福者カルロ・アクーティス(Carlo Acutis)
15歳で逝去した少年カルロ・アクーティスが、2020年10月10日に聖フランシスコの地であるアッシジでカトリックの福者に列福されました。カトリック教会で「福者」は、「聖人」に次ぐ敬称になります。
"Tシャツとジーンズ姿の信仰に生きた若者"、"ミレニアム世代の初の聖人になる可能性がある"などと言われている福者カルロ・アクーティスの15年の足跡を辿ってみたいと思います。
なお、彼の生い立ちや活動に関しては、公式サイトの記述などを参考にしています。
生い立ち
福者カルロ・アクーティスは、1991年5月3日にイギリスのロンドンでトリノの名家出身の父アンドレア・アクーティス(Andrea Acutis)と母アントニア・サルザーノ(Antonia Salzano)の子として生まれました。
カルロという名は、父方の祖父の名前から採られたようです。父方の祖父であるカルロ・アクーティスは、保険業界で有名な人物であり、現在はアクーティス・ファミリー下の保険会社(Vittoria Assicurazioni)の名誉会長の職に就いているようです。
父アンドレアの仕事の関係で家族はロンドンに滞在していましたが、祖父が関わる保険会社(Vittoria Assicurazioni)で父も働くことになり一家は1991年9月にミラノに移り住みました。
ちなみに、現在、父アンドレアは、この保険会社(Vittoria Assicurazioni)の社長になっているようです。
家族とともにイタリアに戻ってきたカルロは、1995年からミラノのパルコ・パガーニ(Parco Pagani)幼稚園に通い、小中学校は、聖マルチェッリーナ修道院のトンマゼーオ(Istituto Tommaseo)学校で学びました。
そして、2005年からはイエズス会の「レオ13世 教育機関(Istituto Leone XIII)」の文科高等学校に通い始めました。
信仰以外にも音楽やスポーツなども楽しみ、充実した高校生活を送っている最中、2006年10月6日に急性白血病による症状に襲われます。
5日後の2006年10月11日には脳出血のために昏睡状態に陥り、10月12日にモンツァ市にあるサン・ジェラルド病院でカルロ・アクーティスは、息を引き取りました。享年15歳。
福者カルロ・アクーティスが眠る墓 / Youtube streaming
活動
僅か15年の人生の中でも、福者カルロ・アクーティスは、イエス・キリストへの信仰、貧しい人々への支援など多くの活動を行っていました。
7歳という年齢で初聖体拝領してから、ミサとロザリオの祈りを日々欠かさなかったということです。特に聖体の秘蹟(エウカリスティアの秘蹟)を生きる上での中心に据え、それを"天へのハイウェイ"とも呼んでいました。
学業に励む傍ら、堅信や初聖体拝領をひかえた子どもたちにカトリック要理であるカテキズムを教えたり、学校の宿題を見てあげたり、貧しい人々に食事を提供するカトリック教会の活動にボランティアとして参加したり、近所に住む生活難を抱えた人々を支援したりと様々な活動を行っていました。
また、サクソフォーンを演奏し、友だちとサッカーやビデオゲームをし、映画を見たり、飼い犬や飼い猫の動画を撮影したりと普通の子どもと変わらない生活も送っていました。
さらに、コンピュータープログラミングに関しても才能を発揮して、ウェブサイトの作成などの形でも信仰を表していました。
特に、彼は、世界各国で起きている聖体の奇跡(エウカリスティアの奇跡)に関する展示会を考案し、組織立てたことで注目されました。
この展示会は5大陸すべてで開催されるほどの大きなプロジェクトになっており、また、インターネット上でも様々な言語を通じて今も展開されています。
このことにより、将来、福者カルロ・アクーティスは、「インターネットの守護聖人」となるのではないかと見られています。
なお、この展示会に関しては、「世界におけるエウカリスティアの奇跡」として日本語サイトも用意されています。
"コピーとして死ぬことなかれ"
福者カルロ・アクーティスが残した有名な言葉に「誰もがオリジナルな存在として生まれるが、多くの人がコピーとして死ぬ」というのがあります。
"誰かのコピーのように"生きることなく、15年の人生を全うした福者カルロ・アクーティス。アッシジの彼が眠る墓には、日々沢山の人々が訪れているようです。
さいごに
福者カルロ・アクーティスの活動の一部を見てきました。カトリックの福者に列されるには、「殉教者」であるか、その人の名のもとで一つ奇跡を起こした「証聖者(しょうせいしゃ)」(キリストへの信仰を宣言し続けた者)である必要があります。
カルロ・アクーティスは、「証聖者」であり、彼への祈りを捧げたブラジル人の少年が膵臓の難病から回復したという奇跡を受けて、福者になりました。
聖人になるためには、列福後にさらにもう一つの奇跡を起こすことが必要な条件であり、聖人の列聖式はローマのサンピエトロ大聖堂で大々的に行われます。
福者カルロ・アクーティスも「インターネットの守護聖人」として聖人に列聖される日がいつか来るかもしれません。
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