イタリアのクリスマスとプレゼーピオ

イタリアのクリスマスとプレゼーピオ

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国際線客室乗務員をしていた頃、仕事で訪れたローマに一目惚れ。その後社内留学システムを利用して渡伊。結局退職して、本格的にイタリアに居を構える。フィレンツェで数年暮らした後は、縁あってシチリア島へ引越しし現在に至る。フリーランスで通訳、コーディネーター、ライター稼業を営みながら、シチリアのスローな生活を楽しんでいる。

今の時期、日本はもうどこもかしこもクリスマスのデコレーションとイルミネーションでキラキラしている事と思います。

それとも今年はコロナ禍で、それほどでもないのでしょうか?私がJALにいて飛んでいた頃、クリスマスが美しい街はニューヨーク、パリ、ロンドンだと思っていました。ところが最後にクリスマスの時期を東京で過ごしたのは2011年ですが、その街並みの豪華さにびっくりした記憶があります。先に挙げた3都市に匹敵する美しさでした、いえ、それ以上だったかも?

イタリアのクリスマスってどんな感じ?

意外と期待外れのクリスマスイルミネーション...

デコレーションはこんな感じです。

一方イタリアのクリスマスですが、日本の皆さんからよく「イタリアのクリスマスって、美しいのでしょうね」、「町中がイルミネーションで飾られるのでしょうね」などと聞かれるのですが、実際はそんな事はありません。

フィレンツェに住み始めて最初のクリスマスを迎える時には私もワクワクしたものですが、あら残念、全くの期待外れでありました。お店の中にクリスマスツリーが飾られていたり、メインストリートにも多少のイルミネーションはありましたが、たいした事ないのです。

クリスマスソングが聞こえてくる事もありませんでした。北イタリアは又違うのかしら、もう少しそれっぽい雰囲気があるのかも知れませんね。

シチリアに移ってからは更にしょぼく(笑)、質素というか簡素というか・・・。浮き立つような雰囲気はありません。年末に向けての忙しく、ザワザワとした感じは勿論ありますが、華やかさには欠けています。しかしそれにはきちんとした理由があるのです。

クリスマスツリーもサンタクロースもなかったイタリア

近年になるまでイタリアには「クリスマスツリー」という物は存在しなく、サンタクロースもやって来なかったのをご存知でしょうか?

バチカンのお膝元であるこの国ではクリスマスと言えば一年で最も大切な行事で、家族で過ごすのが決まりです。そしてツリーの代りになるのがプレゼーピオと呼ばれる物、これはキリスト生誕の場面を人形で表す模型で、12月に入るとあちこちの教会に飾られます。

馬小屋の飼い葉桶の中は24日の夜までは何も置かれず、真夜中に幼子イエス・キリストの人形が置かれることになっています。各家庭でツリーを飾り、プレゼントの交換をする習慣はごく最近の出来事なのです。私の周りのシチリア人に聞いたところ、70年代の終わりから80年代初頭にかけとの事でした。

子供にプレゼントをあげるのは1月6日の公現祭の時、サンタさんではなくホウキに乗ったベファーナと呼ばれる老婆が、良い子にはおもちゃを、悪い子には炭を持ってきます。今でもこの習慣は残っているので、現代の子供達はクリスマスと公現祭と、2度もプレゼントをもらえるわけです。

プレゼーピオについて
ツリーだけじゃない!イタリアのクリスマスに不可欠なプレゼピオとは?

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シチリアの「プレゼーピオ・ヴィヴェンテ」

さて、ここシチリアでは人形ではなく人間がこのシーンを演じてお祝いをするという町がいくつかあり(プレゼーピオ・ヴィヴェンテ、生きているプレゼーピオの意)、テルミニ・イメレーゼという町もその一つです。

旧市街の角や広場、教会内部に当時のパレスチナの町並みを再現し、受胎告知から聖夜にベツレヘムの馬小屋でキリストが生まれるまでのストーリーを見せてくれます。役者である住民達はそれぞれの持ち場から動くことなく、見学者である私達が案内人と共に1時間45分かけて旧市街を歩きながら12の場面を追っていきます。

実際の様子

早めに行ったら、まだ準備中でした...。

夕方5時から15分おきにグループに分かれて出発、最終回の8時15分発の回まで全部で14回もありますから、出演者にとってはかなりの重労働でしょう。クリスマスを挟んだ2回の日曜日と1月に2回、全て予約で一杯になるほどの定評があります。

1回につき見学者は100人なので、1日に1400人がこのお祭りのためにやって来る計算です。舞台となる道端や広場には照明、音響などの舞台装置も完備され演出も抜群、もちろん台詞付きです。当然受胎告知のマリア様と、馬小屋でのマリア様は違う人が演じるわけで、約40人の登場人物と脇役を250人以上の住民が演じ、2ヶ月かけて準備を行ってきたという話です。

2000年以上前の生活が目の前に

イスラエルの王様のきらびやかな衣装、古代ローマの兵隊の派手な赤い軍服、質素な布で出来た服をまとう一般庶民の対比が、2000年以上昔の生活をすぐ目の前で披露してくれます。もちろん細部にもこだわり、当時の仕事を洗わず職人達、羊やロバなどの動物も一緒に雰囲気を盛り上げてくれるのです。

町の中心であるドゥオーモ広場から、人工的に作られた城壁のアーチをくぐって内部へ入るとそこはもうパレスチナ、細い坂道を下って行き、受胎告知の場面から物語の始まりです。進むに従ってグングン引き込まれ、まるで知らない土地に来たような錯覚を覚えます。

告知を受けたマリア様

元来話好きなイタリア人ですから、脇役の人達はコソコソとおしゃべりをしたり笑ったり...ということがあってもおかしくなく、それを目にするといきなり現実の世界に戻らされるものですが、そんな様子は皆無。大人も子供も真剣に自分の役割を演じていました。

参加してみて

台詞もない「ただそこにいるだけ」のその他大勢、しかし彼らが全体の雰囲気を作り上げているのだなと実感、素晴らしいです。準備から疲れ果ててしまったのでしょう、眠ってしまった子供がいたのが何とも微笑ましく思えました。

馬小屋で生まれたキリストを抱いたマリア様とヨゼフに続いて古い教会へ入り、全員で声を揃えて祈りを唱え終わったところで現実へ戻ります。

体験してみると、何故イタリアにはクリスマスツリーがなかったのかを理解出来る気がしました。本来この日は子供たちがプレゼントをもらう日ではなく、あくまでもキリスト生誕を祝う日なのです。

1時間45分の行程で、クリスマスの持つ意味を再確認し、喜び、祝うという気持ちが膨らんで来るのです。私達日本人にとってお正月が1年の始まりとなるように、彼らにとってはクリスマスが気持ちをリセットする日なのだということを実感できました。

イタリア人のクリスマスの過ごし方

家族で過ごすのが大原則

ところで、各家庭ではどんなクリスマスを過ごすのでしょうか?先ほど申し上げた通り、家族で過ごすのが基本です。12月8日にツリーを飾り、1月6日に片付けます。日本はお正月がありますからクリスマスが終わったらすぐに取り除かれてしまいますが、イタリアでは(ヨーロッパでは)「クリスマスシーズン」は1月まで続きます。

イブは家族と食事、その後真夜中のミサへ出掛ける人達も大勢いますが、メインは25日。この辺も日本と違うところでしょう。日本で盛り上がるのは24日、イブのディナーですものね。イタリアでもイブの夕食はご馳走を作りますが、私の知っている限りメインは25日のランチです。

お肉を食べる地域・食べない地域

パレルモではトルテッリーニ・イン・ブロード、もしくはラザニアという、何故かボローニャ辺りのパスタを食べる事が多いです。メインは大抵子羊か子山羊のロースト、復活祭の時と同じです。地方によってはイブには肉を食べない所もあるそうですが、パレルモの私の周りでは普通にお肉を食べています。

ある年のクリスマスランチ。イタリアに家族のいない私と、両親が既に他界している相方は孤児状態。やはり奥様が外国人と言う友人宅にお呼ばれしました。そのご主人もご両親はいらっしゃらないので、孤児同士一緒に過ごそうと言う事でした。テーブルにも幼子イエス・キリストが飾られています。

さいごに

商業ベースに乗ってイタリアにもツリーやサンタクロースがやって来ましたが、子供達にはその方が嬉しい事と思います。本来の意味とは違って来たクリスマスですが、やはり私個人的にはキラキラのデコレーションとワクワク感がある方が楽しいと思っています。

それは私がカトリックの信者ではないからなのかも知れませんが。それぞれのお国でそれぞれの過ごし方、その違いが文化なのでしょう。

イタリアのクリスマスを日本で!

イタリアでクリスマスの時期になると食べるのが、パネトーネ(Panettone)パンドーロ(Pan d’oro)。どちらも老若男女問わず愛されるクリスマスのドルチェです!

パネトーネは、オレンジピールやレーズンを混ぜ込んだスポンジケーキで、パンドーロは、雪を連想させるバニラ風味の粉砂糖をかけたスポンジケーキ!

今年のクリスマスは食べ比べをして楽しんじゃいましょう!

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