【ネタバレ有】ブシェッタの矛盾を想う『シチリアーノ 裏切りの美学』

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2020年8月28日から全国で公開されたマルコ・ベロッキオ監督作品『シチリアーノ 裏切りの美学』。イタリア国内でも大ヒットとなり、イタリアそして世界であらゆる賞を受賞した作品について、この記事では、少々ネタバレ有りで取り上げたいと思います。

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『シチリアーノ 裏切りの美学』について

あらすじ

1980年代初頭、シチリアではマフィアの全面戦争が激化していた。コルレオーネ派を率いるサルヴァトーレ"トト"リイナは、ドラッグの密売、また女子供にも容赦しないやり方で、マフィア史上最も恐れられた人物だった。

パレルモ派の大物トンマーゾ・ブシェッタは抗争の仲裁に失敗しブラジルに逃れるが、残された家族や仲間達はコルレオーネ派の報復によって次々と抹殺されてしまう。ブラジルで逮捕され、イタリアに引き渡されたブシェッタは、マフィア撲滅に執念を燃やすジョヴァンニ・ファルコーネ判事から捜査への協力を求められる。

ドラッグと殺人に明け暮れ堕落したコーザ・ノストラに失望していたブシェッタは、徐々に畏敬の念を抱くようになっていったファルコーネ判事に対して組織の情報を提供することを決意するが、それはコーザ・ノストラの ”血の掟” に背く行為だった……

感想:トンマーゾ・ブシェッタの矛盾?

少し表層的なのかもしれませんが、私はトンマーゾ・ブシェッタという人物は、とても矛盾があるような人間に思えました。矛盾していると聞けば、悪いことのように思われがちです。もちろんそうした面もないとは言いませんが、私としては、その分だけ人間味があるとも言えると思います。

家族への懺悔と自殺の真意

彼がブラジルへ逃亡する際にパレルモに残していった前妻との間の2人の息子は、トト・リイナやピッポ・カロの手で殺害されてしまいます。ブラジルでその一報を受け取ったブシェッタは後悔の念に駆られ、ことあるごとに悪夢を見るように。「女好き」を自称し、3回の結婚を繰り返す彼の、家族思いな意外な一面を目にします。

ことあるごとに悪夢を見て、息子、そしてシチリアに住む家族に対する自責の念が拭いきれないことが良く分かります。

その一方、クリスティーナとの間に出来た子どもについて深く言及することもなければ、クリスティーナ自身への愛情も、ストーリー後半はそれほど見えません。一方で、クリスティーナからブシェッタに対しての愛情はよく窺えます。

また、彼はブラジルで逮捕されてイタリアに強制送還される際、服毒自殺を試みます。結果的に一命は取り留めましたが、本当に自殺するつもりだったのか、自殺に見せかけて送還を免れようとしただけなのかは、彼自身の口から直接語られていないはずです。アンドレオッティ裁判の際、本当に自殺するつもりだったと説明していたものの、答弁は少しどろもどろでした。

ただ、ブシェッタがブラジルの病院で目を覚ました時に、家族に対して向けた、何とも言えない視線が忘れられません。後悔しているのか、計画通りだと思ったのか、その真意は分かりませんが、私には、家族にまた会えたことへの歓びのようには見えなかったように思えてしまいます。

ブシェッタとファルコーネの絆

史実においても、ブシェッタの告解は、マフィアの壊滅において大きな影響を持ちました。彼がジョヴァンニ・ファルコーネ判事に伝えたコーザ・ノストラ関連の内容は、467ページにも及び、この聴取を基にして476人もの関係者が起訴されることになりました。

彼はもともと、「裏切り者にはなるつもりはない」と一切捜査に協力しない姿勢を見せていましたが、ファルコーネとの語り合いから徐々に絆が芽生えると、「コーザ・ノストラの掟を破っているのは彼ら(コーザ・ノストラの関係者たち)であり、彼らこそが裏切り者である」という姿勢に変わり、持っている全ての情報をファルコーネに伝えます。

ただし、どのようにして絆が生まれたのかについては、タバコのやり取りやコーザ・ノストラの掟に関するシーンを除けば、ほとんど語られていません。個人的には、ここがもう少し細かく描かれていればさらに分かりやすかったかなと思います。当然、その空白を繋ぐのが、映画鑑賞の楽しさでもあるのですが(笑)

ただ、家族を何よりも愛する男が、イタリアの息子2人、弟を殺され、ブラジルに住む妻を殺されかけてまで告げなかった秘密を、ファルコーネには告げたというのであれば、もう少し説明が欲しかったと感じてしまいます。

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死ぬのは本当に怖くないのか

「死ぬのは怖くない」と言いつつ「自分のベッドの上で最期を迎えたい」と語るブシェッタ。マフィア大裁判後、彼はイタリアを去ってアメリカで保護証人として過ごすことになりましたが、常にコーザ・ノストラの復讐を恐れ、生活が守りに入ることを余儀なくされ、心は恐怖に侵されていきます。

必要もないのに、余計にライフルを買って外を見回り、スーパーですれ違っただけの人を警戒し、大切なクリスマスのディナーでさえ、自分の同郷を思い出してふさぎ込んでしまいます。怯えながらも、結局は望み通り、自分のベッドで生涯を終えたブシェッタ。ですが、その晩年は生きた心地がしなかったのではないでしょうか。

そして、彼と同じように「死ぬときは死ぬ」と威厳をもって言うファルコーネは、トト・リイナらの暗躍によって殺害されます(本線とは逸れますがこのシーンは圧巻でした)。

先ほど挙げたシーンに戻ると、ブシェッタが何かに怯えているように見えるのは、恐らくスクリーンで見ている我々だけ。ブシェッタのそばにいる人は、そのそぶりにはあまり気付いていないように見えます。

死ぬのは怖くないはずだけれど、心のどこかで、なぜか怯えている。そんな心情描写に見えました。

ラストシーンの月

ラストシーンでファルコーネ判事との会話の伏線回収がされるとは思いませんでした。ブシェッタがアメリカのバルコニーで眠りにつくときに見ていた月は、イタリアでかつて若かりし頃の自分が殺した男が見ていた月と同じだった...。

子どもが結婚して自分の手から離れ、いつでも死ぬ準備ができている、手にタバコをくゆらす男。そして、年老いて死ぬだけでありながら、それを心のどこかで恐れ、眠りにつくまでライフルを肌身離さない男。同じように見えて、細かく比べると少しずつ違うのですが、この2人の内面が重なり、静かにエンドロールを迎える...。

かなり余韻を残すラストだったと思います。

さいごに

彼が劇中に描かれる前の犯罪についても全て否定していたこと、パレルモ裁判のこと、「名誉ある男」について、ピエルフランチェスコ・ファヴィーノとマルコ・ベロッキオの関係、など色々と書きたいことはたくさんあったのですが、今回の記事ではトンマーゾ・ブシェッタのある種の人間味のある内面についてのみ取り上げてみました。

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長い映画かつ、読み解くのが個人的には難しかったので、もしかしたらどこかでミスリードをしているのでは、という不安もあります。私が観た感想としてあげておきたいと思います。

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  • この記事を書いた人

ゆうさん

『BUONO!ITALIA』代表をしています。 1年間ローマ大学に留学し、シチリア出身マンマが統べる大家族にてホームステイ。卒論では、『1980年代以降のイタリア中小企業論』について考えました。社会人1年目。サイトSNSはこちら↓より。

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