はじめに
アートマネジメントを学んでみたい。イタリアで暮らしてみたい。そう考えていたわたしが縁あって2018年秋に正規留学したのが英語で履修できるボローニャ大学の修士課程。前回までは個人的な留学動機や卒業までの体験談をお伝えしてきました。
今回はもうすこし一般的な切り口で、イタリア国立大学の特徴を日本人留学生の視点でお話しします。
前回までのお話はこちら
イタリア語ができなくても?イタリアの大学に正規留学【連載第一回】
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イタリア語ができなくても?イタリアの大学に正規留学 【連載第二回】 学生生活編①
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イタリアの大学での学生生活
日本の大学との違い
わたしが日本で大学生をしていたのはもう10年以上前のことですが、イタリアで送った久しぶりの学生生活で感じた違いについてまとめてみました。時代とともに日本の大学教育も変わっているかもしれませんし学士課程と修士課程の違いもあるでしょうから、もし一概にそうとは言えない、という点があれば悪しからずご了承ください。
成績評価
イタリアの大学では30点満点評価で成績を付けられます。30点の上にはCum Laudeというものがあり、特に優れた学生へ稀に与えられます。18点未満が落第で再試験ですが、卒業時に全科目の平均点が重要となるため25点以下だとパスしても再試験を申し出る学生も少なくありません。
試験システム
自ら再試験を?そうなんです。イタリアでは各科目複数回試験が実施され、一回目に落ちたり満足いく点がもらえなかったりした場合にセカンドチャンス、さらにそれ以上のチャンスがあります。
また複数の試験が重なっていたり予定が立て込んでいたりすると、一回目は見送り二回目以降の試験に初挑戦する生徒もいます。
自分でベストパフォーマンスができる時期を選べるのは利点ですが、その分講義を受けた期間から数か月、場合によっては半年と時間が経ってからの試験になるので学んだことの記憶が薄れがち。余裕があればなるべく講義終了から間もない一回目に受けることが無難です。
試験形式は口頭、筆記(論述、記述)、論文提出と多岐にわたりますが、いずれも出題範囲がとても広く何週間もの試験勉強が欠かせません。図書館で勉強する学生も多く、試験期間中はなかなか席が取れないほど混み合います。
長い?講義時間
日本の大学の授業は基本的に一コマ90分だったでしょうか。対してイタリアの大学は中休憩をはさんで一コマ2~3時間です。
でも、いつも時間通りに講義が始まるわけではありません。半時間平然と遅れてくる教授もいました。そして「このあと用事があるから」、とか「もうシラバスに書いていることは話したから今日はここまで!」と数十分、時には1時間早く切り上げられてしまうこともありました。
先生が来ない、生徒がいない
そんな時間にルーズなところはまだかわいいもの。待てど暮らせど教授が現れず、大学事務に問い合わせたら講義時間の変更が生徒に伝わっていなかった。また逆に教授だけに変更が伝わっておらず空っぽの教室に先生だけ待ちぼうけ。なんてことも一度や二度ではありませんでした。
予定はすべてオンラインで
講義スケジュールはすべてオンラインで掲示、更新がされます。時代変わって日本の大学も今はそうなんでしょうか。便利ですが、講義直前にも確認しないと先ほどの通り空振りなんてことも。
お手上げなのは、確認したところでシステムに変更が反映されていなかった場合。何度かありました。往復3時間かけて通うクラスメイトがいて、本当に気の毒でした。
今日もまた、講義が始められない
さて、ここでクイズです。先生も生徒もばっちり時間通りにそろいました。なのに講義が始められない。なぜでしょう?
それは、講義室が施錠されたままだったから。
管理人さんのうっかりか、またまた連絡ミスか。そんなこともしばしばありました。
日本では施設も何もかも恵まれ行き届いていた私立大学に通っていたわたし。学内でコピー機が使えない、暖房が効かない、お手洗いが汚いなど、学費が良心的な国立大学に贅沢は言えませんが、講義をめぐるいろんなハプニングにはイタリアのお国柄を見た気がしました。
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外国人ならではのもどかしさ
試験が受けられない!?
講義が予定通りにきっちり受けられないのはまだ序の口。EU圏外からの長期留学生は滞在許可証というものを取得する必要がありますが、これがなかなかストレスのもととなります。
在学中は更新含め3度手続きをしてきましたが、いずれも申請してから受け取りまでおよそ半年~10か月の長期戦でした。有効な許可証がないまま滞在を続けていると、本人に非がなくてもいろんな場面で不利な扱いを受けることがあります。
たとえば学生の立場で特に厄介だったのが、期末試験が受けられなくなってしまうこと。新しい許可証の写しを大学に届け出るまでは在学生としての身分が凍結されてしまい、試験の申し込みができないからです。
留学生の滞在許可がなかなか降りないことは大学側も承知しており猶予期間を置いてはくれますが、その猶予期間すら何度も切れてしまい、そのたびに学部の事務へ凍結取り消しの依頼をしなければなりませんでした。
この手続きがまた面倒で、メールを送ってもなしのつぶて。直接出向いたほうが話が早いですが窓口が空いているのは一日数時間と限られており、講義が詰まっているとなかなか行けません。やっと出向いたところでいつも混んでいて待たされます。
無事受けられるかもわからない試験のために寝る暇も惜しんで勉強しているとき、こういったことが余計にストレスとなっていました。
やっぱりイタリア語、できないと不便
先ほどの窓口ですが、英語で応対してくれることは稀。また、学費関係の重要なものをはじめとする様々な事務手続きの案内がイタリア語でしか受けられないことも。頻繁に利用していた学内図書館では、本を借りたり予約したりするのにイタリア語が欠かせませんでした。
このように、英語での履修コースが複数開設されていても大学のシステム全体がバイリンガル対応というわけではなく、これでちゃんと伝わってるのかな?これってそういう意味で合ってるのかな?と自分の足りない語学力によくドキドキハラハラしていました。
また、講義の一環で訪れる視察先での説明などはほぼ常にイタリア語。イタリア人のクラスメイトが英語で要約してくれることもありましたが、もっとイタリア語がわかったらどんなに良いだろうと思いました。
合格が決まる前からマイペースに勉強していたイタリア語ですが、初級終了にも届かないようなレベルで現地入りしてしまい、大学の外ではさらにいろんな苦労が待ち構えていました。それは次回お話ししたいと思います。
次回予告
いかがでしたか。今回は英語での留学という立場も踏まえて、イタリアで大学院生をしてみて驚いたことや戸惑ったことをお話ししました。
次回は大学を一歩出たら常にたどたどしいイタリア語で奮闘していた日々のあれこれを、ボローニャの生活事情とともにお届けします。どうぞお楽しみに。