ウンブリア州の都市ナルニの゛鋼鉄ジーグ通り゛計画
HUFFPOST.ITの記事によると、ウンブリア州テルニ県にあるコムーネ(基礎自治体)ナルニで、ストリートの名称を”鋼鉄ジーグ通り(Via JEEG ROBOT d’accaiao)”にしようという活動が行われているということです。
『鋼鉄ジーグ』は、日本で1975年からテレビ放送された永井豪原作のアニメで、イタリアでは1979年に放送されて今もイタリア国内でも根強いファンがいるロボット・アニメ作品になります。
そんな『鋼鉄ジーグ』の名を道路に付けるという提案がナルニで上がっており、インターネット上で署名運動も行われているということです。
アンドロイド保護欧州組織(Deta)の提案
この”鋼鉄ジーグ通り”という案は、Deta(Dipartimento Europeo Tutela Androidi)というアンドロイド保護欧州組織によるもので、ネット上の署名活動も同組織が行なっています。
”鋼鉄ジーグ通り”は、人間とロボットの包摂と情愛を示し、ヨーロッパ初のロボットに捧げられた道にすることを目指しているようです。
このプロジェクトは、すでにHackLab Terniというテルニにあるエレクトロニクスとサイエンスとアートのための団体やナルニ Comics & Gamesの組織委員会などから支持を得ています。
HUFFPOST.ITの記事によると、ナルニのフランチェスコ・デ・レボッティ(Francesco De Rebotti)市長は、”鋼鉄ジーグ通り”が実現する可能性を否定してはいないということです。
”鋼鉄ジーグ通り”の提案者と直接コンタクトを取ったのは、同コムーネで文化、観光、スポーツイベントを担当するロレンツォ・ルカレッリ(Lorenzo Lucarelli)議員だそうで、ルカレッリ氏は、このアイデアに興味を示し、ここから様々な展開が期待でき、ナルニの名を広める契機になるかもしれないと考えているようです。
しかし、”鋼鉄ジーグ通り”を実際に道路名として採用するかどうかは、市議会が最終的に決定することになるということです。
なぜ『鋼鉄ジーグ』なのか
アニメ作品から実際のストリート名を付けるとして、なぜ『鋼鉄ジーグ』が選ばれたのでしょうか。
前述したようにアニメ『鋼鉄ジーグ』は、イタリアで1979年に放送されています。とても人気が高く、イタリア版のオープニングテーマ曲も話題になったようです。
1970年代後半から1980年代前半にかけてイタリアで放送された永井豪原作のロボット・アニメは、『鋼鉄ジーグ』を始め、『UFOロボ グレンダイザー』(イタリアでは『アトラスUFOロボ(Atlas UFO Robot)』のタイトルで放送)、『グレートマジンガー』、『マジンガーZ』などがあり、イタリアの子どもたちを魅了していたようです。
そんなイタリアでも大人気の日本のロボット・アニメの中で『鋼鉄ジーグ』が今回、ストリート名の候補として選ばれたのは、2015年制作のイタリア映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ(Lo chiamavano Jeeg Robot)』の影響も大きいかもしれません。
イタリア映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』の大ヒット
1976年生まれのガブリエーレ・マイネッティ(Gabriele Mainetti)監督の長編第一作目になる『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は、イタリアで大ヒットし、イタリアのアカデミー賞と称されるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞でも新人監督賞など7部門を受賞しています。
この映画の舞台は、テロの恐怖に怯えるローマ郊外の街で、主人公のエンツォは、底辺で荒れた野放図な生活を送る外れ者。このあぶれ者であるエンツォが、ひょんなことから超人的な力を得ることになります。
このエンツォに敵対するのが、マフィア型犯罪集団の下部組織のリーダーであるジンガロ。彼は、SNSの「いいね!」の数を過剰に気にするようなタイプで自分の小さな組織も上手くまとめることができない街のチンピラのような人物であり、エンツォと同じ外れ者。
マイネッティ監督は、幼い頃から日本のアニメの大ファンであるということで、昔の多くの日本のアニメがそうだったように、この映画も単純な勧善懲悪ものにはなっていないようです。
このエンツォとジンガロの闘いの中で、どこにアニメ『鋼鉄ジーグ』が出てくるかというと、ヒロインの女性アレッシアがアニメ『鋼鉄ジーグ』の大ファンで、このアニメが映画の中で重要な位置を占めることになります。
ヒロインのアレッシアは、アニメ『鋼鉄ジーグ』以外は何もないというほどにこのアニメを生きる拠りどころとしており、超人的な力を得たエンツォをこのアニメの主人公だと信じ込み、予告映像にもあるように「父さんや人類を救うの」などとエンツォに語りかけます。
映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』 / 予告映像 Youtube
エンツォは、他人、まして人類を救うことになど関心があるはずもないのですが、アレッシアのためだけに、正義心などと全く無縁なのに敢えて彼女が語るアニメ『鋼鉄ジーグ』の”物語”を身に引き受けようとします。そこにエンツォの無垢な愛が現われているようで、この映画が単なるダークヒーローものとしては終わらないという感じを引き起こします。
また、似た者同士であるようにも見えるエンツォとジンガロの対決もいわゆる社会で言われるところの善とか悪とかとは関係ないところで行われているように思えてきて大変興味深いです。
この映画『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』は、2017年に日本でも劇場公開されており、現在、ブルーレイやDVDも発売され、また、Amazonプライムビデオでも視聴できますので、未見の方は是非ご覧になってみてください。
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ちなみに、Hotcorn.comの記事によると、マイネッティ監督の次回作は、『Freaks Out』という第二次世界大戦中のサーカス団の物語で、制作は難航しているそうですが2020年中には公開される予定だということです。なお、この映画『Freaks Out』は、1932年の映画『フリークス』や1985年の映画『グーニーズ』からモチーフの影響を受けているそうです。
マイネッティ監督の次回作『Freaks Out』 / Instagram
さいごに
イタリアで大人気のアニメ『鋼鉄ジーグ』。実際にナルニの街の通りの名称として『鋼鉄ジーグ』が採用されるようなことがあれば、イタリアを訪れた際に゛鋼鉄ジーグ通り゛に立ち寄ってみるのも面白いかもしれません。
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