海外生活、暮らさないと分からない事は多々ありますが、「現地人と一緒に暮らさないと分からない」という事も多いものです。
つまり、ご主人の転勤で海外生活を送る駐在妻、日本企業から自分の転勤による駐在など。もしくは何かの目的があって、日本企業の後ろ盾なく海外生活をしていても一人暮らし、又は家族が全員日本人の場合。これらのケースでは海外に住んでいながら、食生活や生活習慣といった家の中の様式が日本と同じように回っていく事が多いでしょう。
たとえ現地のお友達が沢山できても、なかなか彼らの普段の生活は見えてこないのです。よほど親しくなって気軽なランチにお呼ばれしたりなど双方の家を行き来しない限り、毎日の生活は分かりません。ところが現地人と生活を共にすると、まぁ色々と面白い事やびっくりする事が出て来ます。
イタリア人とパスタの深い関係について
ロングパスタ(スパゲッティなど)のお話
まずはスパゲッティの話。「パスタ」と大きくくくるのではなく、スパゲッティを中心としたロングパスタの話です。
事の始まりはもう随分前の事ですが、一冊の料理本。日本から遊びに来てくれた友人が、最近これが流行っていると言って持ってきてくれたのが「フライパン一つで作るおかず」というレシピ本でした。その頃フライパン一つで・・・という料理本が沢山出ていたらしい。
色々と使えそうな料理があって興味津々で見ていたところ、「フライパン一つで作るパスタ」の章があリました。あくまでもソースの事かと思ったら違い、ソースと共にパスタを茹でるのもフライパン一つでやってしまうというレシピです。
そんな事できるのかいな?できたらとっても便利、お鍋一つ分洗い物が減る!と思って読んでいくと水分の多いソースを作って、「ここにスパゲッティを半分に折って加える」と。これを読んだ時の私の感想は、「わーダメだ、これは使えない」。作っても私の相方は絶対に食べてくれないと。
スパゲッティは、折ってはいけません!
結論から言うと「スパゲッティは折ってはいけない」らしいのです。家庭で子供がまだ小さい時、ロングパスタをフォークに巻くのが難しいので半分に折る事があります。半分の長さだと、子供でもちゃんと巻けるようになってくるのです。
まぁこうやって練習をするのでしょう。私の友人で子供が7歳くらいになるまでスパゲッティを折って茹でていたら、ご主人から「いい加減に折るのはやめてくれ、子供はもう大きい。」と言われてました。
長さにこだわる面白エピソード(笑)
ある時にとあるトラットリアで相方と食事をしていたら、彼のオーダーしたスパゲッティが短かったんです。食べ始めてからすぐに「うん?」と首を傾げ、パスタを1本ずつフォークで持ち上げて、「なんだこれ」と。お店の方を呼んで、「おたくのレストランでは、パスタを半分に折るのですか?」と聞いたー。
「そんな事はないですよ」という返答に、フォークでパスタを1本ずつ持ち上げて見せた相方。「だって全部短いよ」と。そして謝らないイタリア人ですから(笑)、「袋の中でたまたま折れてしまったのでしょう」と言う日本では考えられない返答が。
しかし彼も負けてはいません、「じゃぁ袋の中でたまたま折れなかったスパゲッティで作り直して」と言って、作り直させました。私はスパゲッティを頼まなかったから分からないですが、頼んだとしていたらやっぱり短いのが出てきたのかしら?真相は不明です。
そこで彼に「長さが変わるとそんなに嫌なの?味が変わるの?」と、素朴な疑問をぶつけてみたら、「何を言っているんだ、この女は」的な視線が返ってきましたよ(笑)
「スパゲッティの長さは決まっている、それ以上でもそれ以下でもあってはいけない。子供じゃないんだから半分に折ったパスタなんで食えるか!」という事らしいです、なるほど...。要するに、折ったスパゲッティは子供の食べ物ってことなのでしょう。
スプーンについても強いこだわりが?
「大人はスープ以外の物をスプーンで食べてはいけない」と言うのと同じで、いけないというより「スプーンで食べるのは子供だけ」ということで。カレーをフォークとナイフで食べるイタリア人ですから。そうそう!イタリア人はパスタを食べる時にはフォーク1本です!スプーンを使うのが日本で流行ったのはかなり昔のことですが、あれはアメリカから輸入されたやり方らしいです。日本のイタリアン、ピッツァやパスタにタバスコをかけるやり方など、アメリカ経由で入ってきた物が多々あるようです。
イタリア人てかなり子供っぽい人が多い割に、そういうところは拘って、子供扱いされたくないらしい、笑えます。
因みに手打ちのロングパスタの場合、作り手によって長さが変わってくるのは当然ですが、それは全く関係ないし気にならないのだそうです。つまり「決まった長さで袋に入っているパスタを折ってはいけない」と言う事ですね。
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パスタを食べる時、絶対に守るべき決まり事
イタリアにいるとパスタにまつわる話が尽きません。
長年住んでいるともうそれが当たり前になっている事も多いのだけど、ふとした時に「イタリア特有」みたいな事を再認識します。それは帰国した時や、友人がこっちへ遊びに来てくれて一緒に食事をする時。日本のやり方とイタリアのやり方の違いを目の当たりにします。
イタリアには「パスタを食べる時に、絶対に守らなくてはいけない決まり事」が存在します。
パスタだけを食べなさい!
決まり事と言っても気にしながら守らなくてはいけないルールではなく、彼らにしてみたらそれが当然、それ以外はあり得ないという食べ方。それは「パスタが出てきたら、それだけをひたすら食べる」という事。えっ?普通じゃない? と思いますか?何が不思議?
例えば日本、というか日本人。パスタを食べながら途中でサラダを食べたりします。ランチセットにもサラダが付いてくる事が多いので、パスタを一巻き、そしてサラダを一口・・・。
その間にお喋りをしてしばらく手は休み、又パスタを一巻き…。このような光景を目にする事が多いですし、実際私の友人達もそうです。
でも! イタリア人はそれをしません。パスタが出てきたら、真剣にそれだけに向き合い、たとえ横にサラダがあったとしてもひたすらパスタを食べるのです。食事中もよく喋るイタリア人ですが、それでも食べるペースは一定しています。
サラダとパスタの順番は?
友人宅での気軽なランチ、すでにサラダも用意されそこに置いてありますが、サラダから食べ始める人はいないし、まずはパスタを平らげます。私はサラダから食べたいので、気のおけない友人だったら「先にサラダを食べても良い?」と聞いて、一人でサラダ。そうするとみんな「嘘でしょう?」と言う顔をします。「パスタが伸びる!」と。
皆んなで作ってワイワイ食べる時も、まずはパスタでその後サラダ。
神聖なパスタとは真剣に向き合いましょう(笑)
パスタには真剣に向き合わなくてはいけないそう。日本人が遊びに来てレストランへ行き、前菜をシェアしてその後パスタ。サラダも取る事が多いですが、お店の人はパスタが終わってから出そうと考えます。
考えるというか、彼らにとってはそれが自然な事。そうすると食べている途中で友人達は「サラダも一緒に欲しい」と。勿論頼めば持ってきれくれますよ。そして彼らはサラダとパスタを交互に食べます。それを見て私の相方シチリア人は、不思議そうな顔をするのですが、「日本ではこれ、普通だから」と私は毎回説明をしています。
そういえば、イタリアンレストランで他の欧米人の観光客が食事をしているのを見かけると、日本人と同じような食べ方をしている人が結構います。だからこれはきっとイタリア特有なのでしょうね。
パスタは神聖な食べ物らしいです。
因みにリゾットでも同じですよ。要するに「プリモピアット」はそれだけを真剣に食べなくてはいけないらしい。今では私もすっかり普通に思える食べ方であります。だからと言って日本の皆さんがイタリアへいらした時、レストランでもトラットリアでも頼めば一緒に出してくれますし、自分の好きなように食べて良いと思っています。
ただあまりにお喋りしながらゆっくりと食べていると、お店の人に嫌な顔をされる事もあるんですけどね、まぁ気にしない。
それは折角良い茹で具合なのに、そんなにゆっくりと食べていたら伸びるではないか。と言うお店の人の気持ちなのです。
日本に帰国して困ることって?
私は先に述べた通りなるべくなら野菜から食べますが、帰国して困る事があります。滅多にない事ですが、外食してランチに「パスタセット」を食べる時。スープ、サラダ、パスタが一緒に出てくるこの日本のランチセットを前に、しばし考えてしまうのです。
何から食べれば良いのか?
そもそもイタリアでスープとパスタの両方を食することはありませんし、まして一緒に出てくるなんて前代未聞。
この場合サラダは最後にするとして、スープとパスタの両方に向き合うと言う事が出来なくなってしまっている自分に気が付きました。スープとパスタを交互に食べると言う事ができないのです。私にとってあまりにも不自然で。
だからまず頼まないのですが、時々友人と一緒に同じ物を頼んでしまい、あー、やってしまったーとなる事があります。解決策としては、「スープには手をつけない」と言う事でしょうか。パスタを食べてからサラダを食べてスープは残します、どうせ冷めちゃっているし...。
さいごに
今回書いたことは、私がフィレンツェで7年間独り暮らしをしていた時には見えなかった、イタリア人のこだわりです。
地域によって異なる点もあるのでしょうが、シチリアでシチリア人と暮らして知った事です。その国に暮らしてみなければわからない事は多いですが、その国人と暮らしてみないとわからない事が沢山あると感じています。
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