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『郵便配達は2度ベルを鳴らす』(1942)/『無防備都市』(1945)/『戦火のかなた』(1946)/『揺れる大地』(1948)/『アモーレ』(1948)/『ストロンボリ、神の土地』(1950)/『ベリッシマ』(1951)/『ウンベルトD』(1952)/『カビリアの夜』(1957)/『アッカットーネ』(1961)/『輝ける青春』(2003)/『人生、ここにあり!』(2008)/『暗黒街』(2015)/『おとなの事情』(2016)/『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』(2017)/『LORO 欲望のイタリア』(2018)/『シチリアーノ 裏切りの美学』(2019)
ネオレアリズモとは?
ネオレアリズモの映画を今あえて見ようという人が、あまり日本ではいないかもしれません。もしかしたらこの言葉をご存知ないという人も。
そういう方のために、ここで少しネオレアリズモの意味を説明させていただくと、ネオレアリズモとはイタリア語で、ネオ(新)レアリズモ(現実主義)でそのまま「新現実主義」という意味です。このムーブメントが仏のヌーヴェル・ヴァーグや米国のフィルム・ノワールに影響を与えたと言われています。
具体的にネオレアリズモの映画とは?というと、これは定義が曖昧なところもあるようなのですが、戦後すぐの40−50年代あたりに作られた映画が主で、①反ファシズム的映画であり、②主に俳優を使用せず素人に演技をさせている、ことが主な特徴と言えます。
ちなみに素人に喋らせているので、その現地の様子が方言とともにまざまざと伝わるというのも特徴です。イタリアは、統一してまだ間もない国であるので地域性というのはとても出やすいですよね。
ネオレアリズモの映画をいくつか知っていて、「暗い」というイメージを持つ人も多いかもしれません。確かに貧困社会やいわゆる下層階級の人々が主題となっているので、その彼らのリアルな現状を目の当たりにすると、必然的に気持ちが暗くなってしまうかもしれません。
確かにネオレアリズモの映画を見ていると、そこにはハリウッド映画のような架空の華やかさはどこにもないし、ハッピーエンドは期待できません。「ヒーローの勝利」の感覚は全くもってありません。そのため後味は悪く、一種の絶望感も残るかもしれません。
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しかし今のイタリア社会を形成するベースのようなものを見て取れますし、何よりもイタリア国民らしい愛を感じることができると思います。心動かされること間違いなしです。また人によっては、何か自分で変革を、アクションを起こすきっかけとなるような映画になるかもしれません。それだけ考えさせられます。
見たらお分かりになると思いますが、決して過去の古い話というように、歴史書として頭に収めるべきものではなく、現代のこととして考えられる映画ばかりです。
ご承知の通り、戦争の生の記憶を持つ人々はだんだんと世の中からいなくなっていますので、戦争が生み出した悲惨な状況を現代に伝えられる人が減少しています。そして今世界は少しずつじっくりとファシズム化していると言っても過言ではありません。
また現在のコロナ災害のことを戦争のようにいう人もいます。それはコロナが、戦争がもたらしたように、まるで私たちの生活、人となりを変えてしまったところが多々あるからだと思います。
今こそネオレアリズモの映画を見るタイミングなのではないかと私は思います。日本で大きな自然災害やコロナを経験した私たちだからこそ、この映画で見えてくることがあると思います。
そう言った思いから、ここではイタリアのネオレアリズモの代表的な作品をいくつか紹介していきたいと思います。そしてこれらを見ることで、イタリアの新しい一面も見つけてみてください。
ネオレアリズモ代表作品6選
1. 『自転車泥棒』
長らく失業中の男がやっとのことで役所から仕事を紹介してもらうのだが、仕事に必要な自転車を手に入れたのも束の間、盗まれてしまう。子どもと一緒にローマの街中を探し回るが・・・。
イタリア敗戦後すぐのまだまだ荒廃しているローマを描いている。イタリアでは自転車を盗まれることはやはり今でも珍しいことでもないが、非情が非情を生む連鎖にはやるせなさを感じる。
主人公演じるランベルト・マジョラーニとその子供のエンツォ・スタヨーラは、デ・シーカ監督が自ら見つけ出した演技未経験の素人で、彼らの存在がより一層貧困社会のリアルな不条理さを際立てている。作品はアカデミー名誉賞(のちの外国語映画賞)を獲得している。
映画情報
- 原題:Ladri di Biciclette
- 公開年:1948
- 上映時間:93分
- 制作国:イタリア
- 監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
- キャスト:ランベルト・マジョラーニ、エンツォ・スタヨーラ、リアネーラ・カレル、 ジーノ・サルタマレンダ
2. 『靴磨き』 原題:Sciuscià
戦後まもないローマ、ある2人の少年は靴みがきをして生計を立てている。2人の夢は馬を買うこと。靴磨きだけでは馬を買えないと思った2人は、闇商売の仕事を手伝い、それがバレて逮捕されてしまうのだが・・・。
本当に戦後すぐに撮影された映画。「自転車泥棒」もそうだが、デ・シーカは、子供の自然な演技を引き出すことにとても長けている。下層社会の子供たちの惨劇に焦点を当てることで、戦争の非情さを強調させている。
悲劇だが、その中にイタリア国民の愛を感じる涙無くしては見られない映画だ。こちらも同様、作品はアカデミー名誉賞を獲得している。ちなみに原題のSciusciàとは、英語の”Shoe shine"がなまってイタリア語になった言葉である。
こんな映画です
- 戦争→貧困→犯罪の悪循環の話
- 子供が犯罪に巻き込まれてしまうことにやるせなさを感じてしまう
- デ・シーカ初のアカデミー賞受賞作品
映画情報
3. 『ウンベルトD』 原題:Umberto D
戦後まもなくのローマ。ウンベルト・ドミニコ・フェラーリは年金生活をする独り身の元公官庁員。家賃を6ヶ月滞納し、年金値上げを求めるデモに参加したりもしているが、自分は教養があるし、前職も立派であったという自負があるため、少々プライドが高いところがある。そのためあまり人に頼るということには慣れておらず、すぐ喧嘩腰になってしまう。なんとか大家から家を追い出されないように試行錯誤するが・・・
デ・シーカが自身の父に贈った作品である。貧困家庭に育った彼ならではの表現と言えるだろう。戦争後の不景気も相まって、政府からの給付もごくわずか。どこかで聞いたことのある話である。
これまたデ・シーカは演技経験のないフィレンツェ大学の言語学者を主人公に抜擢し、それによって素朴な市民らしさが引き立ち、リアリティを映し出すことに成功している。
こういうイタリア人いるなあと可笑しみが沸いてくるシーンもある。犬好きの人はウンベルト・Dの愛犬Flaikの名演技に涙すること間違いなしであろう。イングマール・ベルイマンがこの映画を好きだったらしい。詳しくは、別の記事でも紹介しています。
『ウンベルト・D』ーネオレアリズモ映画を見始めるひとたちへー
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こんな映画です
- 無職、年金生活者、孤独な老人の話
- 愛犬フライク、犬好きには(そうでなくても)たまらない感動の名演技
- イングマール・ベルイマン、マーティン・スコセッシなど著名な映画監督に影響を与えた映画
映画情報
・公開年:1952
・制作国:イタリア
・監督:ヴィットーリオ・デ・シーカ
・出演: カルロ・バッティスティ、マリア・ピア・カジリオ、、リーナ・ジェンナーリ
・放映時間:88分
4. 『無防備都市』 原題:Roma città aperta
舞台はイタリアが戦争に負けムッソリーニ政府は崩壊し、同盟国であったドイツ軍に占領されている時代のローマ。レジスタンスの指導者をドイツのゲシュタポが追う中で、そのレジスタンスの恋人、友人、その家族など周辺の人たちがどんどん巻き込まれていく話。
ロッセリーニ戦争三部作の1つ。イタリアがドイツ占領下から開放されてすぐに撮られた貴重な映画。他のネオレアリズモ映画とは打って変わってとてもドラマティック。また素人ではなく、当時の人気俳優を配役しており、アンナ・マニャーニが全速力で走る姿は網膜に焼き付いて離れないほど悲しい。
本作は実はフェデリコ・フェリーニが初めて脚本に協力し、彼が映画界へ踏み込んだ初めての作品として知られている。(似顔絵を描いて生計を立てていたところ、ロッセリーニに拾われた)また本作を見てイングリッド・バーグマンがロッセリーニにラブレターを送ったというのは有名な話。
こんな映画です
- 戦後直後に取られた緊迫感のあり、ドラマティックな反ファシズム映画
- ネオレアリズモ映画にしては珍しく、人気俳優を配している
- イングリッド・バーグマンがロッセリーニの才能に惚れた映画
映画情報
5. 『戦火のかなた』 原題:Paisà
ムッソリーニ政権崩壊後の1943年〜1944年、ドイツ軍が敵となっている時代。全部で6エピソードあり、シチリア、ナポリ、ローマ、フィレンツェ、ポー川デルタ地域と、南から北へエピソードを追いかけるように構成されている。ドイツ軍と米軍に挟まれる敗戦国イタリア国民の悲劇を描いている。
ロッセリーニ戦争三部作の1つ。原題の”Paisà”というのは「同郷」とか「友」と呼びかける時につかうナポリ弁。
これをアメリカ軍も軍の演習で習ったらしく、セリフに頻繁に出てくる。(同年に撮られたSciusciàとは逆の発想)エピソードの話自体は戦争に巻き込まれた市民の悲劇で、基本的にはその現実を淡々と追っているが、その中でも救われるような人情に触れることができるエピソードも見受けられる。
戦後間もなく、この映画を撮影できたことで緊迫感があり、また荒廃したウフィッツィ美術館など貴重な映像が満載である。また本作品でも引き続き、フェデリコ・フェリーニが脚本、助監督を担当している。
こんな映画です
- 6本のエピソードによるオムニバス映画
- ドイツ占領下の1年の悲劇を描いています
- 実はフェリーニ初助監督作品
映画情報
6.『ベリッシマ』原題:Bellisima
貧困家庭に育った母親が、娘には自分のようになって欲しくないという思いから、娘を女優にさせようと躍起になり、チネチッタにて行われる映画の子役オーディションを受けさせる。一次審査はなんとか通るが、その後はコネが必要だ、バレエ経験が必要だ、演技指導が必要だなど外野になんやかんや言われ翻弄され、挙げ句の果てに詐欺に引っかかってしまう。果たして娘はオーディションに受かるのか。
典型的なイタリアらしさがよくも悪くも垣間見える映画である、またしても強いイタリア女、強い母親を演じるアンナ・マニャーニの存在感に圧倒される。ネオレアリズモ映画の中でもコメディタッチで見やすい。淀川長治も大好きな映画。
こんな映画です
- 戦後のイタリア庶民をよく描いている
- ヴィスコンティは本作から人気俳優を使い始める
- イタリアの肝っ玉母さん、アンナ・マニャーニの演技に圧倒。子供を持つ親は共感すること間違いなし
映画情報
さいごに
いかがでしたか?ちょっと戦後の暗い映画ばかりで疲れると思う人も、まずは「ベリッシマ」や「ウンベルトD」から見てみてはどうでしょう。疲れた時にこういう作品をみて涙するのも心が洗われていいかもしれません。
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