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2020年8月28日から全国で公開されたマルコ・ベロッキオ監督作品『シチリアーノ 裏切りの美学』。イタリア国内でも大ヒットとなり、イタリアそして世界であらゆる賞を受賞した作品について、この記事では、ネタバレ無しで取り上げたいと思います。
『シチリアーノ 裏切りの美学』のあらすじ、キャスト、見どころなどを解説
あらすじ
1980年代初頭、シチリアではマフィアの全面戦争が激化していた。コルレオーネ派を率いるサルヴァトーレ"トト"リイナは、ドラッグの密売、また女子供にも容赦しないやり方で、マフィア史上最も恐れられた人物だった。
パレルモ派の大物トンマーゾ・ブシェッタは抗争の仲裁に失敗しブラジルに逃れるが、残された家族や仲間達はコルレオーネ派の報復によって次々と抹殺されてしまう。ブラジルで逮捕され、イタリアに引き渡されたブシェッタは、マフィア撲滅に執念を燃やすジョヴァンニ・ファルコーネ判事から捜査への協力を求められる。
ドラッグと殺人に明け暮れ堕落したコーザ・ノストラに失望していたブシェッタは、徐々に畏敬の念を抱くようになっていったファルコーネ判事に対して組織の情報を提供することを決意するが、それはコーザ・ノストラの ”血の掟” に背く行為だった……
監督
この映画の監督は、マルコ・ベロッキオ監督(Marco Bellocchio)。1939年生まれ、御年81歳、エミリア・ロマーニャ州ピアチェンツァ出身で、イタリア映画界最後の巨匠と称される監督です。
イタリアの農村社会における貧困と障害を描いた『ポケットの中の握り拳』(65)で鮮烈に映画デビュー。『中国は近い』(67)が公開された翌年には、イタリア共産党に入党しています。
70年代までは政治的な作品が多かったが、精神科医のマッシモ・ファッジョーリと出会って、80年代以降は精神世界に重きを置いた映画に変わっていきます。
『夜よ、こんにちは』(01)、『愛の勝利を ムッソリーニを愛した女』(09)、『眠れる美女』(12)、『甘き人生』(16)など、どれも登場人物の内面をとてもクローズアップした、スクリーンの前の私たちに、静かにしかしながら重厚に語り掛けるような映画ばかりです。
キャスト
トンマーゾ・ブシェッタ役には、『最後のキス』(01)、『暗黒街』(15)、『修道士は沈黙する』(16)などに出演し、名実ともにイタリアを代表する俳優であるピエルフランチェスコ・ファヴィーノ(Pierfrancesco Favino)。これまで知られる・語られる機会が少なかった大ボス・ブシェッタの内面を緻密に掘り出し、この作品でダヴィド・ディ・ドナテッロ賞の主演男優賞に輝きました。
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また、イタリア映画界の名バイプレイヤーであるルイジ・ロ・カーショ(Luigi Lo Cascio)は、マフィア委員会としてコルレオーネ派に命を狙われるサルヴァトーレ"トトゥッチョ"コントルノ役を演じました。彼自身がシチリア・パレルモ出身ということもあってか、巧みな現地の方言を使う裁判のシーンは、非常に印象的でした。
その他には、ブシェッタの3人目の妻・クリスティーナ役には、「20世紀で最も美しいブラジル人」に選ばれたマリア・フェルナンダ・カンディド(Maria Fernanda Candido)、ブシェッタを説得してマフィアの大捜査を行い、最後はカパーチ大虐殺で殺害されたジョヴァンニ・ファルコーネ役には、ベロッキオ作品に何度かキャスト経験があるファウスト・ルッソ・アレジ(Fausto Russo Alesi)が入っています。
見どころ
この映画以外にもマフィアの予備知識が必要
この映画をより楽しむコツは、映画を観る前、もしくは観た後に、マフィア抗争の歴史を勉強しておくことにあると思います。
イタリアに実在するマフィア抗争を描いた映画は多く、いわゆる日本における大河モノみたい。というのも登場する人物は、イタリアの歴史を勉強したイタリア国民であれば、当然のように知っている人物ばかりであり、けっこう前提や詳しい人物紹介などを省かれることがしばしばあるのです。
先に観ておくのがベストですが、映画の楽しみ方は人それぞれ。「あの人って誰?」「ちょっとよくわからなかった」という気持ちになったら、鑑賞後に是非、コーザ・ノストラやファルコーネ判事のことを調べてみると、より一層楽しめるかもしれません!
裁判のシーンは圧巻も圧巻!
ブシェッタの改悛(本人は否定)によってコーザ・ノストラの関係者476人が起訴され、パレルモで行われた「マフィア大裁判」。
まず、あまりにも裁判所が広すぎる!収監されたマフィア関係者が多すぎたことから、この裁判のためだけにパレルモ裁判所は改修。そして、あたかも留置所がそのまま移転してきたかのような檻が、室内の後方にどーんと設置され、そこには約200人以上の関係者が詰め込まれています。
裏切り者であるブシェッタが入廷してきた時の物々しさや大混乱といったら半端ありません。一様に「裏切り者!」「恥さらしめ!」と罵詈雑言を浴びせ、開廷してからも全く話が進まない状況。これが史実に基づいているというのだから驚きでしかありません。
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憎悪や復讐心で煮えくり返ったコーザ・ノストラ相手に、ブシェッタはたった一人で立ち回り、対決を仕掛けていく...。この映画のハイライトともいえる場面だと思います。
ブシェッタの内面描写に注目
詳しくはネタバレ有の記事でも紹介する予定ですが、ブシェッタという人間は、対外的に、自分がどんな人物であるかをあまり明らかにしていなかったそうです。だからこそ、彼が歴史的に重要な決断を下したときに、何をどのように考えていたのか...。その裏側を想像し、迫りゆく作業は、本当に難しいのではないでしょうか。
内面描写の具現化に優れたマルコ・ベロッキオ監督がメガホンを取ったこと、そして役に驚異的なまでに入り込むことができるピエルフランチェスコ・ファヴィーノがブシェッタを演じたこと。このタッグの意味・意義が、最も的確に表れていると思います。
史実に基づいているとはいいつつも、やはりシナリオのある映画だからこそ表現された素晴らしい世界観だと考えています。
ちなみに、少し似たような組み合わせとしては、パオロ・ソレンティーノ監督とトニ・セルヴィッロが、ベルルスコーニの内面に迫った『LORO 欲望のイタリア』と少しだけ共通する点があるように思いました。
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さいごに
8月末の公開でしたので、それぞれの映画館によるかもしれませんが、おそらく9月いっぱいまでは上映しているのではないでしょうか。イタリア映画におけるマフィア、コーザ・ノストラなどに興味がある方は、是非鑑賞して欲しい作品です!
続きを見る【ネタバレ有】ブシェッタの矛盾を想う『シチリアーノ 裏切りの美学』
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