イタリア映画祭2021  公式サイトの人気ランキングには載らない、おすすめ3選

イタリア映画祭2021  公式サイトの人気ランキングには載らない、おすすめ3選

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イタリア人の夫と息子と東京暮らし。日本にいながらもイタリアの食卓を再現したくて研究中。またイタリアの小説や映画を日本にもっと普及できればと、日々記事を書いています。

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郵便配達は2度ベルを鳴らす』(1942)/『無防備都市』(1945)/『戦火のかなた』(1946)/『揺れる大地』(1948)/『アモーレ』(1948)/『ストロンボリ、神の土地』(1950)/『ベリッシマ』(1951)/『ウンベルトD』(1952)/『カビリアの夜』(1957)/『アッカットーネ』(1961)/『輝ける青春』(2003)/『人生、ここにあり!』(2008)/『暗黒街』(2015)/『おとなの事情』(2016)/『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』(2017)/『LORO 欲望のイタリア』(2018)/『シチリアーノ 裏切りの美学』(2019)

イタリア映画祭2021がオンラインにて今年も開催となりました。ゴールデンウィークから少しずれましたが5月開催、予定としては4月30日〜5月5日 東京 渋谷ユーロライブにて上映の予定でしたが、今回の緊急事態宣言を踏まえ前日に急遽中止に(権利の関係で延期は不可)。

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そのためオンラインにて、1部:5.13[木]~6.13[日](新作のみ) 2部:6.17[木]~7.18[日](過去作含む)というシステムのみでの開催となりました。昨年の年末に実施された同映画祭よりも新作が多く、また新進気鋭の監督作品が多く出品されました。

http://www.asahi.com/italia/2021/

さて、映画祭に出品されてもその後2度と日本ではお目にかかれない作品などもあります。新作10本はどれも日本での公開が決まっていません。
現状では見ることができるのは第1部の6/13までだけで、二度と見ることができないかもしれませんので、この機会にぜひお楽しみください。(購入できるのは6月13日(日)23:59までですが、視聴可能期間は購入後72時間ですので、6月14日(月)以降も最大6月16日(水)までご覧いただけます。)
第2部は6月17日(木)~7月18日(日)に開催され、過去の映画祭で好評だった作品をオンライン上映します。

公式サイトには人気ランキングも載っていますが、それらの映画は日本へ配給される可能性も高いです。ですので、この時期を見逃さずに皆さんに見てほしいと、ここにまだランキングには載っていない特におすすめの3作をご紹介します。

『ソーレ ー太陽ー』(原題:Sole) カルロ・シローニ監督 2019年

あらすじ

舞台としては海辺の街。エルマンノという無職の青年。たまにちょっとしたバイクの盗難をして、収入があるとギャンブルをする生活をして暮らしている。ただ惰性で生きているような、なんで生きているのか思いつめることもあきらめているかのような青年。

その青年の目の前に妊娠7ヶ月のポーランド人の若い女性が現れる。彼女は自分のお腹の子を売るためにポーランドから入国してきた。そしてその子を、不妊症で悩むエルマンノの叔父夫婦が買うという裏取引がなされる。エルマンノはそのお腹の子供が生まれるまで、父親を演じるよう叔父から依頼される。

解説

今回の映画祭の作品は著名監督が少ない一方、有名俳優が出演している映画が多く、40−50年代のイタリア映画業界のようですが、この映画は俳優の知名度も低く、わりと地味な部類の映画かと思われます。シローニ監督初長編作ではありますが、無駄なものを削ぎ落としたミニマルで洗練された作品です。社会問題を扱いながらもどこかお伽話のようです。

テーマは監督曰く「親子のこと、親になることとは」。その題材として子供の人身売買、養子縁組制度が取り上げられています。

代理母はイタリアでは禁止されており、養子縁組や里親制度も新生児を授かるのはハードルが高いため、こうした違法の商取引が存在するようです。そこでエルマンノがそのお腹の子の父であると偽装し、生まれて無事に叔父夫婦に引き渡せるまで子の母親のガードマンのような役割を担うことになったのです(親戚から親権を譲り受けることはハードルが低い)。

このポーランドの女の子はどういう経緯で身篭ったのか、どんな業者に斡旋されたのかなどは本作では触れられていません。ただまっすぐにドイツに住むことを夢見て、そのためのお金を手に入れる手段としてお腹の子を売ることに決めています。この子の倫理観を疑うものの、本作ではなんとなくこの子を責めるような気持ちにはなれません。無口ではあるが、ずっと怒ったような顔をしている娘。まるで無言で社会全体を責め立てるようです。

エルマンノもまた、非常に無口で何を考えているかわからないような青年。しかしもうなんだか投げやりになっているようなときは、実は自分が一番ダメージを受けているような、そんな本来は実直な青年のように描かれています。彼は若い時に父が自殺しています。僕は飛び降りたりはしないよ、と彼は言います。

とにかく静かな映画。とくに2人は表情がほとんどありません。出産場面など劇的になりがちなシーン等は削ぎ落とされていて、すべての人の感情が何かに押さえつけられているようです。みんな感情をこらえているのが当たり前になって、そのままそれが自分の感情と信じ込んでしまっている。この作品は重い社会問題を題材としつつも、社会問題に対して警告をしているような映画ではありません。

ずっと暗い海の底で暮らすのが当たり前になってしまった2人。ですが、エルマンノが勇気を振り絞って口に出した提案によって、その世界に一筋の光が差します。

『私は隠れてしまいたかった』(原題:Volevo nascondermi)ジョルジョ・ディリッティ監督 2020年 

あらすじ

アントニオ・リガブエというイタリア人画家の自伝的映画。

両親を衝撃的なある理由で失くしており、心に傷を負った少年は、イタリア近くのスイスの村で義理の父母に育てられる。しかしその里親への暴力がきっかけでスイスを追放され、イタリアに入国し精神病院を転々とした後、レッジョ・エミリアのある森に住みつく。森で孤独に暮らしながら、絵を描くようになったアントニオ。その才能を買われてある男に拾われ、リガブエとして創作活動をするようになり、次第に彼の絵はイタリア全土で称賛を浴びるようになる。

解説

アントニオ・リガブエという画家をご存知でしょうか。日本ではあまり知られていない画家かもしれません。

彼の絵はどこかゴッホだったり、マネだったり、ゴーギャンなどの絵を思わせます。しかし驚くことに彼はもともと無教養で美術の教育も受けずに、画家となった人です。そういった作家の影響を受けていたわけではないようです。いわゆるナイーヴ・アート(素朴派)の画家の一人で、彼の作品はアウトサイダーアートの部類ともいえます。

彼は、母親はイタリア人だが、父親は不明、母は早くに他の子供たちとともに父親に毒殺されたらしく、残されたのはリガブエだけでした。スイスで育った彼は、もともとドイツ語しか話せません。そのためスイスにいる時は「イタリア人!」といじめられ、その後イタリアでは「あの変なドイツ人!」と虐められます。彼は人間には放っておいてほしいと強く願い、その反動で自然界に自分の居場所を見つけていくのです。

リガブエの自然に対する目線が美しいと感じさせる、動物を撮るカメラワークが素晴らしいです。リガブエの実際の絵、色彩を生んだのは、この動物の体全体を細かなところまでくまなく愛でたリガブエだからこそなのでしょう。作品中、光に撫でられるロバのたてがみのなんと美しいことか。

リガブエの手法が面白く、例えば描く対象が虎であれば、その虎に自分で成りきる。鶏であれば鶏に成りきる。その様子は言ってしまえばかなり滑稽です。リガブエを映画に出演させるシーンが作品中にでてきますが、これは実存するドキュメンタリーでYoutubeにあります。本当に映画そっくりのリガブエとその彼の特異な手法に目を疑うと思います。

リガブエを演じたエリオ・ジェルマーノがさすがにカメレオン俳優、素晴らしい、いや恐ろしいぐらいの怪演です。自分を押し出して生かす俳優と、自分を内に隠し別の人格を出して演じる俳優がいれば、この人は絶対的に後者です。そして没入型。おそらくエリオ・ジェルマーノは役作りのために、リガブエのこのドキュメンタリーを見たと思います。あまりにそっくりです。

リガブエはそういう意味では芸術家にしては幸運な部類で、つまり生前に作品を評価された人であるため、このように記録映画が後世に残され、例え精神的な障害があって自分で何かを伝えることができない人であったとしても、このように代弁者がたくさんいました。彼のことを伝えてくれる人、評価してくれる人がたくさんいたので、資料が実は数多あります。

そういう資料を多く反映させた、自伝的映画としても大変見応えがあり、そして華麗なカメラワークにうっとりさせられ、エリオ・ジェルマーノのその怪演でシンパシーをもたらせ、ぞっともさせた。そんな映画です。

余談ですが、ベルトルッチ の『暗殺オペラ』(原題:"La strategia di ragno")のオープニングはリガブエの絵が次々と流れてきます。ベルトルッチ はエミリア・ロマーニャ出身です。その『暗殺オペラ』に似た構図のシーンが本作にはたくさん出てくるので、これはあきらかにジョルジュ・ディリッティからベルトルッチ へのオマージュと受け取れます。

『略奪者たち』(原題:I predatori) ピエトロ・カステリット監督 2020年

あらすじ

舞台はローマの郊外Ostia。あるプロレタリアート層(そしてネオナチ)の一家のおばあさんが「息子の友達」と称する男に詐欺に遭う。あるニーチェ研究者の若者がニーチェの墓発掘作業のチームから外される。女性映画監督はある映画撮影中、処刑シーンでその俳優を本当に殺しそうになる。医者は同僚の妻との不倫に燃える。

先のおばあさんが交通事故に遭い、医者が彼女を助けたことで、ブルジョワ一家とネオファシストの一家がしだいにじわじわと混じり合っていく。

解説

ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門脚本賞受賞(メインの脚本賞ではありませんが、特別部門のような位置付けのもの)。イタリア式コメディへの新しい風とも評されています。今回のイタリア映画祭の中でも異彩を放つこの作品は本監督の長編デビュー作です。

この監督若干29歳、異才です。俳優としては知られていて、例えばイタリア映画祭過去出品作品の、漫画家のゼロカルカーレのロングセラー小説原作の『アルマジロの予言』にも出演していました。主人公の空想の友達がアルマジロというかなり奇をてらったストーリー(しかもそのアルマジロを人間がぬいぐるみを被って演じている。アルマジロ役はなんと『いつだってやめられる』シリーズのバレリオ・アプレア)の中で、かなり狂った行動をとる友達の役を演じています。

セルジョ・カステリットはたぶんご覧になった方も多いと思います。彼はエットーレ・スコーラの作品や、マルコ・ベロッキオの『結婚演出家』など数多のイタリア映画、そしてリュック・ベンソンの『グラン・ブルー』などハリウッドにも出演、他ジャック・リヴェットの作品などかなり国際的なベテラン俳優です。彼の息子がこのピエトロ・カステリットです。

映画界のサラブレッドとも言いましょうか。顔にも面影はありますがしかし、父親とはかなり異なるタイプの、どちらかというと癖のある俳優という印象です(日本の俳優で例えると柄本時生かしら・・・)。本当はお父さんのように綺麗な2枚目の顔立ちですが、そこに甘んじずにいつも変人役に徹することが多いです。

最初から不穏な雰囲気、そして関係性の無いエピソードの挿話がぽつぽつと続きます。映画を見ていると関係性をついつい追いたくなり焦るかもしれませんが、ゆっくりゆっくりブラックなジョークに交えて、あなたを狭い空間に追い込むように夢中にさせます。このブルジョア、プロレタリアート両層の全く別々の裏社会の、全く別の話が段々と不気味に狡猾にまとまっていきます。

全体としてこの2つの世界双方を大変皮肉って批判しながら進行します。ネオファシスト(ネオナチ)のかつてのムッソリーニ時代の旗を掲げているシーンもショッキングですが、心理的にはボルゲーゼ(ブルジョワ)一家の食卓もなかなかこわいものがあります。ブルジョワよりも、ネオナチの人々は家族愛がベースにある行動が垣間見え、人間らしさでいえばネオナチの人々の方がまともに見えるかもしれません。

ブルジョアとプロレタリアートという相反する世界、略奪者はブルジョワ側でもプロレタリアート側でもなく、生きるためにそれぞれの社会に属している人物たちの自己からの脱却後の姿なのかもしれません。それぞれの階級社会に甘んじていればなんとか平和に過ごせていたのですが、ではその平和とはなんでしょう。その平和への気色悪さを際立たせたのが本作品であると思います。

人物描写とこのテンポの速さ、間が秀逸です。じめじめとした裏社会への不快感から、最後の爽快感へつなぎ、心地よさを観客にもたらします。解せないような更なるフィナーレは、様々な映画に対するオマージュのようでもあります。

決して綺麗なストーリーというわけではないのですが、若さからかやりたいことへの素直さとエネルギーを感じる作品です。ウッディー・アレンの初期の作品に傾向が似ているような気がします。まずはアイロニーにて大いに笑わせたかったというのが、監督の本音では無いでしょうか。

さいごに

いかがだったでしょうか。社会派の作品がいつも多いイタリア映画祭。家で過ごす時間の中で、皆さんのイタリアへの扉を開く一助になればと思います。どうか会期中、リアルなイタリアを楽しんでください。

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イタリア映画を観るには?

コロナ禍でイタリアに行けない中、文化を少しでも知りたいなら、イタリア映画を観るのが一番。

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使っているうちに初めて分かることもありますし、イタリア映画以外にも魅力的なコンテンツがどちらも揃っているため、きっとどちらかは使い続けたくなると思います。

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