<お正月イタリア映画特集>年末年始にはこれがおすすめ!『輝ける青春』(前編)

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イタリア人の夫と息子と東京暮らし。日本にいながらもイタリアの食卓を再現したくて研究中。またイタリアの小説や映画を日本にもっと普及できればと、日々記事を書いています。

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・各映画のあらすじ・感想

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『輝ける青春』(2003年)はある一家の60年代から21世期に至るまでの36年間を、366分で綴った大河ドラマです(前編、後編含む)。濃密な6時間、しかしその長さがあっという間に吹き飛んでいってしまうような非常に見所の多い、大変面白い映画です。時間が許せば、年末に家族団欒でじっくり見るのにぴったりの映画だと思います。

さらに、この映画をとくに年末年始におすすめしたい理由は、イタリアの典型的な年末の過ごし方を垣間見れる点です。その点は次の記事で詳しく説明しますが、他にも当時のイタリアの社会情勢や、ささやかだがイタリアの庶民らしい生活の姿を見つけだすことができるのが、この長編映画の醍醐味です。ナストロ・ダルジェント賞の最優秀監督賞も受賞しており、見応えあり。

これをみて自分の家族との関係を見直すのもよし!イタリアの現代史などの勉強を始めるのもよし!何か新年に備えて、新しい自分を見つけるきっかけとなる映画になるかもしれません。

映画情報

・制作年:2003

・制作国:イタリア

・監督:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ(Marco Tullio Giordana)

・出演: ルイジ・ロ・カーショ(Luigi Lo Cascio)、アレッシオ・ボーニ(Alessio Boni)、ジャスミン・トリンカ(Jasmine Trinca)、ソフィア・ベルガマスコ(Sonia Bergamasco)、リッカルド・スカマルチョ(Riccardo Scamarcio)

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『輝ける青春』(原題:La meglio gioventù )概要

社会派映画を得意とするマルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督

“La meglio gioventù” esiste ancora, impariamo dai ragazzi と語るジョルダーナ監督(La stampa 2020年5月)

マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ(Marco Tullio Giordana)監督に関しては、名前をご存知無い方もいらっしゃるかもしれません。代表作としては『ベッピーノの百歩』(2000年)や『13歳の夏に僕は生まれた』(2005年)『フォンターナ広場 イタリアの陰謀』(2012年)などがあります。特にマフィアを糾弾する若者の実話をベースにした『ベッピーノの百歩』に関しては、ヴェネチア国際映画祭の最優秀脚本賞を受賞しました。また、未だ謎に包まれたパゾリーニ監督の暗殺事件を描いた『Pasolini,un delitto italiano』もイタリア国内で大変物議を醸したようです。

1950年生まれのジョルダーナ監督は、60年代、若者たちが政治活動に傾倒する、そういう時代を潜り抜けてきた人でした。そして彼も例に漏れず政治運動の担い手の一人でした。そのためか彼の映画作品は社会派作品が多いです。

この『輝ける青春』(2003年)も基本的には家族ドラマではありますが、その中で60年代から90年代にいたるまでの数多のイタリアの社会問題を巧妙に織り込んでいます。2000年代の映画ではありますが、今となって60年代のイタリアを掘り起こしてきて、現代のイタリアに何か投げかけているようです。

タイトルはパゾリーニの詩から

先にも書きましたが、ジョルダーナ監督はパゾリーニの死についての映画『Pasolini,un delitto italiano』を撮っていますし、なんとパゾリーニに関する著書もあるほどパゾリーニに精通している人です。そんな彼が選んだこの映画のタイトルは”La meglio gioventù”(日本語訳:「最良の青春」)という、パゾリーニの詩のタイトルから由来したものになっています。

イタリア語習得者の方は、このイタリア語に違和感を覚えるでしょう。本当ならば”La migliore gioventù"であるはず、と。実は”La meglio gioventù”とはローマ弁(もしくは北イタリア地方の標準語翻訳)なのです。以前パゾリーニの映画を特集した『カビリアの夜』や『アッカトーネ』の記事にも書きましたが、パゾリーニはローマ弁に長けており、あえてローマ方言で残した作品も数多くあります。

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ところでジョルダーナ監督はこの60−70年代をよく作品の題材として扱うのですが、その理由を彼は次のように述べています。

「それはその時代にイタリアが作られたと考えているから」

2013年『フォンターナ広場―イタリアの陰謀』オフィシャル・インタビューより

つまりイタリアの暗の部分が作られたのがちょうどこの時期だと言うのです。作品中もイタリアのネガティブな側面が、各所でセリフとして役者の口から語られています。

”La migliore gioventù"(最良の青春)とはなんでしょう。イタリアを変えようとした若者の姿、もしくは変化に富んだイタリアでもがいた若者の姿、そしてまだ若き頃の「イタリア」そのもののことを示唆しているのかもしれません。

この映画の中でも、主人公が大学医学部の口頭試験を受けている際、試験監督の教授はこう彼に諭します。

「ではイタリアを出なさい。1日も早く出ることだ。美しいが、無益だ。死ぬべき国だよ。」

実力派俳優勢揃い

アレッシオ・ボーニも2枚目人気俳優です。演技にも非常に定評があり、ルイジ・ロ・カーショ

ルイジ・ロ・カーショ

俳優陣も豪華。主演はルイジ・ロ・カーショで、本作品では精神科医を演じているのですが、実は彼自身も俳優になる前は精神科医を志していたというのだから驚きです。

出演映画は30本と、イタリア映画では本当によく見る顔になった彼ですが、映画デビューも実はジョルダーノ監督の『ベッピーノの百歩』で、この作品でダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞始めとするあらゆる主演男優賞を受賞しています。

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アレッシオ・ボーニ

助演のアレッシオ・ボーニも2枚目人気俳優です。演技にも非常に定評があり、ルイジ・ロ・カーショとともにマルコ・ベロッキオ監督の『夜よ、こんにちは』に出演、ナストロ・ダルジェント賞主演男優賞を受賞しています。

2人は同じシルヴィオ・ダミーコ国立演劇芸術アカデミーという、イタリアのアクターズスタジオとも言える俳優養成学校の同期でした。今では舞台俳優としても、そして演出家としても活躍しています。

主役以外にも注目の俳優ばかり

ソニア・ベルガマスコ

その他大御所女優、アドリアーナ・アスティ(ヴィスコンティ監督『若者の全て』『ルードヴィヒ』、パゾリーニ監督『アッカトーネ』など出演)、マヤ・サンサ(マルコ・ヴェロッキオ監督『夜よ、こんにちは』)、音楽家であり詩人、劇作家でもある才女、ソニア・ベルガマスコ(ベルトルッチ 監督『孤独な天使』、ケッコ・ザローネの『Viva!公務員』)などは本作でとても良い味を出しています。

ジャスミン・トリンカ(ナンニ・モレッティ監督『息子の部屋』)は本作品で精神病患者を演じ、ナストロ・ダルジェント主演女優賞を受賞しています。ファブリツィオ・ジフーニも、パオロ・ヴィルツィ監督『人間の値打ち』や、マルコ・ヴェロッキオ監督『甘き人生』などなど挙げるとキリがない、イタリア映画に欠かせない名脇役です。終盤少しだけ、若き日のリッカルド・スカマルチョも出演、彼は本作がきっかけで映画界にも注目されるようになりました。

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あらすじ

1966年、イタリア ローマに暮らす一般中流家庭のカラーティ家。長男のニコラ(ルイジ・ロ・カーショ)と次男マッテオ(アレッシオ・ボーニ)は仲の良い兄弟であったが、マッテオはなかなか心を開かないセンシティブな青年で、父親も「マッテオは何を考えているのかわからない」といつも悩んでいた。

2人は大学での口頭試験を控えていた。ニコラは医学部、マッテオは文学部でそれぞれ優秀。試験後はニコラの友人2人と共に4人で北欧旅行に出発することを約束していた。

同時期にマッテオは友人の紹介で精神病院でバイトを始め、ジョルジャという未成年の精神病患者の面倒を見ることに。彼女もなかなかマッテオに心を開いてくれず、マッテオもどう立ち回れば良いのか迷う。どうにかして関係を縮めようとある日、彼女の写真を撮り始めるが、現像した写真から彼女は電気ショックで虐待を受けていることを知り動揺する。もともと正義感の強いマッテオは、夜間に精神病院に侵入し、ジョルジャを無断で病院から連れ出してしまう。

大学の口頭試験も最高得点を取り、意気揚々と北欧旅行に出発しようとしていたニコラのもとに、マッテオはその見知らぬジョルジャという女の子を連れてやってくる。事情を聞いて驚くニコラ。2人とも、マッテオの行為は大義あることだとしても立派な犯罪であることも認識している。とにかく早く彼女を父親のもとに帰そうと、予想外の3人の旅が始まる・・・。

ジョルジャ、ニコラ、マッテオ3人の旅が始まる

さいごに

いかがでしたでしょうか。興味はそそられたでしょうか。残念ながら、上記のあらすじは本作品の100分の1も語られていません。この後、時代の変容とともに、物語は大木の根のように大胆に広がっていきます。

本当に何度も見ても見飽きない、面白い映画です。長くても、あまりにもいろいろな要素が含まれた奥深い話なので、続きは次の記事へ持ち越しさせてください。

<お正月イタリア映画特集>年末年始にはこれがおすすめ!『輝ける青春』(後編)

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次の記事では、『輝ける青春』から見えてくる”イタリア”、そしてイタリアの年末年始(Capodanno)の過ごし方をご紹介したいと思います。この映画を見たことある方でも、次の記事を読んでから再見すると、また新たなイタリアを発見するかもしれません。乞うご期待!

映画情報

・制作年:2003

・制作国:イタリア

・監督:マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ(Marco Tullio Giordana)

・出演: ルイジ・ロ・カーショ(Luigi Lo Cascio)、アレッシオ・ボーニ(Alessio Boni)、ジャスミン・トリンカ(Jasmine Trinca)、ソフィア・ベルガマスコ(Sonia Bergamasco)、リッカルド・スカマルチョ(Riccardo Scamarcio)

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・各映画のあらすじ・感想

『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』『LORO 欲望のイタリア』『おとなの事情』『暗黒街』/『シチリアーノ 裏切りの美学』/『輝ける青春

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