イタリア映画 特集記事
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期間もあと僅かになりましたが、今年のイタリア 映画祭は、俳優・女優での特集枠もあります!マルゲリータ・ブイ、ルカ・マリネッリ、ヴァレリオ・マスタンドレア、アルバ・ロルヴァルケルの4人、それぞれが出演する作品を配信しています。これも巷にある動画配信サービスではなかなかお目にかかれない作品ばかりです。
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日本でもファンの多いこの4人衆ですが、この中でも私はアルバ・ロルヴァルケルを皆さんに推していきたいと思います。
アルバ・ロルヴァルケル、もしかしたら名前を聞いたことの無い方も多いかもしれません。ですが、イタリア映画にはもはや欠かせない女優と言って良いでしょう。主役も演じますが、どちらかというと名脇役です。
日本では『おとなの事情』(原題:Perfetti Sconosciuti)に出演していた女優、というとイメージが湧きやすいでしょうか。もしくはアダム・ドライバーと『ハングリーハーツ』(2014)にてヴェネチア国際映画祭ダブル主演賞を受賞したのを記憶している方も多いかもしれません。ここにもあそこにも、本当にどこでもでているような感じが最近はします。
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すでに41歳ですが、身が細くあどけなさも感じられるため年齢不詳に見える女性です。ボーイッシュな表情も見せます。そのため、ときには20代の素直で純粋な可愛い女の子を演じたり、ときには歳を重ねた癖のある女性を、そしてはたまた凛とした母親を演じたり・・・・とてもいろんな女性を演じ分けできる、まさに女優の鏡。そしてこの人はこの女優という道を辿ることが出来て、なんて幸運な人だろうと個人的には思います。
雰囲気女優と言いますか、モデルっぽいところも感じられるかもしれません。映画というキャンバスに染まっていく水彩絵具のような人で、変化する色合いに、そして彼女がふんわりと存在する世界に、一気に引き込まれてしまいます。とくに女性が見惚れてしまう女優かもしれません。
いろんな映画を見てロルヴァルケルを追い始めたら、彼女という人物を形成したものは何だったのだろうと気になってくると思います。ということで生い立ちにも少し触れていきましょう。
アルバ・ロルヴァルケルという人
半自伝的映画『夏をゆく人々』からみる幼少期、妹の存在
アルバ・ロルヴァルケル(Alba Rohrwacher)は1979年フィレンツェとウンブリア州そしてラツィオ州のちょうど境目の村カステル・ジョルジョで育ちました。名前のスペルからも想像つくかもしれませんが、父親はドイツ人です(母親はイタリア人)。彼女の父親は養蜂家でした。
彼女の生まれた環境を想像するにうってつけの映画があります。『夏をゆく人々(原題:Le meraviglie)』(2014年)。実は彼女の妹アリーチェ・ロルヴァルケルは映画監督で、今まで8本ほど映画を撮っています。その中でもこの作品は、自分たち家族の話をベースにした半自伝的作品と言えるでしょう。
この中でアルバ・ロルヴァルケルは母親役を演じています。2人は感覚を共有しあっている、かなり強いつながりを持った姉妹のようで、この作品はこの姉妹2人が反響しあって出来上がった作品と言ってもいいでしょう。
この映画を見て知ったことは、彼女は幼少期まずとても閉鎖的な辺鄙な田舎で育ったこと(それは現代社会と隔絶しているような場所)。そしてそこは当たり前のように異文化環境があったこと。父親がドイツ人である以外にも、居候の人も移民でした。
イタリアの田舎も意外に移民が多かったりして、農業や畜産業を支えています。とても閉鎖的で一見無垢で無知な人々たちの集落と思いきや、彼らを殻から抜け出したいと思わせる要素としての外部の情報は、移民の人々を通じてやってきたでしょう。
その環境は、一つの価値観に締め付けられない柔軟な感覚をもった彼女たちを創りだしたと思います。そして様々な州の狭間で育ったため、土地へのアイディンティティ、こだわりがないことも大きく関係しているかもしれません。
そして子供の頃からミツバチに慣れ親しんでいたこと。ミツバチたちが彼女たちに持たらしたものは大きいのではないでしょうか。
本作にでてくる、蜂を真正面から素手で扱う人々には驚くばかりなのですが、これはCGなど一切使わず、すべて本物のミツバチとともに演技をしています。これはミツバチに詳しいロルヴァルケル姉妹だからこそできた荒技で、作品のために初心者である主役の少女にとにかくミツバチと戯れさせたそうです。
彼女は口からどんどんミツバチを出すこともできるようになります。それは都会に育った人々にとってはまるで異次元の寓話のような話です。人間とミツバチの対話が本当に成立しているようでした。ロルヴァルケル姉妹が育った環境は、自然を愛し、彼女らの物の真髄を見極める力、感受性の強さを養ったように伺えます。
イタリアの若き才能、アリーチェ・ロルヴァルケルも機会があれば是非チェックしてみてください。イタリアではあのエレナ・フェッランテの「ナポリの物語」ドラマも監督しています。
ちなみに以下のリンクではアリーチェが監督を務めた興味深い短編ドラマが見られます。イタリアを代表するプラダ傘下にあるファッションブランド ミュウミュウ製作のもと作られたフェミニズムをテーマとした映画で、姉のアルバ・ロルヴァルケルも出演しています。
女優の道へ
アルバ・ロルヴァケルは、一旦は大学の薬学部へ進学しますが、演技の道を志し中退します。その後フィレンツェの演劇学校で舞台を中心に学び始め、2003年実験的映画分野で修了、職業女優としてのキャリアをスタートさせました。最初は舞台俳優として出演、その後めきめきと頭角を現したのでしょう、1年後の2004年にはすでに映画デビューしていました。
その後かなりのスピード感で彼女の才能は瞬く間に認められることとなり、2008年ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞助演賞をシルヴィオ・ソルディーニ監督の『日々と雲行き』(原題:Giorni e nuvole)にて、そして2009年は同主演女優賞をプピ・アヴァティ監督の『ボローニャの夕暮れ』(原題:Il papà di giovanna)で受賞しました。
どこかひと味違う女性を演じるには、イタリアだけでなく世界中の監督から引っ張りだこの女優となりました。
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イタリア映画祭2020で見逃せないロルヴァルケル出演作品
さていよいよ今年のイタリア映画祭にてみなさんに見て欲しいアルバ・ロルヴァルケル出演作品をご紹介したいと思います。本記事では1作品のみ紹介し、続きは次回の記事にて紹介しましょう。
『私のママでいる』(原題:Being my mom) 2020年
あらすじ
どこかの部屋から、2人の母娘が出て行く。大きな水色のスーツケースを持って、ローマ市内を2人はひたすら歩いていく。
解説
女優であるジャスミン・トリンカ(今回の出品映画の中『幸運の女神』に出演中)の初監督作品。2020年製作の出来立てほやほやの新作、そしてヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門でプレミア上映された、意欲作です。
たった12分の短編作品であることもあり、無料で見ることができます。無料であることもありますから、何度も何度も見て作品を噛み締めてみてください。短編が今後配信されることはなかなか稀だと思いますので、非常に貴重な機会です。
世界から忘れ去られたような、静かで、この2人以外誰も存在しないローマ。ローマを舞台とした映画は数多くありますが、ローマをここまで美しく撮る映画を私は初めて見ました。
彼女が幼少期によく訪れたというアヴェンティーノの丘やモンテ・テスタッチョなどで撮られている、どこか異次元のような映像です。考古学を専攻していたトリンカだからこそ見えてくる、遺跡としてみるローマが見られるのも特徴的です。
この非現実的な映像をみていて分かりますが、これは何かの物語を展開しようとしているものではなく、この2人の女性の生きる人生のメタファーです。
本作品はトリンカが自身の母親に贈った映画でもあります。最初は彼女自身が母親役を検討していましたが、自身の経験の中での母親を演じるのは重すぎたこと、またもっと客観的に自身の経験を観察してみたかったことで、友人であるロルヴァルケルに依頼したようです。トリンカはロルヴァルケルを女優としても大変尊敬しており、「モニカ・ヴィッティの再来」と称賛しています。
この母親はあまり母親らしくありません。奔放的で子どものようなあどけなさがある一人の女性としての特徴が前面にでているのは、トリンカが客観的に見たからこそと思います。
そこに絵画に出てくるような、フランス人形のような美少女の娘(Maayane Conti)。彼女は少し冷たい目線でロルヴァルケル演じる母親を見つめます。設定上シングルマザーなのか、表現の中だけの話しなのかは定かではありません。
娘は母へ綺麗なガラスのような眼で冷たい目線を送るものの、母親を愛していて、頼っていて、信頼しているのがわかります。とにかくとにかく彼女についていきます。これはもう本能です。どんな母親であろうと、彼女に対して何かしらの憧れを持ち、甘えて、時には心の支えとなります。
ふざけることもあってチャーミングな母親。とても美しい背中が大きく空いた服に長袖のサイズオーバーな羽織をきて、いたずらな眼をする。母親らしさはないけれど、娘にとっては無条件に太陽のような存在です。この映画が女性スタッフばかりで撮られていたのもうなずけます(ロルヴァルケルの衣装の美しさはどの場面の表情も見逃せません)。
最後のシーンで母親が娘に口に水を含んで、口づてに流し込んであげるシーンがあります。ここは見惚れて、そしてはっとさせられると思います。ロルヴァルケルはもうボッティッチェリの絵画の女神かニンフのようです。彼女の表情の豊かさにはもう溜息しかありません。
さいごに
アルバ・ロルヴァルケルを知らない方でも、この短編を見るだけで、虜になってしまうのではないでしょうか。この無料の12分だけでも必見です。短編だからこそ、解釈が多様で深みがあり、観客の面白さというのは増幅するものです。
次回の記事で紹介する映画もお楽しみに。
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