73歳のマンマが、10人の子どもと孫を育てるために犠牲にした5つのこと

73歳のマンマが、10人の子どもと孫を育てるために犠牲にした5つのこと

ゆうさん

学生時代にローマ・サピエンツァ大学に留学し、シチリア出身マンマが統べる大家族にてホームステイ。今は日系企業で国際提供業務に従事する社会人3年目。イタリアで仕事をする機会を細々と狙っています。サザンオールスターズとサンドウィッチマンが大好き。

10人の子どもたちを育て上げたマンマ

私のホームステイ先のシチリア出身のマンマ。マンマとパパの間には5人の子ども、そして5人の孫がいます。子どもたちを育てたのはもちろんのこと、共働き家庭が増えるイタリアにおいて、あらゆる面で孫たちを育てたのはマンマだと言えます。

総勢10人にもなる子どもたちを育てた(育て続ける)マンマは、とんでもないほどの心労を抱えながら、一体どんなことを犠牲にしなければならなかったのでしょうか。彼女の言葉を紡ぎ出してみたいと思います。

犠牲にした5つのこと

1.自分の時間

子どもたちの写真

子どもを育てるため

マンマは子どもたちを育てるために、自分の時間を全て投げうたなければなりませんでした。20歳前に結婚したマンマは、すぐに子ども(長男)が生まれ、20歳のうちから子育てを始めることに。その後も子どもは増え続け、マンマが30歳過ぎになるころには、いつの間にか子ども5人の大所帯に。長男のジャンニが、13歳のころには、末っ子の双子(ヴァレリオ、アレッサンドロ)が生まれ、マンマの時間は本当にありませんでした。

私は今21歳。まだまだ若いうちはやりたいことも夢もたくさんある時期。そんな楽しい盛りの時期を、マンマは5人の子どもを育てるためだけに捧げたのです。その大変さは尋常なものではなかったのです。彼女が若いうちにはマンマのマンマも金銭面などで色々と助けてくれたおかげで、どうにかやりくりできていたとマンマは語っています。

孫を育てるため

そして、末っ子である双子が15歳をやっと迎えた頃、三女(アントネッラ)の初孫(アンドレア)が誕生します。まだまだ息子たちに手がかかる時期。マンマは、今度は孫の世話まで見なければならなくなりました。そして次女(マリア)の娘(ジュリア)も1年後に誕生しました。

これでもまだまだマンマのお世話は終わりません。双子たちが大学を卒業する、やっと手がかからなくなる時期になって、今度はさらなる孫(マリアの息子ルーカと、アレッサンドロの息子ダヴィデ)が生まれました。特にアレッサンドロとその妻(フランチェスカ)はまだ21歳と、とても2人だけで息子を育てられるような年齢ではなく、マンマたちの助けを受け続けることになります。

このように、子ども1人の世話が終わると孫が1人やってきます。本当に終わりの見えない子育てにも負けず、マンマは必死にかわいい孫たちを育てます。最後には、アレッサンドロの子どものサラとエリーザが6年おきに生まれ、マンマとパパと一緒に過ごすように。

50年を捧げたマンマ

ついに、末孫のエリーザが小学校に入る頃(2016年)には、ついにマンマは73歳になってしまいました。つまり、結婚してからの約50年間、子どもたちのために時間をささげてきたのです。

そのため、マンマにはできなかったことが本当にたくさんあります。イタリア人の若者なら絶対にしたことがあるであろう、バーやクラブで飲んだりするナイトライフも、バーでカフェを飲むことも、彼女は若いうちに1度もしたことはありません。きっと若い頃、色々なことをしたかったはず。それでも全てを彼らに捧げたのです。

2.自分の身体

50年間の家事や息子たちの養育を続けた結果、マンマは自分自身の身体さえ犠牲にすることになってしまいます。73歳となった今、彼女は様々な病気を抱えることになります。

糖尿病、心臓病、慢性的な高血圧、過度の家事による五十肩、膝痛、片目の慢性的なぼやけ、など、挙げていけばキリがありません。やはりそうともなってくれば身体も弱り、昔のように家事をこなすことはままならないようです。朝と昼は毎回5-10錠ほどの薬を飲まないといけません。当然その薬代もかさみ続けています。

子どもたちのためにいかに自分の全てを投げうったか、たったこれだけの言葉でお分かりいただけるかと思います。

3.おしゃれ代

日曜のランチ。親戚が全員集まると約20人になります。

全てのお金を子どもたちに捧げてきたマンマには、自分がオシャレをするためのお金は全く残されていませんでした。自分で高い服を買うことは稀で、子どもたちにプレゼントしてもらったものも多いのだとか。そしてそれらもなかなか買うことができないので、だんだんよれてしまったりと大変です。

おしゃれな靴も買いたいけど、もはや最近のマンマは「部屋用の靴を買いたい」と、より実用的なものを求めざるを得ないように。

さらに、美容院へもなかなかいけません。50過ぎてからは白髪染めも必要になったマンマは、一回美容院に行くだけで€80ほどの出費になってしまいます。丁度週に1.2度の買い物がそのくらいのお金でできるので、マンマは髪を切りたくても、自分の生活のために買い物をせざるを得ません。一度、母の日に子どもたちから「これで美容院でも」ともらったお金も、「自分の生活のために」と貯金してしまい、結局母の日から1か月後にやっと美容院に行けました。

自分のことなんかはどうでもよい、とにかく生活のためにお金を使うマンマは、オシャレに気を遣う余裕さえもない時もあります。

4.食事代

自分のための食事代という意味です。子どもたちにいいものを食べさせるために、マンマは食費にはお金を決して惜しみません。パック詰めの肉よりも、迷わず肉屋の肉を買いに行くような人です。日本と同じように食品品質が問題になるイタリアですが、その一方で非常に厳しい品質検査を導入しているイタリア。その気持ちはマンマも同じです。

ですが肝心のマンマは、今となってはあまりご飯を食べません。「夜は消化のいいものしか食べられないから」と夕飯でも、私たちのために美味しい料理を作ってくれるのに、自分はソースなしのパスタや雑炊のようなスープだけしか食べません。本当に何も食べない時もあります。そういった意味では、いつも買い物をしていても、それは完全に夫や親戚たちやホームステイをさせてもらっている私のためにお金を使っているということです。

5.親戚との時間

子どもたちが多いマンマはもちろん親戚との繋がりをとても大切にしています。ですが、常日頃「私のマンマにもっと色々なことをしてあげたかった」と口にします。というのも、マンマ自体はシチリア、アグリジェントの出身。そして若いうちにフィレンツェに引っ越しているので、もともとはローマの人ではありません。

そのため、若いうちは年に数回フィレンツェに足を運べたにせよ、年を重ねるごとにフィレンツェ、シチリアとの距離はどんどん離れていき、自分の兄弟などと会うこともあまりなくなってしまいました。

特にマンマは自分のお母さんには本当に愛情を感じていました。「自分が大変な状況にいたときにいつも助けてくれたのはマンマだった」と語るのです。そして「マンマに本当に助けてもらったのに、私は何もしてあげられなかった。もっと死ぬ前に何かしてあげられることはあったはずなのに、私にはそれをする時間も余裕もなかった。後悔しているの。」と目に涙を溜めながら私に話します。

きっと彼女のマンマは、愛情の見返りなんて求めていないのでしょう。だってマンマ自身、5人の子どもたちに何一つ見返りなんて求めていないのですから。それでも後悔してしまうところに、マンマ自身の恩、愛情の深さが表れているのではないでしょうか。

マンマが子どものために割いた時間の大きさを感じましたが、同時にちょっと自分の親を大切にしなきゃいけないな、と思ったマンマのエピソードです。

さいごに

マンマの子育てに、皆さんは何を思ったでしょうか。誰もを愛し、誰からも愛される私の家のマンマは、「イタリアらしいマンマ像」であると同時に「こんなマンマはどこにもいないのではないか」と思わせてくれます。尽きることのない愛情と、並大抵ではない10人もの子・孫たちを育てたプライド。マンマが誰よりも強いのには、間違いなく理由があったのです。

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学生時代にローマ・サピエンツァ大学に留学し、シチリア出身マンマが統べる大家族にてホームステイ。今は日系企業で国際提供業務に従事する社会人3年目。イタリアで仕事をする機会を細々と狙っています。サザンオールスターズとサンドウィッチマンが大好き。

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