17世紀から続く伝統的製法!シチリアのモディカチョコレート

17世紀から続く伝統的製法!シチリアのモディカチョコレート

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国際線客室乗務員をしていた頃、仕事で訪れたローマに一目惚れ。その後社内留学システムを利用して渡伊。結局退職して、本格的にイタリアに居を構える。フィレンツェで数年暮らした後は、縁あってシチリア島へ引越しし現在に至る。フリーランスで通訳、コーディネーター、ライター稼業を営みながら、シチリアのスローな生活を楽しんでいる。

前回ストリートフード、主にシチリア島西部に位置するパレルモのストリートフードをご紹介しました。

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そして今回は、島の東側へお連れ致します。ラグーザ県のモディカ(Modica)、バロック建築で飾れている、美しい町です。

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シチリア東部の町、モディカの名産

モディカのドゥオーモ
モディカのドゥオーモ

ここには昔ながらの製法をしっかりと守り続けて作られるチョコレートがあります。その名は「モディカのチョコレート」、そのまんまですね。シャンパン地方で作られる物だけがシャンパンと呼ばれるように、この「モディカチョコレート」もそれ自体がブランドとなっています。

日本にも輸入されているので、ご存知の方も多いかと思います。

普通のチョコレートとの違い

そのモディカチョコレートとは、一体どんな物なのでしょうか?普通のチョコレートとの違いは何なのでしょうか?まず挙げられるのは、素材がカカオ、砂糖、スパイス(香料)のみであることです。人工的な物は一切使用されていません。次に低温で作業されていると言うことです。これだけでは分かり難いですね、徐々に説明致します。

まずカカオの実を収穫したら、外側の硬い殻を割り中の種を取り出します。これはイタリア語でファーヴェ(fave、空豆という意味)と呼ばれています。

カカオの種(ファーヴェ)

取り出した種はまず発酵させますが、この発酵過程で最終的なチョコレートの風味が決まると言われているので、とても大切な作業です。その後種を乾燥させます。この時点でカカオは大量のポリフェノールを含んでいますが、この状態のポリフェノールは人体が吸収する事ができません。

乾燥させた種は、コーヒーの焙煎と同様に15〜20分煎ります。この作業も非常に大切です。表面を焦がす事なく、中心部までしっかりと火を通すのがポイントです。この焙煎過程でカカオの全ての風味が引き出され、ポリフェノールは人体が吸収できる状態に変化します。

次に焙煎された種を挽き練り上げていきます。カカオは油分を含んでいるので、挽いても粉末状にはならずねっとりとした状態になります。これがチョコレートを作る素、カカオマスです。何とこの状態で10年も保存が効くと言うのですから驚きです。

種を挽く昔の道具

そしてモディカチョコレートは、その特徴の1番である、カカオマス、砂糖、香料をミックスするだけで作られるのです。通常大量生産されているチョコレート(一般の市販品)は、ここに舌触りを良くする、要するに滑らかにする為にココアバターと乳剤としての大豆レシチンが加えられます。

第2の特徴である「低温で作業」という事ですが、3つの素材を混ぜる時に42度以下の温度で作業されます。この温度だと砂糖が完全に溶けない為、少しざらつく食感が残ります。

口に入れた時に溶けにくく、砂糖のジャリッとした感覚がありますから、市販品のチョコレートに慣れている方には少々違和感があるのではないでしょうか。まずカカオマスと砂糖を火にかけ、カカオが溶けた所でシナモン、バニラなどの香料を加えます。そして型に入れ、冷蔵庫で冷やせば出来上がり。

カカオの由来について

カカオの実

カカオの由来は中米、アスティカ帝国だと言われています。アスティカの聖職者や位の高い人たちは、カカオに赤く苦味と辛味のあるスパイスを加えて溶かして飲み物として、たしなんでいました。彼らはこの飲み物が史上最高の飲み物であると信じ、スペイン人に征服された時に献上しました。スペイン人は最初はその味に戸惑ったもののすぐにエネルギー増進の効力があると気付き、消費量が増え、カカオの栽培を拡張しました。

その後勿論ヨーロッパに渡ったわけですが、17世紀、シチリア島がスペイン統治下にあった時にシチリアへ伝わったのです。スペインでは貴族を中心に広まったのですが、当時モディカはシチリアでも最も重要な都市でした。スペイン統治下ではありましたが広大な伯爵領を中心に、政治的、経済的自治権を持っていました。そして他のシチリアのどの街よりもずっと早い時期に、農民に長い期間の(100年など)定期借地権を与えていました。

その為、1700年代には早くも裕福な農民の市民層が出来上がりチョコレートを飲むなどの貴族の習慣を生活に取り入れていたのです。パレルモの港に輸入されたカカオの実はモディカに運ばれ、自分の家に豆挽きの職人さんを読んでチョコレート・タブレットに成形され、一年中保管され、人々はお湯に溶かして「ホットチョコレート」として飲んでいました。1本100gのタブレットはチョコレートドリンク4杯分になります。こうして貴族の特権ではなく市民全体に溶け込んだ為、伝統的なアステカ先住民のレシピが今に受け継げられたのでした。

むしろある時期から、非健常者や貧しい人がカカオの実を挽く仕事を受け持つようになり、他の町には存在しない仕事が供給された事も更なる町の発展につながったと言われています。モディカには長年この仕事に携わった、90代のお爺ちゃまがいらっしゃるそうですよ、お目に掛かってみたいなぁ。

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モディカのチョコレート博物館

モディカの町にはチョコレート屋さんが30軒以上ありますし、チョコレートの博物館も存在します。

その中でも1番の老舗は、Antica Dolceria Bonajuto (アンティーカ・ドルチェリーア・ボナユート)です。1880年創業の家族営業のお店ですが、木材をふんだんに使った店内は素晴らしく、いつ行っても満員御礼。

ガラス張りになった店の奥でチョコレートやビスコッティなどを仕込んでいるので、作業を覗く事も可能です。

モディカチョコレートはシナモンとバニラ味が伝統的な物ですがその他にも色々とあり、唐辛子味で話題になり知名度が上がりました。オレンジ、レモン、ピスタチオ・・・、最近ではトラパニ地方の塩味まで出ています。

このお店では全て味見が出来るので、気に入ったフレーバを見つける事が出来るでしょう。その他唐辛子チョコレートのリキュール、ホットチョコレート用の刻んだチョコレート、ピスコッティなども販売しています。

面白いのはチョコレートと牛肉入りのピスコッティ、ムパティッギ(‘Mpatigghi)という物。牛のひき肉とカカオで作ります。実際肉の味はしませんが。

これは昔修道院で作られていた物で(ほとんどのドルチェは修道院生まれ)、冷蔵庫のない時代の肉の保存様式だったとか、四旬節の(復活祭の前40日間)肉断ちをしなければいけなかった期間に隠れて肉を食べる為だとか、言われは幾つかありますが本当のところは判明していません。肉を使っているのに日持ちすると言うのが不思議であります。

ムパティッギを作っているところ

さいごに

ミルクチョコレートを好む方には向かないかもしれませんが、ビター好みの方には気に入って頂けると思います。そして溶けないのでお土産にもぴったりです。モディカで本来のチョコレートの味を楽しんでは如何でしょうか。

美味しそう....
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