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『ウンベルト・D』はご存知、ヴィットリオ・デ・シーカ(Vittorio De Sica)監督の、1951年制作のイタリア映画です。デ・シーカは名作を数多く撮っていますが、これは初期の頃のネオレアリズモ映画を代表する作品の一つです。
映画情報
- 公開年:1952
- 制作国:イタリア
- 監督:ヴィットーリオ・デ・シーカ
- 脚本: チェザーレ・ザヴァッティーニ、G・R・アルド
- 音楽: アレッサンドロ・チコニーニ
- 出演: カルロ・バッティスティ、マリア・ピア・カジリオ、リーナ・ジェンナーリ
- 放映時間:88分
『ウンベルト・D』についての解説
映画解説に入る前に...ネオレアリズモとは?
ネオレアリズモ とは以前も特集記事を書かさせていただきましたが、新写実主義の意味で、主に40−50年代に起こった運動です。
続きを見る今だからこそ観たい、ネオレアリズモを代表する映画6選
ネオレアリズモ映画の特徴としては主に3つ、①貧困層が主人公 ②俳優を使わず素人を使っているところ ③方言を使用しているところで、出演者は町で見つけ出した本当に貧困層の小市民とか、知り合い(昔の学友とか家族とか)などを使っていることが多いです。
このような工夫から、戦争によって生まれた社会のひずみのようなものを、よりリアルにカメラにおさめることに成功しています。
また、ネオレアリズモ映画の監督は、ヴィットリオ・デ・シーカをはじめとして、ロベルト・ロッセリーニ、ルキノ・ヴィスコンティが代表格です。
世界の著名監督陣は、イタリアのネオレアリズモ映画に影響を受けたと公言する人も多く、この『ウンベルト・D』は、あの数々の映画に影響を及ぼしたといわれるイングベール・ベルイマン監督が好きな映画としてあげています。
監督...ヴィットリオ・デ・シーカについて
代表作は『ひまわり』
ヴィットリオ・デ・シーカ監督の有名な作品はたくさんありますが、その中でも一番有名なのは『ひまわり(原題:I girasoli)』でしょうか。
これも戦争がもたらした社会の歪みをテーマとした悲哀感いっぱいの映画です。この映画に代表されるようにソフィア・ローレンxマルチェロ・マストロヤンニでタッグを組んだ作品を彼はたくさん撮っています。
続きを見る6月1日公開映画!デ・シーカ監督『ひまわり 50周年版』
俳優としても有名
実は俳優としても有名で、映画出演本数はなんと21本。アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたこともありますし、ナストロ・ダルジェント賞では主演男優賞、ダヴィド・ディ・ドナテッロ賞でも主演男優賞を受賞したことがあるほど演技には定評があったようです。
筆者個人の意見としては、俳優としてのデ・シーカは、イタリア式コメディを得意とするルイジ・コメンチーニ監督の映画『パンと恋と夢』に代表されるような、軽口をたたく渋めの色男というイメージが強いです。ルイジ・コメンチーニ監督による『ピノッキオ』でも猿の裁判官の役で出演していて、これもシニカルさと適当さがあいまって面白い役どころです。
デ・シーカのネオレアリズモ映画
彼の作品の初期のネオレアリズモ映画といわれるものは、『靴みがき (原題:Sciuscià)』と『自転車泥棒(原題:Ladri di biciclette)』です(『ミラノの奇跡』もネオレアリズモ映画に分類する人もいますが、私としては終始童話的要素が感じられるこの映画は、少し系統が違うと思っています)。
この2つは、まさに戦後すぐの40年代に制作された映画で、双方子供が主役をかざっているのが共通項です。子供の自然な演技を引き出すのは、デ・シーカが得意とするところと言えるでしょう。
その代わりというのも変かもしれませんが、その後の『ウンベルトD』では犬の名演技がこの映画の要となっているといっても過言ではありません。この愛犬フライクが観客と映画の橋渡し的存在を担い、感情移入をしやすくしていると言えるでしょう。もちろんトレーナーがいたとも思いますが、犬の自然な表情を捉えるのと子供のそれを捉えるのと、何か共通する部分があったのではないかと憶測します。
この映画のタイトルコールには「父へ」というテロップが出てきます。デ・シーカの父親は実はウンベルトという名で、まさにデ・シーカ本人が貧困家庭に育った小市民だったのです。(働きながら高校をやっと卒業したという苦労話もあります)
こういう彼のバックグラウンドこそが、貧困層の子供のリアルな様子を捉える才能につながったというのは、至極自然な流れでしょう。
映画のあらすじと見どころ
あらすじ
話は制作年と同じぐらいの戦後まもなくの時期、ローマ。ウンベルト・ドミニコ・フェラーリは年金生活をする独り身の元公官庁員。愛犬フライクとともに20年間ずっと同じ部屋に暮らしています。
家賃を6ヶ月滞納し、年金値上げを求めるデモに参加したりもしていますが、とにかく、その日暮らしを繰り返しています。そのくせ、自分は教養があるし前職も立派であったという自負があるため、少々プライドが高いところがあり、あまり人に頼るということには慣れておらず、すぐ喧嘩腰になってしまいます。
またお金がある人に対しては少し見栄を張って、背伸びをして話してしまうところがあります。それでもどうしても生活が苦しいので、重い病があると出鱈目を言って、教会付属の病院に1週間寝泊まりしたり、物乞いをしようか葛藤したりします。
しかし最終的にニッチもサッチも行かなくなり、家を出て自殺を図ろうとします。愛犬だけは生き延びてほしいと何処かに預けることも試みますがうまくいかず、結局犬と共に線路に飛び込もうとしますが・・・
見どころ1.ネオレアリズモの真髄を味わえる
この話はネオレアリズモ映画の本当に典型で、観賞後の後味もいいものではありません。搾取される側のことばかり焦点を当てていて、しかし何も解決していないし、どこにも勝利の感覚はありません。どうすればいいんだろう、どこにもおけない悲しみばかりがつのります。
しかし、これが真実だと思います。私たちは何か大きなものに揺り動かされていたり、操られているのではありません。どう転んでも、最終的に立ち上がってうまくいくなど定められている運命なんてありません。
それはやはりまがいものです。自分の足を地につけて、自力で歩み続ける人ばかりです。そこに少しの愛情や人情があり、随所随所で救われながら、自分で歩んでいくのです。このウンベルトを見ていると、そのリアルさに絶望を感じつつも、彼の力強さに勇気が湧いてきます。
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見どころ2.小説のように繊細な描写
それと私は、この映画の話の脈略と関わりない細かな描写が好きです。
ウンベルトの借家に頻繁に大量発生する蟻。水をかけたり火で燃やしても、毎日毎日わいてくる。借家のメイドが誰も見ていないところで、足を伸ばしてドアを閉めるシーン。こういう一つ一つの描写の意味を考えていくととても面白い。まさに観客と映画の相互作用の余地があった、かつての映画だとしみじみ思います。
描写が面白いと思うシーンを一つあげさせていただきます。
ミネルバ広場でウンベルトが久しぶりの友人と再会し、「今2000リラが足りないばかりに家を追い出されようとしている」という身の上話をしつつ、本当は2000リラを借りたいのにはっきり言えないでいる場面があります。
ミネルバ広場はElefante(象)というオベリスク(あのベルニーニ作)が建っていて、シーンにやたら入ってきます。まるでその象が、なんだかずっとウンベルトを後ろから見つめているように撮られていると思うのは、私だけでしょうか。
本当にやたらこの象が視界に入ってきます。その視線が少々気色悪くて、ウンベルトを馬鹿にしているように見えます。
これは搾取者もしくは市民の視線でもあり、さらにはウンベルトの内心の気持ちが表れているのかもと思うとゾッとします(ちなみにこれはエジプトのオベリスクの模倣らしく、かつて象はイタリアで馴染みのなかった動物で、そのため市民は”Maiale”:「豚」と呼んでいたそうです。多分この象の醜さも意味に含まれていたと想像します)。
見どころ3.戦後ローマの街を知る
あとこれはストーリーとは関係ありませんが、ローマ探索としても面白い映画です。戦後のローマのいろいろな場所が映りますので、ローマに行かれたことがある人は、戦後と現在のローマと比較してみても面白いです。
さいごに
こんな映画です
- 無職、年金生活者、孤独な老人の話
- 愛犬フライク、犬好きには(そうでなくても)たまらない感動の名演技
- イングマール・ベルイマン、マーティン・スコセッシなど著名な映画監督に影響を与えた映画
映画情報
・公開年:1952
・制作国:イタリア
・監督:ヴィットーリオ・デ・シーカ
・出演: カルロ・バッティスティ、マリア・ピア・カジリオ、、リーナ・ジェンナーリ
・放映時間:88分
何回見ても味わい深い映画です。鑑賞する時の自分の境遇や心情、年齢などでも見方が違ってくると思います。
それにウンベルト爺さんと愛犬フライクが共に歩く後ろ姿は、なんとなしに勇気づけられると思います。あまりネオレアリズモ映画に馴染みのない人も、まずはあまり肩を張りすぎず、見てみてはいかがでしょうか。
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