クリスマスを目前に控えた12月に入りました。ローマはより一層寒さが厳しくなり、毎日ぶるぶるしながらローマ大学に通学していました。
クリスマスといえば、サンタ・クロース、美味しい料理、クリスマスツリーなどが非常に有名です。しかしイタリアにはそれ以外にも、プレゼピオと呼ばれるものがあります。
イタリアでは、ツリーよりプレゼピオ
日本では、クリスマスが近づくとクリスマスツリーを飾ってお祝いすることが一般的です。ですがイタリアでは、近年ではツリーは飾られるようになりましたが、もともとはプレゼピオの方が一般的です。
では、そのプレゼピオとはどのようなもので、何のために飾るのでしょうか?
プレゼピオとは
プレゼピオとは、イエス・キリストの誕生シーンをかたどった模型のことです。イエスは父ヨセフ、母マリアのもとに誕生したとされ、この誕生の様子は、新約聖書の『マタイの福音書』と『ルカの福音書』が由来となっています。
福音書の記述
『ルカ福音書』:宿に泊まることができなかったヨセフとマリアが、洞窟(馬小屋)でイエスを産む
『マタイ福音書』:誕生したイエスのもとに、東方の三博士が星に導かれて彼を礼拝しに来る
という記述があり、それを参考にしています。つまりプレゼピオは、これらの福音書で書かれたことをもとにして、イエス誕生のシーンを再現した模型なのです。
またイエスが誕生した場所については、馬小屋と洞窟かのどちらかとされていますが、未だに明らかになっていません。そのため、両者を共存させるような形でつくられるプレゼピオもあるのだとか。
各地にプレゼピオが置かれる!
街が光に包まれるクリスマスにおいて、プレゼピオはとても重要な意味を持っています。街を歩けば、様々な場所でこれを見かけますし、特に教会などでは大きなものを見つけることができるでしょう。どれも人形がミニチュアで、とてもかわいいです。
クリスマスツリーだけでもとても美しいのに、さらにプレゼピオまで置かれ、教会巡りをするのが一層楽しくなりますね。
プレゼピオの歴史
聖フランチェスコがプレゼピオを有名に
プレゼピオは、11世紀頃から教会や修道院で作成されるようになりましたが、それはとても簡単なものでした。
そして、その文化を各地へ広めたのは、有名な聖人アッシジの聖フランチェスコであったとされています。13世紀、彼は当時住んでいたイタリア中部グレッチョで、聖書(文字)の読めない人のために、イエスの誕生シーンを再現しようと考えました。
そして、ロウで作った等身大のイエスの人形を岩屋に置き、床に藁を敷いて、本物の牛やロバをそばに配置してキリストの生誕シーンをしつらえたのです。そしてその前で、救世主誕生の説教をしたとされています。
関連記事
それぞれの形で各地へ普及
彼のこの功績以降、プレゼピオは各地に広まり、16世紀以降には、イタリア各地のみならず、南ドイツ、スペインにまで普及していくことになりました。
またナポリでは、貴族たちの趣味の一つとして、高級なプレゼピオを飾ることが流行するようになりました。
プロテスタントにも広がる
またプレゼピオは、本来カトリックの習慣でした。今日カトリックの国はイタリアやスペイン、フランスなどが挙げられますが、それだけではなく、プロテスタントの地域(ドイツ、北欧諸国)にも広がっていきます。
また、プロテスタントの教会や家庭には、クリスマスツリーを置く習慣があったそうです。そのためプロテスタントの地域では、ツリーの足元にプレゼピオが置かれるようになりました。
クリスマスツリーは?
ここまでプレゼピオのお話をしてきましたが、「クリスマスツリーはどうなの?」と思われた方もいるかもしれません。実は、もともとツリーとクリスマスには一切関係はありません。
もともと北欧に住んでいた古代ゲルマン民族は、樫の木を生命の象徴として崇拝していました。つまり特定の神という存在を持っていなかったのです。ですがキリスト教の勢力はそんな地域へも拡大していきます。
彼らは最初はキリストのような存在は信じませんでした。そこで宣教師が考えたのは、木をキリストの教え「三位一体」に見立てて、同化・教化してしまうというやり方。木の種類は樫からモミの木に代えたものの、「今あなたたちが信じているものは、実はキリストの教えと同じなんです。だからキリスト教を信じてみませんか」という風に、見事にモミの木をキリスト教の象徴的存在として布教していきます。
そして15世紀に、ドイツ・フライブルクで初めてのクリスマスツリーが飾られることになりました。その後も各地にツリーが飾られたとの記録があり、18・19世紀ごろにはプレゼピオと融合していくようになります。
関連記事
プレゼピオはいつから?
では、いつ頃にイタリアに行けばプレゼピオやツリーに会えるのでしょうか。
日本ではクリスマス直前に出し、年末の大掃除と共に消えていくクリスマスツリー。ですがイタリアでは12月8日が「聖母マリア無原罪のお宿りの日」という祭日であり、この日に、クリスマスの飾りつけを始める、というのが正式です。
「無原罪のお宿り」とは聖母マリアの処女懐妊のこと。12月8日に懐妊、25日には出産、1月6日に東方三博士がお祝いを持ってきたことにちなんでいます。そのため、クリスマスのデコレーションは、12月8日から1月6日まで、およそ1ヶ月続きます。
冬のイタリアは本当に寒いですが、一度はその目で見る価値ありと言えるでしょう。もちろん、クリスマスツリーもとてもきれいです。
冬のイタリアでプレゼピオに出会おう!
いかがでしたか?冬にイタリアを訪れれば、きっとかわいくてキレイなプレゼピオに出会えるはず。冬のイタリア旅行を計画中の皆さんは是非チェックしてみてくださいね。
イタリアのクリスマスを日本で!
イタリアでクリスマスの時期になると食べるのが、パネトーネ(Panettone)とパンドーロ(Pan d’oro)。どちらも老若男女問わず愛されるクリスマスのドルチェです!
パネトーネは、オレンジピールやレーズンを混ぜ込んだスポンジケーキで、パンドーロは、雪を連想させるバニラ風味の粉砂糖をかけたスポンジケーキ!
今年のクリスマスは食べ比べをして楽しんじゃいましょう!