【ネタバレ有】『人生、ここにあり!』笑える映画にしてしまう国・イタリア

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ずっと観たかったのに、なかなか動画配信サービスでの配信が開始されず、なかなか観ることができなかったイタリア映画『人生、ここにあり!』が、Amazonプライムビデオで配信開始していました!この記事は、映画を観た後、もしくはネタバレもオッケーという方に読んでいただく記事です。

こんな映画です

  • イタリアで超大ヒットを記録した笑って泣ける作品
  • 実話に基づいた、1983年の社会協同組合を取り上げています
  • みんなで力を合わせ頑張って仕事に向きあう様が素晴らしい

映画情報

・原題:Si può fare

・制作年:2008

・制作国:イタリア

・監督:ジュリオ・マンフレドニア

・出演:クラウディオ・ビジオ、アニータ・カブリオーリ、ジュゼッペ・バッティストン

Amazon Primeで視聴

【ネタバレ無】実話に基づく『人生、ここにあり!』笑って泣けるコメディ

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ネタバレがない紹介記事も用意しております。

コメディ映画『人生、ここにあり!』について

あらすじ

1978年、バザリア法という法律の制定により、イタリア国内の精神病院が次々に閉鎖されました。「自由こそ治療だ!」という考え方から、それまで病院に閉じ込められ、薬を過剰投与され、活気を無くし、人としての扱いを受けていなかった患者たちを、一般社会で生活させるため地域に戻すことになりました。

彼らの受け皿になったのが、社会協同組合。1983年、ミラノ。労働闘争に熱心だった主人公のネッロは、あまりにも急進的な思想のために問題児扱いされ、精神病院廃止によって退院させられた人々が集う「協同組合180(Cooperativa 180)」にマネージャーとして配属されることに。

精神を病んだ人びとの言動に、初めはおっかなびっくりなネッロでしたが、労働組合が大事にする「みなで考え、みなで行動する」という原理原則に基づき、これまでの無為で退屈な仕事から、全員がやりがいを感じられる仕事へ変え、それぞれが幸せになれる環境を整えました。

だが事業が大きくなっていくうちに、ネッロの心と彼らの心の間に溝が生まれていき、ある事件をキッカケにして、事業は解散の危機に陥る。果たしてネッロは、全員を救うことができるのか―――。

バザリア法について

フランコ・バザリア

ここで、先ほどよりも少し詳しく、バザリア法についても説明します。通称バザリア法(Legge Basaglia)、正式名称 イタリア精神保健法は、1978年5月に公布された法律。

イタリアの精神科医 フランコ・バザリアが初めに精神病院の廃絶を唱えたことから、彼の名前にちなんだ法律となりました。こうした法律は、当時世界初のことでした。

具体的この法律では、精神科病院の新設/新規入院と1980年末以降の再入院を禁止し、そして、治療は地域精神保健サービス機関や保険組合などが行い、治療も自由意志が尊重されたのです。

どうしても必要な場合は入院が許可されましたが、その際も保険担当長の許可、市長の裁判所への通達などが義務付けられており、これまでのように医師の独断で強制的に精神病院に収容させることはできなくなりました。

こうした法律が実現した背景には、70年代のイタリア全土での労働運動が非常に活発になったから。本筋と外れてしまうのでこの記事では詳しく述べませんが、そうした労働組合活動、つまり労働者同士が繋がりながら、支え助け合っていく動きが、こうした社会福祉運動に呼応する形で合流、さらには地域内の密接な相互扶助のネットワークに繋がっていったのです。

とはいえ、心に病を抱えた人びとの行く先が突如として精神病院ではなく、少しの専門家と多くの素人しかいない組合に委ねられたため、その対応は決して簡単なことではありませんでした。

こうした施設の一つが、この映画に登場し、主人公であるネッロが派遣されることになった組合なのです。

実話ベースがすごい

ノンチェッロ協同組合のトップページ(https://www.coopnoncello.it

前の記事でも紹介いたしましたが、この「協同組合180」は、実際に存在する「ノンチェッロ協同組合(Cooperativo Noncello)」をモチーフにしています。実際に彼らも、映画と同じく寄木貼りの仕事をしていました。

その中でも特に驚いたエピソードを一つ。欲求不満な男たちのために、ニッロが2人の娼婦を買うシーンがありましたよね?そして、そのためのお金をEC(ヨーロッパ共同体)の助成金で賄おうとしています。コレ、実は本当のことなのです!さすがにこの部分はフィクションだと思っていたので、ビックリしました...。

周りの人の理解のなさとジージョの死

80年代の物語ともあって、ネッロの周りの人びとは、こうした障害のある人たちの活躍に対して、かなり厳しい目を向けてきています。

大人になりたいジージョ

ジージョ(左)とルカ(右)

信じられないほど悲しい気持ちになったのが、やはりジージョの死。母親からは障害があることでいつまでも子ども扱いされてきた彼は、人と付き合うことが苦手な男性。

寄木貼りの仕事の依頼主であった女性に恋に落ち、初めてのデートとキスをします。しかし、一緒に行った初めてのクラブで起きた、心ない出来事・トラブルによって、女性は軽い気持ちで自分と一緒にいるだけだったことを知ってしまいます。

彼女は「こんなに頭のおかしい人だとは知らなかった」「たった一度キスをしただけの関係」「こんな頭のおかしい人に罪を問うなんてかわいそう。だからなんとか許してあげて欲しい」と、警察で情状酌量を懇願するのですが、その声は聴取室の外まで漏れてしまう。外にいたジージョはそれを聞き、深く深く傷つき、翌朝、自殺してしまうのです。

「哀れみ」の怖さ

これまでの暗い人生から、仕事も得て、好きになれる人も初めてできて、やっと子どもではない一人の「普通の」人間になれる、と思っていたジージョの希望を一瞬で砕く、周囲の人の「哀れみ」。

「哀れみ」を向けることの是非は、ここで議論することではないかと思いますが、舞台の1983年から約40年が経った今も、全く解決することができない根深い問題だと思います。

「手作りの料理は毒」は母親の言いつけ?

あとジージョが冒頭から言っている、「手づくりの料理には毒が入っている」という妄信は、いったい誰に埋め込まれたのでしょうか?彼は、過去に4年間ずっと引きこもっていたことがあると医師が明かしており、その間はずっと母親が、過保護なまでに面倒を見てきたものと推測されます。

だとすれば、そうしたセリフを言うのは、近くに居続けた母親であり、料理などを全くしない言い訳として、彼女がこの言葉を使っていた可能性が高いのではないでしょうか。そして、この「手づくりの料理には毒が入っている」という言葉を遠因として、ジージョは自殺に追い込まれることになるのです。

医師の改心でホッとする

物語を通して、ネッロのいわゆる「敵役」に近い存在だった医師。患者が暴れたり余計なトラブルを起こしたりするのを防ぐため、過剰なまでな薬物投与で彼らを薬漬けにし、日常生活に甚大な副作用をもたらしていました。

彼はずっと寄木事業に反対していましたが、最後の最後で、物語の中で唯一彼だけが「改心」したことが救いとなり、物語がキレイに昇華できていると感じました。

これ、笑っていいんだよね?と思う描写たち

逆手にとって笑わせてくる

この映画は、障害というかなりシリアスな内容を扱いながら、コメディ/笑いへの昇華のさせ方がとても秀逸で、イタリア映画らしさが出ていると思います。

障害がある=笑ってはいけない、というイメージがずっと私にありました。ただ、そこを逆手にとって、敢えて笑えるシーンとして全力を注いでくる。家で一人で観たのですが、「これ、笑っていいシーンだよね?」と周囲を見たくなってしまいます。

例えば...

  • もともとF1の現場で働いていて、自動車事故が怖くなってしまった人が、工事現場を通る時に事故が起きるのが怖くて、終わるまで数日間待っていようとする。
  • 幻覚の恋人からの電話をずっと待っている女性に、新会社の電話番の役割→電話応対がとっても上手で、セクシーに
  • 全く喋れない障害の人に、新会社の理事長の役割を→無言で仕事の交渉相手に凄みを効かせるサメのような理事長に
  • 「成功も失敗もみんなで分かち合おう」というネッロの言葉を間に受けた掛け合い→「お前はバカ野郎だ」「違う!全部みんなで分かち合うんだ!」「お前はバカだ」「お前もバカだ」「バーカ!」とお互いに言い合うシーン

文章に起こして思ったのですが、この感覚を伝えるだけの文章力が私にはありませんでした。文字に起こすと、あまりいい印象にならないのです。ただこの感覚は実際に観ていただければ、分かっていただけるとは思います。

この、シリアスなテーマでさえ笑いに変えてしまう力はすごい...。一方でシリアスな面は打って変わってしんとした雰囲気へ、伝えたいことはしっかり伝えてしまうのは、イタリア・コメディ映画の真骨頂だと、私は考えます。

イタリアの映画館ではどんな反応だったのかなぁ?

ご存知の通り、日本の映画館は静かさを求められる。一方イタリアは、かなり大きな笑い声が起きたり、時には拍手や指笛が起きたりと、すごく和気あいあいとした雰囲気があります。

イタリアの友人と映画に行くと「ここ面白いね」「あいつが犯人じゃね?」などとけっこう話しかけてきて驚きました(笑)

なので、実際に生でこの映画をシネマで観たイタリア人は、どんな反応だったのかと、非常に気になりますね。

ただ、本国での評価をお伝えしておくと、54週という超ロングランを記録して、異例の大ヒットとなり、社会現象にまで発展しました。

さいごに

この映画を発見するタイミングが遅すぎたかもしれませんが、『人生、ここにあり!』をネタバレ有で紹介させていただきました。現在は、DVDを買わなくても、Amazonプライムで視聴できるので、是非観てみてくださいね!

こんな映画です

  • イタリアで超大ヒットを記録した笑って泣ける作品
  • 実話に基づいた、1983年の社会協同組合を取り上げています
  • みんなで力を合わせ頑張って仕事に向きあう様が素晴らしい

映画情報

・原題:Si può fare

・制作年:2008

・制作国:イタリア

・監督:ジュリオ・マンフレドニア

・出演:クラウディオ・ビジオ、アニータ・カブリオーリ、ジュゼッペ・バッティストン

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ゆうさん

『BUONO!ITALIA』代表をしています。 1年間ローマ大学に留学し、シチリア出身マンマが統べる大家族にてホームステイ。卒論では、『1980年代以降のイタリア中小企業論』について考えました。社会人1年目。サイトSNSはこちら↓より。

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