北イタリア、ピエモンテ州の州都トリノ。フランスとの国境に近くフランス文化の影響を受けており、洗練されて落ち着いた街です。トリノ大学やトリノ工科大学、アルベルティーナ美術学校などがあり、学生の街という側面もあります。そんな街トリノで大学に通う筆者が、現地のキャンパスライフについてお届けします。
キャンパス編
通いたい!芸術的なキャンパス
イタリアといえば芸術の国。コロッセオやピサの斜塔、ドゥオーモなどの世界的に有名な建築物の数々はもちろん美しいのですが、実は大学のキャンパスもとても美しいんです。
これはトリノ大学のキャンパスのひとつ、Palazzo del Rettorato。トリノ大学の本部でもあり、まるで宮殿のようなキャンパス。足を踏み入れるだけでその美しさに心が踊ります。
毎年秋にトリノ大学VSトリノ工科大学でボートレースが行われるのですが、その決起集会もこのキャンパスで行われました。
これ、一体なんだと思いますか?実はこれ、Palazzo Gorresioというキャンパスの教室の天井なんです。教室の天井にこんなに立派な装飾を施してしまうなんて、さすが芸術の国イタリアという感じですよね。とても綺麗で、授業中にもつい目を奪われてしまいます。
Palazzo del Rettoratoのようにまるで宮殿のようなキャンパスがある一方、このように近未来的でスタイリッシュなキャンパスがあるのもトリノ大学の魅力の一つ。
これはCampus Luigi Einaudiというキャンパスで、入り口にはトリノのシンボルであるtoro(雄牛)の巨大な像が建てられています。このキャンパスでは主に政治や経済、法についての授業などが行われています。
これはトリノ工科大学のキャンパスのひとつ、ヴァレンティーノ城。筆者はトリノ大学で勉強しているためこのキャンパスには縁がないのですが、とても美しいキャンパスなので併せて紹介せずにはいられませんでした。
ここは世界遺産にも登録されているお城で、元々はエマヌエーレ・フィリベルトが所有していましたが、現在はトリノ工科大学のキャンパスとなり、建築の授業が行われています。お城で授業が受けられるなんてとてもロマンチックだと思いませんか?
たどり着けない!キャンパスはどこ?
トリノ大学はトリノとピエモンテの主要地にいくつものキャンパスを持っていて、その建物数はなんと120もに及びます。そのため、授業によってキャンパスが違うなんていうのは当たり前。
日本で通っていた大学に主に1つしかキャンパスがなかった筆者は、最初はこの環境に大いに戸惑いました。授業が行われるキャンパスを探してさまよい、2つも間違ったキャンパスを訪れ、3つ目にしてようやく正しいキャンパスにたどり着いたなんていう苦い経験も。
もう缶コーヒーには戻れない!本場のコーヒーマシン
キャンパス各所にペットボトル飲料やスナックの自動販売機と合わせて置いてあるのがこのコーヒーマシン。本格的なエスプレッソやカプチーノ、カフェマキアートなどを40セント(日本円で約50円)ほどで気軽に飲むことができるんです。しかも美味しい。
さすがコーヒーの国イタリアですよね。日本の大学のキャンパスにないのが本当に惜しいぐらい、イタリアに留学したらヘビーユーザーになること間違いなしのマシンです。
授業編
休憩時間がない?トリノ大学の時間割
日本の大学では一般的に、授業のあと10〜15分ほど休憩時間があり、それからまた次の授業が始まります。ですがここイタリアでは、授業間の休憩時間はおろか、昼休憩の時間もないんです。例えば8〜10時の授業、10〜12時の授業、12〜14時の授業、というようにです。
休憩時間がなくて、どうやって次の教室へと移動するのか?筆者も初めは疑問に思いました。ですが実はイタリアの大学では、授業時間いっぱい授業をすることはほぼなく、基本的に10分〜15分早く終わるんです。
そして始まるのも基本的に遅く、10分〜20分は当たり前に遅れて始まります。そのため結果的に、移動などの時間は十分にあることになります。加えて現地の学生には、教授は生徒の遅刻について全然気にしないということも言われました。
このように時間に几帳面になりすぎず、ゆとりのある感じはイタリアの魅力的なところですよね。
日本とは違う!?イタリアの授業風景
トリノ大学で授業を受けていてまず気付いたのが、授業中の質問がとても盛んだということ。授業中には多くの生徒が挙手をし、たとえ大教室の一番後ろに座っていても、教室中に聞こえる大きな声で教授に質問をします。
筆者が日本の大学に通っていたときは、授業中に多くの生徒が挙手して活発に質問をするなんていうことはあまりなかったので、イタリアの学生たちの積極的な授業態度に感心しました。
そして実は、挙手の仕方も日本とイタリアでは違います。日本では挙手をするとき、手をパーの形にして上げますよね。ですがイタリアでは、人差し指だけを上げるんです。ちょうど天に向かって指をさすときのような手の形です。
日本のような挙手の仕方をした場合ナチス式の敬礼を想起させてしまうため、このような挙手の仕方をイタリアではしているようです。最初に見たときは何だろう?と驚きました。
授業中に堂々と漫画が読める!?ユニークな授業
実はトリノ大学では、学部・大学院ともに日本語を学ぶ授業が開講されており、大教室が埋まるほど多くの現地の学生が日本語を学んでいます。
ひらがなやカタカナなど基本的な文字の勉強から始まり、大学院の授業ともなればかなり高度な内容にも。その大学院のコースで開講されているのが、漫画翻訳の授業です。
日本の漫画をイタリア語にどう翻訳するかを学ぶことができるのがこの授業。漫画の翻訳論についての講義と漫画翻訳の実践が行われています。日本語のオノマトペや、関西弁のキャラクターのセリフをどう翻訳するかなど、難しく頭を悩まされますが、とても面白い授業です。
授業を担当する教授は、暗殺教室やデスノート、GANTZなど、多くの人気漫画をイタリア語に翻訳してきた実績の持ち主。そんなプロの翻訳家でもある教授から直に指導を受けられるという点でもとても貴重な、ユニークな授業です。
イタリアの大学を卒業するってどんな感じ?
イタリアの大学は日本とは違い、3年制です。ですが卒業するのに3年ではなく4年、5年とかかる人も多くいます。その理由のひとつに、日本の大学とは異なるテストの制度があります。
日本では必修の科目でなければ、テストに合格することができずに単位を落としても、GPAが下がるだけで卒業には影響しません。
しかしイタリアでは、受けたテストすべてに合格するまで卒業できません。つまり、合格しなかったテストは合格するまで受け続けなければならないんです。このことが卒業を難しくしているようです。
ですが難しい分、卒業するときの感動はひとしおです。実はイタリアの大学では、日本のように全員まとめて同じ日に卒業式が行われるわけではありません。
学生がそれぞれのタイミングで卒業論文を発表し、別々の日に卒業します。そのため、日々あちらこちらで卒業している学生を見かけます。
イタリアの大学では卒業の日に、月桂樹の葉でできた冠、月桂冠をかぶります。月桂冠をかぶりとても嬉しそうにしている学生の周りをその友人や家族が囲って紙吹雪とともにお祝いしている、そんな幸せな光景を道端でよく見られるというのも、学生が多いトリノの街の良いところです。
おまけに 学食編
イタリアの学食!MENSA
キャンパスの近くにはMENSAという学食があり、多くの学生が昼食や夕食をここでとっています。MENSAにはピザ窯があって、ピザを注文するとその場で生地を伸ばして焼いてくれます。学食にピザ窯があるなんて、何ともイタリアらしいですよね。
上の写真はキノコとサラミのピザです。一応決まったピザのメニューはあるのですが、自分がのせたい具材を伝えれば、その具材の組み合わせでもピザを作ってくれます。
筆者も最初はメニューから選んでいたのですが、周囲のイタリア人が自分の好きな具材の組み合わせで作ってもらっているのを見て、今では自分の好きなピザを作ってもらっています。こういうイタリアのサービスの柔軟性のあるところが素敵だなあと感じます。
ピザの他に、パスタやごはんを選ぶこともできます。ピザのときはピザ、ポテトあるいはサラダ、デザート(フルーツやヨーグルト、タルトなどのお菓子)。パスタやごはんのときは、パスタあるいはごはん、おかず(肉団子や魚のフリットなど)、サラダ、デザートというメニューです。
そしてこれだけ充実したメニューで、なんと値段は1.8ユーロ(約220円)。美味しく、それでいてこんなにも安いMENSAはトリノの学生たちの最強の味方です。
さいごに
今回はトリノ大学のキャンパスライフについて紹介しましたが、いかがだったでしょうか?紹介したように、同じ大学生でもそのキャンパスライフは日本とイタリアでさまざまな違いがあります。ですが授業が終わって友達とカフェでコーヒーを飲みながらする会話は、授業でかっこいい人を見つけただとか、やっぱり日本もイタリアも同じだったり。
日本から遠く離れたイタリア・トリノ大学のキャンパスライフについて、この記事を読んで少しでも思いを巡らせていただけたなら幸いです。
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