祭で賑わいます。やっぱり王道はオペラ。ヴェローナのローマ劇場などが有名ですが、チケットは決して安くなく、人気の公演はすぐに売り切れになってしまいがちです。

一方このボローニャの野外シネマのように、地元の人が一日の終わりに気軽に駆け付けるようなイベントもあります。滞在先の何気ない催しに参加するのも、夏のイタリアの楽しみ方のひとつかもしれません。

ボローニャなら、Sotto le stelle del Cinema。来年は予約もいらない、いつもの“ふらっと”感が戻っていることを願います。

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YASUE

出張や休暇で日伊を度々往復するうちにイタリアの大らかさと美しさに魅せられ、とうとう移り住んでしまいました。現在は北イタリアでアートマネジメントの研究をしながら、翻訳や映画関係の仕事をしています。

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